247 まさかこんなにパーティーの協力者が増えるなんて
今回は懐かしい人物が盛りだくさんです。
帝国の姫であるフリエと、領主のマンフレートさんが結婚します。
二人を祝うため、私主催のパーティーを開催することにしました!
会場はこの森です。
ここならいくら騒いでも、誰も怒らないからね。
問題は、その準備。
会場の設営は、妖精キーリと、妹分のアマゾネストレントに任せることにしました。二人のサポートとして、ウッドゴーレムにも働いてもうよ!
そう決めたはずなのに、さっそくキーリが困った顔をしながら飛んできました。
「会場って言われてもさ、どんなふうに造ればいいの? まったく見当つかないんだけどー」
よく考えてみたら、妖精であるキーリと森育ちのアマゾネストレントに頼むには難しい仕事だよね。
だって二人とも、私と同じで家に住まないで野宿生活なのに。
「ええとね、イメージ的には、大きなガゼボを建てて、森を見ながら、わいわいやりたい、なーなんて」
せっかく森でパーティーをするのだ。
解放感ある会場にしたいよね。
「よくわからないけど、わかった。ちょっと造ってみるよー」
その結果、会場設営は困難を極めました。
なにせ現場監督は妖精です。
飽きると、どっか行ってしまうのだ。
トレントは真面目に一人で作業を進めているけど、どんな建物を造ればいいのかわからなくて四苦八苦しています。
うぅ、いったいどうしたら……。
「困っているみたいだな、紅花姫様」
「あ、あなた、たちは!」
──大工の棟梁さんと、その大工さんたち!
以前、彼らには森でウッドハウスの建築をお願いしたことがありました。
その縁で交流があるんだけど、なんで棟梁さんたちがここにいるの?
「ルーフェのお嬢ちゃんから聞いたぜ、でっかい建物を造るって。紅花姫様にはいつも世話になっているからな、俺たちにも手伝わせてくれ」
「と、棟梁さん……!」
か、かっこいいー!
まさか棟梁さんたちが手伝いに来てくれるとは思っていなかったから、すごく嬉しい。
人との繋がりはこういうところで生きてくるんだということを、再認識してしまったよ。
ルーフェのウッドハウスを建築した棟梁さんたちなら、立派なパーティー会場を造ってくれるはず。だってプロだもん。
あとでルーフェにお礼をしないとね。
いつの間に棟梁さんを呼んでくれていたんだろう。
勉強で忙しいのに、気を遣わせちゃったよ。
他にも、棟梁さんたちが来たことで、トレントはさらにやる気を見せていました。
トレントは前回、棟梁さんたちに認められるほどの建築スキルを披露していたからね。
今回もトレントはやる気満々といったふうで、意気揚々と金槌を握っています。
こうして現場監督はキーリから棟梁さんに交代しました。
おかげで設営については、ほとんど任せることができる。
建築に必要な木材を用意した後、私は他の準備に移ることにしました。
「ええと、みなさんを、今日お呼びしたのは、ほかでも、ありません。みんなに、お願いが、あります」
パーティーの運営を手伝ってくれそうなメンバーを集めてきたよ。
助力をお願いしたら、みんな「面白そう」と二つ返事で協力してくれることになりました。
集めたメンバーに対して、さっそく仕事を割り振っていきます。
「チャラ男は、食材の、確保を、お願い」
「任せろ! 大物を狩ってきてやるぜ!」
食材の確保は、チャラ男ことカイルが引き受けてくれました。
野菜は私が作るから、主に肉関係を担当してもらいます。
大船に乗ったつもりでいろと言い残し、チャラ男はドリュアデスの森へと旅立ちました。
炎龍様の弟だし、ラオブベーアを捕まえてきそう。
久しぶりにクマ肉が食べられるかもね。じゅるり。
「メルクは料理を、お願い。エルフの料理は、珍しいから」
エルフ料理は変わったものが多いので、美食家のマンフレートさんが喜んでくれると思うんだよね。
「別にエルフ料理を作るのはいいけど、人間の口に合うかはわからないわよ?」
「その時は、ちょっと、アレンジを、お願いするかも」
私はイリス時代に、メルクのエルフ料理をご馳走してもらったことがあります。
あの時は、「なんか物足りない」と思ったけど、いまなら理解できる。
ずばり、エルフの料理とは、精進料理のことだったのだ!
