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87 怪鳥ベギーアデアドラーVS植物モンスター幼女

 私、植物モンスター幼女のアルラウネ。


 あそこに飛んでいるのは魔王軍の怪鳥、ベギーアデアドラーさん。

 前世で見た旅客機を想像させるような巨大な大鷲(おおわし)さんです。




 仲間の大鷲さんを呼んで、「キャハハハ!」とご満悦な毒の妖精オーインが目につく。 



 この毒の妖精、卑怯(ひきょう)だって!

 肝心なところは強いモンスターに任せてきたよ!



 魔王軍の毒の妖精は、私たちを皆殺しにしようとしている。

 向こうから襲ってきているのだし、戦うしかないよね。


 それに、私はこの森の用心棒。


 私が知っているドライアド様は実は悪い精霊ではなかったみたいだし、魔女っこを助けてくれた恩返しをするためにも働かないとね。

 



 問題は大空を舞うベギーアデアドラーと、どうやって戦うか。



 大鷲さんが、翼を激しく羽ばたきました。

 強風が私たちを襲う。



 地面に根を張っている私は平気だったけど、魔女っこと妖精キーリが風によって吹き飛ばされてしまいました。

 近くの茂みに二人の身体がぶつかるのを目にします。なんとか無事みたい。



 この調子だと、やっぱり私が戦わないとダメだよね。



 でも、上空にいる大鷲さんまで蔓は届きそうにない。

 毒花粉も同じです。



 となると、残る攻撃手段は一つのみ。


 テッポウウリマシンガンを生成です。

 四丁のマシンガンを構えて、大鷲さんに照準を合わせます。



 では、ごめんあそばせ。


 スポポポポンッ!



 棘状(とげじょう)の麻酔種を連射です。

 ギリギリ射程範囲内だったみたいで、大鷲さんのお腹に種が刺さっていきました。



 けれども、大鷲さんの動きに変化はない。


 どうやら羽毛が邪魔して、麻酔が体にきちんと注入されていないみたい。

 元々ベギーアデアドラーは巨体の持ち主なわけだから、少量の麻酔では効果はないのもあるかも。




 え……これ、どうしましょう。

 私、これ以上の手は持ち合わせていないのですが。



「アルラウネなんかにベギーアデアドラーが負けるはずないじゃん!」



 毒の妖精の高笑いが聞こえてくる。

 


 わざわざ言われなくても、わかっていますよ。

 このままでは私が大鷲さんに勝つことはできないということは。



 ベギーアデアドラーが勢いよく降下してきました。

 巨大なかぎ爪が私に襲い掛かる。



 私の何倍も大きいかぎ爪なんかにえぐられたら、小さなアルラウネの身体ではひとたまりもない。



 頭上に蔓で盾を作るけど、大鷲さんのかぎ爪の前では紙切れ同然でした。



 ま、まずいよー!

 このままだと私、えぐられちゃうよー!



 種も効かないし、あと空の大鷲さんに届く私の武器は火──いや、煙だ!


 私は蔓にユーカリの葉を生成して、素早く火をおこしました。



 ユーカリは毒を持っている。

 でも毒がある葉をいぶした煙には、虫よけくらいの効果しかないの。

 だからもっと毒性が強くなるよう、品種改良してみました。

 普段は種火としてしかユーカリを使っていないけど、今回は毒を大盤振る舞いです。



 この毒煙をベギーアデアドラーが吸い込んでくれれば、きっとひるんでくれるはず。


 とはいっても、そうは問屋(とんや)(おろ)してくれませんでした。

 そう都合(つごう)よく、煙は大鷲さんのところにはいかなかったの。



「アルラウネさま、任せて!」



 妖精キーリの声がします。

 精霊魔法を発動しているみたい。


 キーリの魔法によって、煙がベギーアデアドラーのほうへと立ち上がっていきます。



「あたしの精霊魔法は、自然界の流れを操作できるの。だから少しは頼りにしてよね、アルラウネさま!」



 思い返せば、私が川で溺れていたときに助けてくれたのが、この妖精キーリだった。

 なるほど、あのときはこうやって川の流れを操って、私を川の外へと移動させたんだね。



 毒煙がベギーアデアドラーの頭部を襲います。

 慌てるように、再び上空へと戻っていきました。


 ふぅ、なんとか助かったみたい。



 

 でも、次に降下してきたらまた同じように攻撃をかわせるとは限らない。

 せめてベギーアデアドラーを地上に落とすことができれば良いのだけど……。



 そんなことを思っていると、毒の妖精の不審がるような呟きが耳に入ります。



小賢(こざか)しいアルラウネね。……ん、なにあれ、枯れ木が凄いスピードで走ってくるんだけど……」



 振り返ると、鋭いフォームで走りながら近づいてくる枯れ木の姿がありました。

 私の妹分である、アマゾネストレントだね。



 やった、妹分が助けに来てくれたよ!

