表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/405

82 暗躍するフェアリー

 私、植物モンスター幼女のアルラウネ。

 いま私は、妖精に謎の液体を撒かれて襲われているの。



 草木も眠る、夜の時間。

 私と魔女っこが就寝しているとき、小さな光る妖精がやってきました。



 その妖精が私に液状のものをかけた途端、私は気分が悪くなってしまったの。

 まるで、いまにも枯れてしまいそうな感じだよ。



 もしかしなくても私、この謎の妖精に襲われているよね。

 お水ではなく、毒のようなものを()かれた気がする。


 もちろんこのまま泣き寝入りするつもりはありません。

 犯人を捕まえないと!



 私は地中に潜ませていた蔓を、こっそりと謎の妖精の周囲へと配置させます。

 そして妖精が私に液体をかけるのを止めた瞬間、蔓で攻撃です!



 けれども暗闇で視界が悪いせいか、謎の妖精を蔓で捕まえることはできませんでした。

 妖精だから標的もかなり小さいからね。



「この花、起きていたの!?」



 謎の妖精から声が聞こえました。

 やっぱり私が寝ていると思って、ここにやって来たみたいだね。


 運が良いことに、さきほどまで雲に隠れていた月が出てきました。

 おかげで、謎の妖精の顔を拝むことができたの。



 その妖精は、日焼けしたように小麦色になっている褐色肌の見知らぬ妖精でした。


 キーリと比べると目つきがかなり悪い。

 どうやら知らない妖精さんだったみたいだね。

 


「なんの、よう?」

「ちょっと探しものをね。この辺にいるって聞いたんだけど、どうやら今はここにはいないみたいね」



 やはりなにかを探していたんだ。

 でも、いったいなにを?



「あんた、あいつの仲間でしょう。いったいどこに隠しているの?」

「誰、のこと?」

「とぼけても無駄よ。あんたがこの場にいるのが良い証拠なんだから」



 私をあいつの仲間だとこの妖精は主張している。

 でも、あいつが誰のことなのか検討もつかないよ。



「ふんっ。まだ知らないふりをするなんて、あんた花のくせに随分と生意気ね。早く枯れてくれればいいのにー」



 ちょっと、いまの言葉は聞き捨てならないね。

 なんで見ず知らずのほぼ初対面の妖精に、生意気だとか早く枯れてとか言われなければならないのかな。

 いくら心の広い私でも、許容できないことがあるのです。



「というかあんた、こないだの花だよね。まだ枯れていないとか驚きー。なんでまだ生きているの?」

「……どういう、こと?」

「あたい、あんたみたいな綺麗な花は嫌いなんだよね。だからこないだ西の森で見かけたとき、除草液を撒いたからもう枯れていると思ったんだけど」



 なるほど。

 西の森で私を見つけたということは、あの夜に私の周りを飛んでいたのはキーリでなくこの妖精だったわけね。



 というか、除草液って言った?

 前世にあった除草剤みたいなものかな。


 もしかしてあの夜、夢の中で水やりをされたと思っていたけど、それは実は水ではなくその除草液だったということ?



 あ、そういうことか。

 だからあの日の翌朝、私の葉っぱが枯れたように(しな)びて色が薄くなっていたんだ。

 あれは水不足で枯れたのではなく、この妖精に除草液を撒かれたから。


 ということはだよ、私は知らぬ間に枯殺(こさつ)されそうになっていたということだね。

 

 えぇ……。

 薬で枯れさせられるなんて、恐ろしすぎるのですけど。



 いきなり現れた妖精から、気に食わないというだけの理由で殺されそうになるなんて、こんなのってないよ。

 そもそも、妖精はドライアド様の配下みたいなものでしょう?

 その妖精が私を殺そうとするなんて、どう考えてもおかしいのですが。



「あたい、アルラウネには興味ないのよ。あんたをこの場で枯らすのはついでなんだけど……あ、良いこと思いついちゃった!」



 謎の妖精が魔法を使って、体を光らせます。

 すると、空気中と地中から水滴のようなものが妖精の近くに集まりました。

 毒素が入っているようにしかみえない、紫色の液体が空中に生成されたのです。



「あたいの精霊魔法は、自然界の物質から毒を作ることができるの。だからあんたはこれで枯らしてあげる」

「私を、枯れさせれば、満足、するの?」

「それもあるけどー、あんたを殺せばやつが現れてくれるかもしれないじゃない。あいつ、あんたみたいな綺麗な花が好みだったから、きっと悲しんでのこのことやって来るでしょう」