肉や魚を使わない、森の料理。
前世の記憶があるいまの私なら、その美味しさを理解できる。
少しアレンジさせてもらって、この世界の人間の口に合うよう改良すれば問題ないはずだよ!
というわけで、メルクには料理担当になってもらいます。
でも、パーティーといえばたくさん料理を出す必要がある。
他にも料理人がいないといけないんだけど、それは後ほどのお楽しみです。
「ヤスミンと、ヤスミンママさんには、当日の給仕を、お願いします」
「問題ないわ! なにせあたしは、元メイドなんだから!」
「あらあら、もしかしてママもメイド服を着るのかしら。ヤスミンより似合っていたらどうしましょう」
最大の悩みの種が、パーティー当日の人員です。
ホール担当できるのが、森にいないんだよー!
私は根があるから動けないし、キーリは小さくて物が持てない。
トレントは器用だし給仕もできそうだけど、経験が皆無。
だから現場でリーダーとなれる人が欲しかったの。
なので、悪魔のヤスミンとヤスミンママには、給仕を担当してもらいました。
「ヤスミンパパさんは、全体の監督と、経理を、お願いします」
「パパは文官だからね。戦うのは苦手だけど、そういうことなら任せてもらうか!」
ヤスミンパパは、悪魔だけど魔王城で文官していたらしい。
なので、面倒くさいことをすべて任せることにしました。
べ、別に、私が無理やりお願いしたんじゃなくて、向こうからやるって申し出てくれたんだから!
そこのところ、勘違いしないでよね!
「フェアちゃんは、会場の装飾を、お願いね。綺麗なお花で、この場を盛り上げて、欲しいの」
「母上のためなら、なんでもするよ!」
私から生まれたドライアドの子供のフェアちゃん。
直接会うのはかなりご無沙汰だったけど、実は地下で根っこが繋がってるから、頻繁に脳内会話をしているんだよね。
なので、けっして育児放棄をしていたわけではありません。
それにフェアちゃんは私が南の森に冒険者として留守にしていた間、代わりにアルラウネの森を管理してもらっていたんだから!
ちなみに、ドライアド様は欠席です。
人が集まるところは苦手みたいで、聖域に引きこもられてしまったのだ。
あとは魔女っこだけど、司祭様の勉強会があるから向こうを優先してもらいました。
本人の要望で、当日は給仕の手伝いをしてもらう予定です。
あの魔女っこが積極的に人前へ出ると申し出てくれるなんて、本当に成長したね。
嬉しくて涙が出るよ……!
ポロリと私が蜜の涙を流すと、待ってましたというように空から影が差し込みます。
鳥の羽がバサリと音を立て、一匹のハーピーが舞い降りてきました。
「紅花姫様。その蜜、此方が舐めてもいいですか?」
ハーピーのパルカさんです。
魔王軍に所属している彼女は、私と炎龍様の蜜の交換便を引き受けてくれています。
定期的に私から蜜を預かりに来るんだけど、まさかこのタイミングで来るとは思わなかった。
「なにやら面白そうなことを計画しているようですね。此方は紅花姫様の貴重なお姿を拝見したいので、手伝ってあげます」
なんと、パルカさんも力を貸してくれることになりました。
集めたメンバーはさっきので全員だったから、想定外です。
正直、まだまだ人が足りないから大助かりだよ!
「でも、パーティー中に、私をストーキング、するのは、禁止します」
「そ、そんな……此方の唯一の楽しみが」
兄である四天王の黄金鳥人と同じで、聖女イリスのストーカーだったパルカさんは何をするかわからない。
いまのうちに釘を刺しておかないとね。
──とはいえ、どうしよう。
ハーピーにお願いできる内容が思いつかない!
