25 森の主の座
私、自称普通のお花さんのアルラウネ。
このたび、植物だけど森の主に就任しました。
そう、ついに倒してしまったのだ。
あのクマパパを。
蜜中毒者を蜜で毒殺。
私の勝利だ!
私をペロペロした者の末路である。慈悲はもちろんない。
もぐもぐ。
うん、やっぱりクマパパは食べ応えがあるね。
体の一部を少しずついただいているのだけど、まだ数日かかるかも。
10メートルもする巨大なクマだから、簡単には消化できないや。
クマママはその辺に置いといてある。
こっちはとりあえず保存食だね。
あ、雨も降ってきたよ。
天も私の勝利をお祝いしてくれているんだね。
雨が降ってきたおかげで、シャワーも浴びられて私はハッピー。
戦いのあとの雨は最高だね。お水おいしい。
クマパパは倒れた。
そして、ここは私の森となったのだ。
そのため、森の四天王が欠けて戦国時代に突入していた森にまた平和が戻った。
なにせ戦闘狂のモンスターがみんないなくなってしまったからね。
いやね、私のお腹の中に住処を決めた魔物もたくさんいたけど、きっと全部じゃないよ?
勘違いしないでよね。
私、そんなに大喰らいじゃないから。
ああー満腹満腹。
いつの間にかクマパパ全部、食べ終わっちゃった。てへ。
じゃあお替りということで、クマママもいらっしゃい。
私のお腹の中でも夫婦仲良く暮らしてね。
そうして、ここは私の森となった。
大物の魔物が絶滅し、争いが極端に減った。
そのため縄張り争いが終結したことで、これまで鳴りを潜めていた小物の魔物が森に姿を戻したのだ。
小さな小食の魔物や動物たちが、森の中を自由に歩けるようになった。
その中にね、いたの。
私の知り合いが。
そう、私は再会したのだ。
クマパパを倒したら懐かしい友人とまた顔を合わすことができた。凄く嬉しい。
私の前にはハチ型モンスターことツォルンビーネが数匹滞空していた。
ごきげんよう。
久しぶりハチさん。元気にしていた?
私の女騎士ことハチさん軍団。
どうやら生き残りがいたみたいだね。
ハチさんにとってクマパパは一族の仇。
クマパパを恐れて私の近くからは姿を消していたのかもしれないね。
でも安心して。
クマパパは今、私のお腹の中で夫婦そろって消化されているところだから。
もうハチさんたちに危害を加える変態なクマさんはいなくなったの。
良かったよ、ハチさん。
これでまた一緒に生活できるね。
そうと決まれば百合の園を再建しましょう。
森サーの再建です。
私の女騎士をたくさん増やしてみんなに私を囲わせなくちゃ。
そのためにハチさんに蜜をたくさんプレゼント。
巣に持ち帰ってもっと女騎士を増やしてきてねー。
ちょっと待って、ハチさん。
私を受粉させようと突っ込んできたこの女騎士はどなた?
