43 破滅を呼ぶUFO
私、植物モンスター娘のアルラウネ。
ちょうど今、光るUFOが突然消えるという夏の怪奇現象を目撃したところなの。
あの未確認飛行物体は前にも見たことがあるね。
去年の夏の始まりと終わりに現れた、燃えるように光るUFOだ。
あの未確認飛行物体が森にやってくると、猛暑が続いて日照りが発生した。
逆に未確認飛行物体が消えると、夏が終わって涼しくなった。
そんな夏を呼ぶUFOが再び現れたのだ。
こちらに飛んできたと思ったら、凄まじい発光を起こして消えてしまった。あの光はいったいなんだったのだろう。
もしかして、もう春が終わって夏になるのかな。
まだ夏の時期には早い気がするのだけど。
でも、この暑さは夏そのもの。UFOとともに夏までやって来てしまった。
気候を操れる存在なんているのだろうかと私が考えていると、突然遠くから爆音が聞こえた。
なにごと!?
もしかしてUFOから爆弾でも投下されたの??
でも、この世界にそんなものはないよね。
続けて、爆風が吹き荒れた。
強烈な風によって森が騒めく。
遠くの方から煙が上がっていた。まるでキノコ雲みたい。
いったい何が起きたの。
あんな爆発、上級魔法使いが複数名で発動する大規模魔法に匹敵するか、それ以上の火力だよ。
もしかしてあのUFOのしわざかな。
発光する前に見たときと同じ方角だし。
たしかあの辺りには蜜狂いの少年が滞在していた村があったはず。
村でなにかが起きたのだ。
立て続けに、爆音が響いてくる。
まるで戦闘でも始まったみたい。
もしかしたらあの王国軍の兵士が誰かと戦っているのかもしれない。
それにしてもいったい誰と。こんな大騒ぎをしなければならない敵なんて、そうはいないはずなのに。
戦いはまだ続いているようだった。
しばらくすると、煙の量が増えていく。
いたるところから立ち上る煙は、私の正面の方角全てに広がっていた。
まるで前方の森が燃えているような景色だね…………。
うん、これさ。
森、燃えているんじゃないかな?
そうとしか思えない煙の量だよ。
あ、見て。
空に火柱が上がっている。
あれほどの炎魔法の使い手はそうはいないよね。
あんなのが暴れているなら、森に飛び火してしまうのも当然だよ。
ということはさ、やっぱり森、燃えているね。
──えぇ、どうしよう。
まだかなり遠くだけど、このままだと火は森全体に広がるかもしれない。
まずいね、今すぐ逃げなくちゃ!
でもさ、ちょっと待ってよ。
私、逃げられないじゃん。植物だから。
だからなんで植物は火事を目の前にしても逃げられないの。早く移動しようよ。だって燃えちゃうよ?
どう頑張っても、私の根っこは歩き出そうとはしてくれない。
退避は不可能。
ならばできることは一つしかないね。
私は近場の木を全て抜根することにした。
火事になれば、これらの木から火が私に移ってしまうかもしれない。
だから木を出来る限り引き抜いて、私を中心とする空き地スペースを広げれば、たとえ炎に囲まれても生きのびることができるかもしれない。
よいしょっと。
あ、見てみて。
あんなところにトウモロコシみたいなのが生えている木があるよ。
手前の木がなくなると、普段は見えなかった木が目に入るようになってなんだか新鮮だね。
そうやって抜根を続けていると、なんだか違和感を覚えた。
あの枯れ木、あんなに遠くにあったっけ?
そう、突然現れたあの枯れ木のことだよ。
今までは私から比較的近い場所に生えていた気がするんだけど、その辺りの木を抜いてみたら思ったよりも枯れ木の位置が遠かったの。
距離感が麻痺しているのかな。
まあ、あの枯れ木のことは少し気になっていた存在だったし、抜かないにこしたことはないね。ただでさえ、いきなり枯れちゃったのにこれ以上はかわいそう。同じ植物として同情しちゃうの。
火事の煙が少しずつ近づいて来た。
このままでは森が全焼してしまう。
できれば消火活動をしたい。でも、それは許されない身の上。
囚われの姫のように、私は王子様の助けを待つことしかできないのだから。
あぁ、私の森が燃えてしまう。せっかく森の主にまでなったというのに。
いったい誰がこの火事を起こしたのでしょう。
犯人は今すぐ名乗り出なさい。
私がお説教をしてあげましょう。
私の怒りに応じたかのようなタイミングで、森の向こうから光の球が立ち上がったのが見えた。
いや、あれは球ではない。
長くて太い棒のようなものが垂直に空へと伸びている。
それは灼熱に燃えながら強烈な光を放っていた。
形はなんだか蛇の尻尾のようにも見える。
もしかしてあれがUFOの正体かな。
見たところ、いったい何なのか見当もつかない。
謎の尻尾のようなものを遠目で観察していると、光が一点に集中していった。
光の球が尻尾の先で大きく膨れると、臨界点をむかえるように弾け飛ぶ。
尻尾を中心に、光の束が全方位へと放たれた。
まるでビームのよう。
女子高生時代に見た、怪獣映画のワンシーンのようだった。
無数の光線が、森の木々を空中へとえぐり飛ばす。
光線に焼かれた木は、黒い灰となって風に流されていった。
────ななななななな、なにいまのぉおおおおおおおおおおおッ!?
あんなの見たことないよ!
直撃すれば街一つくらい簡単に消し飛んでしまうような威力だって。
聖女としてこの世界で様々な強者と戦ってきたけど、あんな規格外の攻撃は見たことも聞いたこともない。
伝説に語り継がれる神話の出来事のような荒々しくも神々しい光だったね。
良かった。
あの光線が私の方に飛んでこなくて本当に良かった。
今のビームのせいで、森のかなりの範囲が灰塵に帰しただろうね。
直接目撃しても、未だに信じられないような出来事だったよ。
もうあれだけで大惨事。
けれども不幸なことに、私を襲う恐怖はこれだけではなかった。
続けて、前方から大きな炎の塊が飛んできたのだ。
まるで怪物が放つ炎のブレスのよう。
広大な火炎放射の波が森を襲った。
──ひぃっ!?
なにあの炎!
もしかしてUFOから放たれているの?
まるでUFOが戦場の兵器みたいだよ。
殺処分されるように焼き払われちゃうよ。
も、もうやめてっ!
勘弁してよ。これ以上私を虐めないで。
いやだよ。
燃えたくないよ。
あんな怖い炎なんて浴びたくないの。
だからもう許してください。こっちに来ないで。
そんな祈りを無視するように、絶望の炎が踊るように私に近づいてきた。
触れるだけで灰になってしまうような、灼熱の舞踏会のお誘いである。
拒否権はなく、抱きつかれれば生存の未来もない。
もちろんそんな命を捧げるダンスなんてしたくはない。
いやなの。燃えるのは情熱に焼かれる恋だけで充分。
死へと誘う死神の炎とは踊りたくない。
だからお願いします。
どなたか、私を助けてください。
そうして私の手を取って、ここから救いだして。
お読みいただきありがとうございます。
今日は一日二回更新となります。
次回、白馬の王子様、あるいは王女様です。