両手が羽のせいで、給仕もできなければ、大工仕事も無理。
ペンを持てないから事務仕事もできないし、いったい何をお願いすればいいの……?
「とりあえず、なにか食材を、持ってきて、くれれば、いいです」
「食材だな。此方、わかったぞ」
ちょっと心配だけど、食材探しなら迷惑になることもないでしょう。
そう軽く考えていました…………その日までは。
数日後。
ハーピーのパルカさんが再び森にやって来て、こんなことを告げてきます。
「紅花姫様へ、グリューシュヴァンツ様からの伝言です」
ええ、炎龍様からの伝言!?
蜜の定期便は送ったばかりだけど、いったいどうしたんだろう。
私、もしかしてなにか粗相でもしちゃった?
「伝言を復唱します──其方、魔族を集めて面白そうなことをしているようだな。良いワインを持っていくゆえ、楽しみにしている──とのことです」
──うん!?
それってもしかして、炎龍様がパーティーに参加するって、こと…………?
──え、それ、大丈夫!?!?
まさか魔王軍の面々も参加してくるとは思いもしなかった。
まあすでに、悪魔一家とドラゴンの弟と、ハーピーが一匹、参加予定なんだけどね。
そのせいで炎龍様も来たくなっちゃったのかも。
完全に想定外です。
ひとり除け者にしたと思わせたのなら、悪いことをしちゃった。
だからいまさら、「ダメです」なんて言えないよ。
怒らせたら私、燃やされそうだもん。
一応、炎龍様は人間の姿になれるから正体も隠せるし、大丈夫だよね……。
パルカさんが帰ったあと頭を抱えていると、続けて悲劇が起きました。
魔女っこの勉強を終えたパンディア司祭が、こんなことを言ってきたのです。
「ルーフェさんから聞かせていただきました。森でのパーティー、ワタクシも参加させていただくつもりでございます」
「え…………」
「給仕の枠が足りないと伺いました。経験はございませんが、ワタクシも精一杯努めさせていただく所存でございます」
ど、どうしよう!
大問題が起きそうだよ!!
パンディア司祭は聖女並の力を持っている。
【女神の巫女様】の命令で、ミュルテ聖光国から私を調査しに来た張本人でもあるし、魔王軍のことは大嫌いなはず。
そもそも教会と魔王軍は、千年も前からお互いを滅ぼすため争っている仲なのだ。
そして炎龍様は、魔王軍の偉い人です。
最悪、森が戦場になる可能性だってある。
最悪のブッキングです。
なんとか、丁重にお断りしないと!!!!
「司祭様に、給仕をさせるなんて、申し訳ない、です」
「お気になさらずに。ワタクシ、人々のこういう催しを見るのが、昔から大好きだったのでございます。いつもは雲の上から眺めていただけに、一度経験してみたかったのでございますよ」
雲の上って、ミュルテ聖光国の女神の塔から下界を監視していたってことでしょう?
私、知っているんですから。
あなたが実は、【女神の巫女様】のスパイだってこと!
「パーティー、楽しみでございますね。どんなお客様が来られるのでございましょうか」
ま、まずいよ。
本当にどうしよう。
このままだと、炎龍様とパンディア司祭が鉢合わせしちゃうんですけど!!!!
久々にいろんなキャラが大集合でした。
懐かしすぎる登場人物もいたので、あまり記憶にない人もいたかもしれません……!
そして、いまとなっては懐かしいあのキャラが、今月の3/23に発売するコミックス5巻にも登場します!
今回も漫画を描いてくださっているぐう先生に、キャラクターデザインしていただきました。
いったい誰のことなのか、どんな外見のキャラクターなのか、よろしければコミックスで確認していただけると嬉しいです(*´▽`*)
次回、多種族多勢力が集まりすぎました、誰か助けてです。