もしかして新入りかしら。
いやね、新人の教育はしっかりしてもらわなくちゃ。
あやうく私、受粉しちゃうところだったんだけど。
そういえば前にも私を受粉させようとしたハチがいたね。たしかあいつは悪役令嬢だっけ。
バッドエンドを迎えたくなかったら、あなたも私の森サーの一員になるの。
立派な女騎士として成長して、私を養ってね。
女王陛下はまだご息災かしら。
なるほど、良かったよ。
クマパパにやられたわけじゃなかったんだね。
では女王陛下であるお姉さまにもよろしくお伝えくださいませ。ハチさん、ごきげんよう。
蔓を振ってハチさんを見送っていると、またもや知り合いが現れた。
とはいっても、こっちは白い鳥ことアホ鳥である。
こないだは逃げられたけど、また来たよ。
もしかして私が白い鳥を食べようとしていることに気がついていないのかしら。
やっぱりアホ鳥だね。
あなたは同じ知り合いでも私の餌の対象になります。
だから早くお腹の中に入って栄養になってよね。
白い鳥は蔓の射程範囲ギリギリのところを旋回する。
私の遥か上空を優雅に飛行していた。
蔓を急成長させても、あそこまで高いところまで伸ばすのは大変だ。
仮に急成長させて届いたとしても、間違いなく避けられる。
自由に空を羽ばたくことができる鳥にとっては、下からだんだんと伸びてくる蔓なんて止まってみえるだろう。
白い鳥め。
意外と頭良いな。アホだけど。
ぐぬぬ。
白い鳥を見つめていると、何かが落ちてきた。
あのアホ鳥、また落とし物をしているのですけど。
どれだけおっちょこちょいなの。
落とし物は花だった。
前回は赤いバラだったけど今度は青い花。
この世界でも前世の地球でも見たことがない花だけど、これといって特徴がない普通の花。
ためしに食べてみたけど、特別なにか新しいことができそうな気はしなかった。
増えたことといえば、普通の青い花を蔓に咲かせるようになったくらいだ。
なんだったんだろう、あの白い鳥。
私が新しく青い花を咲かせるところを見たら、どこかへ飛んで行っちゃったよ。
よくわからない。
そもそも、巣作りにこの花を使うのだろうか。
バラもそうだ。
小さな枝とかを巣にするはずだけど、花なんて持って行っても枯れてしまって終わりだ。役に立たないはず。
鳥のマイホームにインテリアとして飾るつもりなら持って帰るのもわかるけど、そんな鳥はいないよね。
やっぱり変な鳥だよ、白い鳥は。
それからというものの、白い鳥はちょくちょく私のところに花や植物を落としていった。
もしかしてこれ、いやがらせかな?
絶対にわざとやっているよね。
お前もこの植物たちみたいについばんでやるから覚悟しろ、という鳥からの挑戦状だろうか。
はたまた、この花見てみろよお前よりもよっぽど綺麗だよな、という方の挑発だろうか。
鳥にそんなこと言われる筋合いはないよ。
どちらにしろ、これは喧嘩を売られているね。
白い鳥、許せぬ。
今度はお前を血祭りにあげてあげましょう、という意味を込めて、その辺の木にとまっていた他の小鳥に毒花粉をお見舞いする。
小鳥さんは逃げようとしたけど、毒花粉を吸いこんでしまったみたいであえなくダウン。
パクリ。
うーん、小鳥だとホント、食べた気がしない。
小さすぎるんだよね。
これじゃ栄養にならないよ。
でも、アホ鳥の代わりの腹いせにはなるね。
今週の獲物は鳥強化週間にしようか。
私があえて鳥ばかりを狙っていることに白い鳥も気がついたみたい。
身の危険を感じたんだろうね。
それから私に植物を落としてくることはなくなった。
白い鳥のいくじなし。
仲間の仇だと私のところに決闘を申し込んできてくれさえすれば、美味しくいただいてあげたのにね。残念残念。
白い鳥からの落としものはなくなった。
だが、代わりに私のところに貢物が届くようになったのだ。
生贄という名の私の食料が。
私のところに、貢物がせっせと歩いてきた。
タヌキがね、私に捧げられに来ちゃったの。
一族を助けるために、勇気を出して人柱となり私の栄養となることを選んだのだろう。その心意気は素晴らしい。
けどね、そんなに私は怖い存在じゃないから。
勘違いしないでよね。
別に私はあなたのことを好きで食べようとするような獰猛な生き物じゃないから。
貢物として差し出されたから、仕方なく栄養にしてあげようと気をつかっているんだからね。
私はただの綺麗なお花さんだから。
そんな美しいフラワーな私と一つになれるのだから、きっと幸せな気持ちになれるよ。
心配なんてすることはない。
不安がる必要もないの。
苦しまないよう楽にいかせてあげるから。
だから泣きたくなるような目でこっちを見つめないで。震えないで。
そんなに怖い存在じゃないのにね。
勘違いされるって、辛いよね。
どうやら私、森の生き物から供物を捧げられるくらい、恐れ奉られるようになっちゃったみたいです。
本日も一日二回更新となります。
次回、生贄を捧げられるのは心苦しいけどお腹が膨れるからやっぱり好きです。