 でも、いくら女狂戦士であるトレントでも、空を飛ぶベギーアデアドラーには敵わない。




 トレントは私の前に、植物の束を置きました。


 どうやらまた私のために珍しい植物を集めていてくれたみたい。

 ナイスタイミングだよ、私の妹!

 この現状を打破できる植物があるかもしれないよ。



 アマゾネストレントが木を伐根(ばっこん)して、空飛ぶベギーアデアドラーに投擲(とうてき)しながら牽制(けんせい)してくれている間に、私はプレゼントの植物を漁ります。



 武器になりそうな植物は…………これだ!



 大きく口を開けているような植物を蔓で(つか)みます。

 口のような2枚の葉には、牙のようなトゲがたくさん生えている。


 この植物を、女子高生時代に植物図鑑でみたことがあるの。



 これはハエトリソウ。

 2枚の口のように空いた葉に入ったハエを食べる、食虫植物です。



 数ある食虫植物の中でも、能動的(のうどうてき)に虫を捕まえるのは珍しい。

 ほとんどの食虫植物は、基本的に受け身の植物が多いの。

 だからハエトリソウのように攻撃的な食虫植物は、前から欲しかったのだ。



 ハエトリソウを下の口で捕食します。

 そうして私は、地中に潜ませている蔓からハエトリソウを生やしました。



 地上へと現れるハエトリソウ。

 そのまま空を飛ぶベギーアデアドラーへと伸びていきます。


 そのままハエを捕まえるように、大鷲さんを食べちゃいなさい!



「……ダメ、届かない」



 ハエトリソウは近くの小さめの木と同じくらいの高さまで伸びると、そこで成長を止めてしまいます。

 どうやらそれ以上は伸びないみたい。



 うそでしょう。

 ハエトリソウ、役に立たなかったのですが!



 私が蔓で頭を抱えていると、地面に変な影が生まれていました。

 

 視線を上に向けると、魔女っことトレントの姿が目に入ってくる。



 驚くことに、魔女っこが妹分のトレントを手に持ちながら浮遊魔法で空を飛んでいたの。


 たしかに魔女の浮遊魔法を使えば自分よりも大きなトレントを空中に連れていくことができるけど、いったい二人はなにをしようとしているのかな。



 魔女っこがトレントを大鷲さんへと投げました。


 ミサイルのように飛んで行ったトレントがベギーアデアドラーへと張り付きます。

 どうやら接近戦をしかけるみたい。



 でも、空を飛ぶ大鷲さんに(つか)まったまま戦うのは難しい。

 トレントは大鷲さんを数発殴ると、そのまま森へと落ちていきました。




 そうかなるほど、その手があったね!

 地上からの攻撃が効かないなら、相手に張り付いて近くから攻撃すれば良い。



 でも、私は地面に根を張っている植物。

 すでにバケツアルラウネ時代よりも大きく成長してしまったせいで、再び鉢植えに戻ることもできない。

 だから私も魔女っこに放り投げてもらうことはできないの。



 私が空を飛ぶベギーアデアドラー近づくことなんて不可能…………ではないかも。



 そうだよ、一つだけ方法がある。

 地面から生えて動けない私が、空を飛ぶモンスターへ会いに行く手段。



 私が私を飛ばせば良いんだよ!


 ついでに一人で足りないなら、みんなで戦えば良いのだ。



 そうと決まればと、私は蔓にアルラウネの雄花(おばな)雌花(めばな)と生成します。

 大鷲を倒すために受粉して分身を作るのだ。



 戦闘中だけど私、子作りします。


お読みいただきありがとうございます。

本作を読んで「面白かった」「頑張っているな」と思われましたら、ブックマークや★★★★★で応援してくださるととても嬉しいです。その応援が執筆の励みになります。


次回、怪鳥ベギーアデアドラーVS植物モンスター幼女軍団です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤドリギ戦法かな? 力のあふれる殿方とのダンスは、大勢の娘達にお願いするわけですね。
[良い点] 毒の妖精の初期登場時との格差。最初は強者感があったのに今では小物臭が凄い。 [一言] 次回は周囲が(危険な)お花畑になるわけですね分かります。
[良い点] しょくぶつのちからって すげー! [一言] やっぱ数って強い。
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