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65 妖精との遭遇

 私、植物モンスター幼女のアルラウネ。

 カエルのモンスターを倒したら、口から妖精さんが出てきたの。



 なんでカエルの中から妖精が……。


 もしかしてカエルに食べられていたのかな。



 カエルから小さな女の子が出てくるなんて、まるで前世の日本で読んだ親指姫の童話みたい。


 親指姫はチューリップから生まれた小さな女の子。

 でもカエルに誘拐されてしまって、結婚させられそうになるんだよね。


 もしも童話と同じ展開なら、私は誘拐犯から妖精さんを助けたことになるよ。

 というかチューリップから生まれたって、親指姫は花生まれなの?


 なんだかアルラウネである私と似ている気がして、親近感湧いちゃった。



 ともかくこの親指姫のようなこの妖精は、きっとカエルの被害者だよね。


 カエルの唾液まみれになってベトベトだけど、大丈夫かな?



「うげぇ……」


 妖精さんはうめき声を出しながら、バタリと地面に倒れました。

 口から泡を吹いているみたいだね。



 というかこの妖精、泡吹いているってことは死にかけている気がするよ。

 まさか私の毒、吸い込んじゃっているんじゃ…………。



 ど、どうしましょう。

 私、カエルと一緒に妖精まで毒殺しそうになっているよ!


 

 見ず知らずの妖精を亡き者にするつもりはなかったの。

 た、助けないと!


 蔓で妖精さんを捕まえて、私のほうへと引き寄せます。

 同時に他の蔓にかぶりついて、蜜を付着させる。


 私の回復薬入りの蜜なら解毒効果もあるからね。

 これを飲ませれば妖精さんの命は助かるはず。

 

 けれども、倒れたままの妖精さんは蜜を舐めることはできないみたい。そりゃそうだよね。

 

 なんとか体内に蜜を飲ませることができないかな。



 とっさに思いついたのは、マウスツーマウス。

 人工呼吸の用法で蜜を飲ませることができれば、助かるかもしれない。


 ちょうど私は幼女。

 お人形のように小さい妖精さんとも唇を合わせることが可能なはずだ。


 私が自分の顔に妖精さんを近づけると、魔女っこが「なにするの?」と尋ねてきました。


「口移しで、解毒薬の蜜を、飲ませるの」

「…………だめ。わたしがやるから蜜出して」



 魔女っこは私から妖精さんを奪い取ってしまう。

 ここは言う通りにしましょうかと、魔女っこの片手に蜜をたっぷりと垂らします。



 魔女っこは妖精の口を、指を使って開いていく。

 そして手のひらにため込んだ私の蜜を、妖精の喉の奥へと注ぎ込んでいった。

 妖精さんも完全には気絶していなかったみたいで、ゴクゴクと蜜を飲みだす。



 しばらくすると、「ケホッ」と妖精さんがむせ返りました。

 どうやら解毒は間に合ったみたい。



 妖精さんは目を開くと、私と魔女っこを交互に見つめました。



「なんであのアルラウネがあたしの前に……?」

 


 今の言葉を聞くと、なぜだか私のことを知っているみたいだったね。

 けれど、私は妖精に知り合いもいなければ、見たことすらなかったはずだけど。


 次第に意識が覚醒していったのか、妖精さんは喋れるまで回復したようです。



「あんたたちが助けてくれたの……?」

「その通り。あなたは、誰?」

「あたしは見た通り、麗しい森の妖精だよ」



 やっぱりこの親指姫は妖精だったね。

 凄いよ、妖精なんて初めて見たよ!


 でも、なんで妖精がカエルの中にいたのかな。

 やはり親指姫みたいに誘拐されちゃっていたりして。



「なんで、カエルの、中に、いたの?」

「それはあんたを助けた時に食べられちゃったからだよ」


 私を助けた時に?