 やつとはいったい誰のことだろう。

 私の知り合いなんて、蔓で隠したまま隣にいる魔女っこと妹分のトレントに妖精キーリ、あとはドライアド様くらいしかいない。


 四者とも綺麗な花が好きな印象だから、誰だか見当がつかないよ。



 でも、これはだけはわかる。

 私は見ず知らずの妖精に、命を狙われてしまっている。



 闇夜に現れて毒を操る妖精。

 毒の妖精さんといったところかな。


 私の花が気に食わないから枯らそうとしていること、私を殺して誰かを(おび)き出そうとしていることから考えると、性格はかなり悪いね。



 どんな理由だとしても、妖精に殺される筋合いはないよ。

 まったく、ドライアド様に文句を言わなくちゃ。



「妖精さん、これ以上、続けるなら、ドライアド様に、言いつけるよ?」

「別に言えばいいじゃないー。だってあたいはドライアド様から命令されてこの場所に来ているんだからー」

「…………え?」



 ドライアド様の命令で?


 ということは、ドライアド様は私を殺すことも許可しているということ……?



 そういえば魔女っこは、ドライアド様も妖精キーリも信用はしないほうが良いと忠告してくれた。

 さすがに人間不信が過ぎるとあの時は思っていたけど、まさか現実のことになるなんて。



 実際にいま、ドライアド様の命令を受けたという妖精に殺されそうになっている。

 ということは、私たちはドライアド様に裏切られた?

 そんな……私はまた裏切られてしまったの…………。



「というわけで、あたいのお仕事のために枯れてちょうだい。大人しくやつを誘き寄せる餌になってよね」



 毒の妖精が、紫色の液体を私の根元へ投げつけます。


 とっさに蔓でガードしたけど、バシャンと跳ねた除草液はそのまま球根付近の地面へと落ちていきました。



「即効性の枯れ薬だよー。濃度も上げておいたし、アルラウネにはどうしようもないよねー」



 急激に体が重くなっていく。

 植物としての体内のメカニズムが崩されていくような感じがするの。

 いままでにない位気分が悪い。



「ねえ、除草液おいしい?」



 妖精がキャハハハと笑う声が聞こえてきました。



 イライラさせてくるね、この妖精さんは。

 毒茨で締め上げましょうか。



「……あれ?」



 蔓を毒茨に変化させようとしても、なぜか茨を生成することができませんでした。

 ためしにテッポウウリマシンガンを生成しようとしてみたけど、そちらもなにも実らない。



 どうやら除草液のせいで、私の植物としてのホルモンが乱されているみたい。

 そのせいで普段のように上手く体が扱えないのかも。


 どうしましょう。

 除草液、私に効果抜群だよ。



 気がつくと、私の葉っぱが(しな)びていました。

 花冠の(つや)もよくない。

 まるで、枯れている真っ最中のよう。



「アルラウネごときがこのあたいに敵うわけがないじゃない。さあ、トドメといきましょうか」



 妖精が精霊魔法によって再び除草液を空中に生み出します。


 あ、これ、まずいよ。

 これ以上除草液を撒かれたら、私、枯れてしまうかも。


 もう、やめて……!



 私の心の叫びをかき消すように、毒の妖精によって再び大量の除草液を撒かれてしまいました。

 頭からバシャンと紫色の枯れ薬を浴びてしまいます。


 

 蔓が痙攣(けいれん)するように震え出していく。

 身を守るように、花冠が(つぼみ)になろうとしているのがわかります。


 いや、これは(つぼみ)になろうと花が動いているのではない。

 本格的に枯れ始めてしまって、(ちぢ)んでしまっているのだ。



 除草液の効果が急激に体に現れていきます。

 全身の葉緑素が抜けて、薄くなっていくのを目にしてしまう。



 同時に、体の自由がきかなくなっていく。

 これは本当にマズいかも……。


 崩れるように視界が暗転する。



 私はいま、枯れているのだ。

お読みいただきありがとうございます。


次回、除草液には負けませんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
✿「植物モンスター娘日記」コミックス5巻が3月23日に発売しました✿
お水をあげるつもりで、アルラウネちゃんをお迎えしていただけると嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.
コミカライズ版「植物モンスター娘日記5」



✿コミカライズ版「植物モンスター娘日記」✿
コミックス1巻はこちら!
コミカライズ版「植物モンスター娘日記」


書籍版 植物モンスター娘日記も

絶賛発売中です!

html>

電子書籍版には、
まさかのあのモンスター視点の
特典SSが限定で付いております!

どうぞよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
まだ幼いのに枯れておるのぅ って冗談言ってる場合ではありません! 生物兵器による自然破壊は条約違反です!UNに訴えてやります!
[一言] 火の弱点克服したと思ったら次は除草剤か……ホント、ピンチには事欠かないな……
[一言] 取り敢えずウソだろう。 どうなる!? 大丈夫か?!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