81 アルラウネ流野菜料理
私、植物モンスター幼女のアルラウネ。
聖女時代からアルラウネ時代を通して、人生初の料理に挑戦します。
公爵令嬢として生まれたから、聖女時代には一度も料理をしたことがなかったの。
女子高生時代には少しは経験があるけど、あまり記憶には残っていない。
でも前世のおかげで知識があるわけだから、初料理でもきっとなんとかなるよね!
魔女っこが街で初めて購入してきた野菜は、そら豆とカブでした。
両方とも春野菜だね。
まずは、そら豆を下の口で捕食です。
これで私はそら豆が作れるようになったの。
すぐさま、蔓の先にそら豆を生成します。
光回復魔法を込めながら育てれば、はいこの通り。
そら豆の名前の由来通り、緑色の豆果が空に向かってたくさん生りました!
そら豆を生み出すことができたことによって、魔女っこはタンパク質を摂取することができる。
これでドライアド様から貰った干し肉がなくなっても、なんとかなるかもしれないね。
続いてカブを下の口でパクリとします。
蔓を地面に挿し込んでカブを生成することにしました。
カブは根菜類の野菜なので、やっぱり土の中で育てたほうが良さそうだからね。
地中でカブを生成して、蔓を勢いよく引き抜きます。
はい、カブの出来上がりです!
元の野菜を一つ食べただけで、何個ものそら豆とカブを複製できてしまう。
私がいれば畑いらずだね。
「ありがとうアルラウネ。じゃあ、あとはわたしがやるね」
「だめ、私が、料理する」
「え……?」
「任せて」
これはチャンスだよ。
私がお姉さんだということを魔女っこに見せつけないとね!
さて、食材が揃ったら料理のお時間です。
まずはユーカリを使って火起こしだよ。
ザゼンソウの自家発熱と摩擦を使って、火起こしに成功しました。
ちょっと張り切りすぎちゃって蔓が炎上しちゃったけど、あらかじめ魔女っこに用意してもらったバケツの水で火災が起きた部分は消火できたの。
初めての料理だし、火事が起きるくらいは仕方がないよね。
火災の鎮火も終わったことだし、今度こそ料理をしましょう。
とはいっても、この場には包丁もなければフライパンもお鍋もありません。
あるのはコンロ代わりのたき火と、己の肉体のみ。
この状況下で考えられる料理は一つしか思いつきません。
はい、野菜の丸焼きです!
え、それは料理じゃないですって?
わたくし、公爵令嬢だったのでその辺りは詳しくないのです。
もっと言えば、植物モンスターであるアルラウネが火を起こして野菜を焼くという事実だけでも異常なことだと思うから、それで許してください。
とりあえず菜箸の代わりは私の蔓で良いよね。
そら豆とカブを蔓で掴んで、たき火で野菜を焼き始めます。
そら豆は生でも食べられるけど、焼いた方が柔らかくなるよね。
カブも生のままだと固いから、やっぱり焼いたほうが美味しいはず。
「アルラウネ、蔓が……」
魔女っこが慌てながらバケツを持って川へと飛んでいきました。
どうやら私の菜箸、燃えちゃったみたい。
野菜ごと、蔓に火が移っちゃったの。
本日二度目の火災です。
火から逃れるために脱皮して野菜ごと火の海に落とすか、このまま焼き野菜を持ったままギリギリまで体を使って料理を続けるか悩んでしまいます。
最悪、そら豆とカブとアルラウネの丸焼きが出来上がってしまうよ。
でも、こうやって自分が燃えているのに冷静でいられるのは、燃える経験が豊富になったからかな。
私、この一週間ちょっとで5回くらい燃えているからね。
だてに燃やされ慣れてはいないのです。
アルラウネの丸焼きとして私自身が魔女っこの晩御飯になる前に、浮遊魔法を使った魔女っこがバケツを持って戻ってきました。
焼き野菜を他の蔓に避難させて、火災現場を消火してもらいます。
ふぅ、助かりました。
やっぱり料理をするのって危ないんだね。
まさか短時間で二度も火事が起きるなんて思わなかったよ。
公爵令嬢として生まれて聖女になったあとも一度も料理をする機会がやって来なかった理由が、いま初めて理解できました。
この世界での料理は危険な作業だから、みんな専属の料理人に任せていたんだね。
料理をするくらいならモンスターと戦ったほうが楽だし安全だもの。
私が体を張って料理をしたおかげか、そら豆とカブは良い感じに焼きあがっていました。
ちょっと火事のせいで焦げちゃっているけど、初料理だから大目にみてね。
二度の火災は起きてしまったけど、私はやりきりました。
見事、無事に初料理を完成させてみたのです!