 どういうことだろう。



「あたしは昨日からあんたたちを監視していたの。喋るアルラウネに空飛ぶ人間なんて面白すぎ……じゃなくて怪しいからね」


 そう言いながら、妖精さんは羽根を広げて飛び立つ。

 すると、小さな体が発光しはじめました。


 この光には見覚えがあるよ。



 昨夜の夢の中で見たと思っていたホタル。

 そしてさきほど川の中から目撃した小さな光。

 あの小さな光の正体は、この妖精だったのだ。



「喋るアルラウネなんて初めて見たからね。なんだか放っておけなかったから、魔法で水流を操って池から川に誘導させたり、川から引き揚げたりしちゃった。だからあたしに感謝してよね!」


 偉そうに胸を張る妖精さん。

 小さいけど態度は大きいみたい。



「でもアルラウネを川から助けるのに集中していたせいで、近くにいたカエルのモンスターに食べられちゃったの。正直もうダメかと思っていたけど、結果的にあんたたちに助け出されたということは、あたしの見る目は間違いじゃなかったというわけね」



 どうやら私に力を貸していたのはカエルではなくて、この妖精さんだったみたいだね。

 川から引き揚げてくれたのなら、きちんとお礼を言わないと。



「助けて、くれて、ありがとう」

「お互い様だからいいのよ。これで貸し借りなしだからね」



 妖精さんは手を払いながら「こっちも助けてくれて感謝しているわ」と言葉を続ける。


「あたしは妖精のキーリ。それで、あんたたちはこんな森の奥でなにしているの?」



 私は妖精さんに、住む場所がなくなったので二人でこの森に移住してきたと説明します。

 でも、一人で話していると気がついてしまった。

 そういえば先ほどから魔女っこが一言も口を発していないね。

 ずっと私の後ろで黙って妖精を見つめている。



 もしかして魔女っこ、人見知りなのかな?

 人間嫌いだと話していたし、そうなのかもしれないね。

 そんな無口な魔女っこに対して、この妖精はお喋りでした。



「こんな危険地帯で暮らすなんて正気? 明日にでも魔物に食べられちゃうって!」


 妖精さん曰く、ここら辺りは狂暴なモンスターの巣窟らしい。

 どうりで強そうな肉食モンスターがわんさか出てくるわけだよ。

 


「住むなら森の東側がいいよ。あたしも普段はそっち側で暮らしているし、こっちと比べて安全は保証するよ」



 東側というと、塔の街があるほうかな。

 人と遭遇する確率は上がりそうだけど、魔女っこをこれ以上危険な目にあわせるわけにもいかないよね。



「残念ながらあたしは用事があるから、あんたたちを安全なところへ連れて行ってあげることはできないの。せっかくだし面倒を見てあげたいけど、悪いわね。だからあとは勝手に頑張って!」


 妖精さんは私たちを突き放すように宣言します。


 まあそれも仕方ないね。

 お互い命の恩人ではあるけど、もう貸し借りはない。なら赤の他人だよ。



 どうしましょうか。

 ここは妖精さんの助言に従って、森の東側へ移住したほうが良いのかな?


 悩んでいると、魔女っこが私の花びらを優しく引っ張ってきます。



「ここが危ないのはわたしも同感。とりあえず移動することには賛成する」



 魔女っこもこの辺りの森が危険だと感じていたみたい。

 とはいえ、私と魔女っこはこの森に来たばかり。

 土地勘もないのに、今から森の東側まで大移動するのも大変だよ。



 私がうーんと(うな)っていると、妖精さんが私の顔の前まで飛んできました。

 そのまま私の目の辺りをじーっと見つめてきます。



「なんでかな、アルラウネの目を見るとなぜだかあたし、体がむずむずするよ」



 なにかを我慢するように、妖精が自分の腕を抱きました。

 