「どうぞ、召し上がれ」
「ありがとう……」
魔女っこがそら豆を手に取って、皮をむいていきます。
そしてパクリとそら豆のマメを食べました。
「おいしい……!」
魔女っこが次々とそら豆を口に入れていきます。
新鮮な野菜を食べたのは久しぶりだからね。
しかもそれが温かい食べ物ならなおさら。
続いて、魔女っこはカブの丸焼きにかじりつきます。
「熱っ……!」
どうやら、十分に焼けていたみたい。
食べたところから湯気が出ているよ。
火が通っているおかげで、中まで柔らかそうだね。
「かなり……いや、ちょっと苦いけど、温かい食べ物は久しぶり……」
嬉しそうに焼き野菜を頬張る魔女っこに、料理人アルラウネとして大変満足です。
魔女っこの笑顔のために私、これからもお料理頑張るよ。
「また明日も、作って、あげる」
「いや、次はわたしが料理するから大丈夫」
自分で料理をしたいだなんて、魔女っこも偉いね。
もしかして、お姉さんである私の雄姿に感銘を受けたのかも。
姉の真似をしたがる妹か。なんだか微笑ましいね。
魔女っこの食事も始まったことだし、私も夕飯を食べないとね。
すぐそこに積んでいたメジロさんたちを下の口に運びます。
うん、鳥の生肉おいしい。
消化するだけだから味はわからないのだけど、雰囲気的にね。
魔女っこと一緒に食べる食事はなんでも美味しいのです。
あぁ、なんだか幸せだよ。
落ち着いてこうやって豪華な食事ができるのはいつ以来かな。
いまみたいなゆっくりとした時間が、ずっと続けば良いのに。
それで二人で仲良く暮らすのだ。
光合成しながら、水やりしてもらって植物として静かに暮らす。
それからすぐに、魔女っこは倒れるように眠りに落ちました。
人間だらけの街に行って、緊張していたんだろうね。
疲れるのも無理はないよ。
いつものように私と魔女っこの周囲を蔓の繭を覆って就寝です。
おやすみなさいと、私も蕾を閉じました。
夜はどんどんと更けていきます。
私の眠りが浅かったせいか、外に光の玉が浮いていることに気がついたの。
蕾から透けて見えるその小さな光は、池で私が溺れる前夜に目撃したものと同じでした。
こっそりと蕾を開いて、外の様子をうかがいます。
どうやら小さな光の正体は、妖精みたい。
ただ、暗いせいか妖精がキーリかはわからないね。
謎の妖精は、周囲を調べているように見える。
何かを探しているのかな。
一通り私の周りを飛んだあと、蔓の繭の前で滞空し始めました。
いったいなにをしているんだろう。
しばらくすると、私の根元になにか液体がかけられたの。
そういえば前回、この謎の光から水やりをされた記憶があるね。
ということは、この妖精はあの時の妖精と同じということかも。
お水おいし……くない。
なにこれ。
なんだか気分が悪くなってきたような…………。
頭がクラクラしてきたし、根が腐るような感覚がする。
吸ってはいけないものを吸収してしまった気がするの。
水やりをしてもらったら元気になるのに、いまの私は徐々に衰弱していっている。
まるで枯れていく花のよう。
もしかしていまの、水じゃないのでは?
むしろ、植物である私にとって有毒なものを撒かれているような……。
そこで気がつきました。
私は妖精に、寝込みを襲われているということに。
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次回、暗躍するフェアリーです。