 そういえば魔女っこも時折、私の目を見ながら蜜が欲しいとお願いしてくる。

 私の目には蜜が食べたくなるような何かがあるのだろうか。

 鏡がないから自分の目のことは全くわからないよ。



 そういえばさっき、この妖精さんは私の蜜を飲んだよね。

 解毒するためだったから本人の意識はなかったとはいえ、体は蜜の味を覚えているのかもしれない。


 ともかく、これはチャンスだよ。


 私は蔓にかぶりつきます。

 そうしてふんだんに蜜を付着させていく。

 私の金色に輝く蜜を目にした妖精さんが、ごくりと生唾を飲む音が聞こえる。

 


「妖精さん、この蜜を、あげるから、お願いを、きいてくれる?」



 蜜を渡す代わりに、東の森に案内してもらうのだ。

 

 きっとこの妖精さんは、甘いものが好きなのでしょう。  

 蜜を早く舐めたいと語っているのがわかるよ。

 なにせ口からよだれを垂らしているからね。



「あたしどうしちゃったのかな。その蜜を見てから、体がうずいちゃうほど蜜が舐めたいと思っちゃうの」

「蜜、欲しい?」

「ど、どうしよう。欲しい、かも……!」



 見えない釣り針に妖精が食いついたのがわかりました。



「なら、交換条件。私たちを、東の森まで、連れて行って」

「それだけでいいの?」

「あとは、住みやすい場所を、教えてくれれば、それで良い」

「のった!」



 蔓で妖精さんの手とタッチします。

 交渉成立だね!


 蜜付きの蔓を妖精さんに差し出します。


 妖精さんは蜜を一口、ペロリと舐める。

 そうしてすぐさま、二口、三口と蜜を舐め続ける。



 小さな妖精さんからしたら、太くて丸い蔓の蜜を舐めとるのは苦労しそうだったけど、なんなく飲み干すことができたみたい。


 というか、かなり蜜が気に入っているね。

 それとも、元々甘党の妖精だったのかな。



 蜜を舐めてから、何度も私の目をチラ見している。


 まるで恋する乙女のよう。

 つい気になるあの人へと視線を移してしまっている、初恋の女の子みたい。


 

 とにもかくにも、これで妖精さんに案内をしてもらえることになったね。

 私、偉いよ!


「じゃあ、安全な、場所まで、案内よろしく」

「この森のことならなんでも知っているからね。あたしに任せなさい!」


 妖精さんは自分の小さな胸をトンと叩きます。



「でも、あたしからも追加条件があるよ。無事に東の森に着いたら、またアルラウネの蜜をちょうだい」

「…………わかった」



 なんだろうね。

 私はまたとんでもないことをしてしまったのかもしれません。


 また一人、蜜好きを増やしてしまったような……。



「アルラウネ、わたしも蜜欲しい」


 妖精さんに触発されて、魔女っこまで蜜を求めてきたよ。

 

 二人分の蜜を出すことになる私。

 

 私は蜜製造機ではないのですよー!

 と、文句を言いたくなるね。


 このまま蜜を求める相手が増え続けたら、私、蜜の出しすぎで干からびちゃうんじゃないかな?


 それは怖いかも。



 嫌な予感を覚えながら、私は蔓にかぶりついて蜜をべっとりとくっつけるのでした。


お読みいただきありがとうございます。


次回、西の森から東の森へです。

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― 新着の感想 ―
ようせいさんは みつで せんのうされてしまった! みつきょうの えいきょうは さらにひろがった!
[良い点] 相変わらず見ごたえのある戦闘シーンです。僕にはないセンスだ。 [気になる点] 彼女たちの安住の地は何処……本当に戦いどおしでちょっとかわいそうです。 [一言] 白熱するバトルと裏腹に戦わな…
[良い点] 74/74 ・素晴らしい。蜜の中毒性が破壊力バツグンすぎる [気になる点] 女神に蜜飲ませたい [一言] ハチミツ食べたくなってきた
2020/06/16 19:54 退会済み
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