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144 アルラウネvsドライアド その3

 最初は厳しい戦いだったけど、もはや敵は姉ドライアドのみ。

 対するこちらは、私以外にも聖女見習いのニーナと妹ドライアド様、それに妖精たちや子アルラウネたちまでいます。



 どう見てもこちらが有利。

 このまま押し切るよ!



 けれども状況が悪いはずなのに、姉ドライアドはクククと余裕そうに笑みを浮かべました。



「勝ったつもりでいるかもしれないけど、タイミングが悪かったようだねえ。あれを見ると良いよう」



 姉ドライアドが西の方角を指さしました。

 視線を向けると、西の森からモンスターの大群が現れていました。

 


 ざっと100匹以上はいるよ。

 しかも森の四天王レベルのつよつよなモンスターがたくさん混じってるの。

 血の気の多そうな猛獣の鳴き声が何重にも聞こえてきて、かなり迫力があります。

 


 さすがにドリンクバーさんたち冒険者4人じゃ、あの数は対処できないよね。

 そう不安に思ったのは私だけではなかったみたい。


 妹ドライアド様が「アルラウネ、あのモンスターはわたくしが対処いたしましょう」と、私に声をかけてきたの。



「正直なところ、同じドライアドでもわたくしの実力では姉に打ち勝つことはできません。姉を倒すには、アルラウネの力が必要です」



 たしかにこのままいけば、姉ドライアドはなんとかなる気はします。

 でも、あのモンスターの大群の相手までしている余裕はない。

 だから役割分担は私も賛成です!



「わかりました。私が、精霊姫を、倒します!」


「森の用心棒として期待しております」



 そういえば、まさか魔王軍の四天王と二度も戦うことになるとは思わなかったよね。

 森の用心棒、ちょっと大変すぎな仕事だったのでは?



「頼みましたよ、アルラウネ。姉を憎しみの怨嗟から解放してください」



 そう言うと、妹ドライアド様がモンスターの大群の前へ転移しました。


「精霊魔法『大森林の支配権ヘルシャフトプフランツェ』」と魔法を発動し、樹木の壁を築きます。



「こちらはわたくし一人で十分です。人間たちも、アルラウネの援護を」と人間たちに指示を出しました。

 それを受けたドリンクバーさんたちが、「了解しました!」と言いながらこちらへと戻ってきます。




 配下のモンスターが足止めを受けたことで、姉ドライアドがため息を吐きました。



「良い判断だねえ。妹ならモンスターの大群に対してだけなら、時間稼ぎをすることは可能だろうさ」


「それでも、こちらが、有利には、変わりないです。降参して、くれますか?」


「アタシが降参だって? バカ言っちゃあいけないよう。配下なんて草の数だけ増やすことができるんだからねえ」



 姉ドライアドが祈るように両腕を掲げます。

「精霊魔法『性質変化(フェアエンデルング)』“暴虐植物獣”(ベグライテリン)



 姉ドライアドの周囲の芝が、急成長していきました。

 ニーナが「雑草が植物モンスターに!?」と声を上げ、姉ドライアドがギロリとニーナを睨みつけます。



「そこの聖女見習い、その発言は間違っているよう。雑草なんて植物は存在しないのさ。どの子も可愛いアタシの植物たちなんだからねえ」



 マンイーターをさら巨悪にさせたような植物モンスターが大量発生しました。

 相手はマッドサイエンティストな森の精霊ドライアド。

 配下は無尽蔵に創り出すことができでるみたい。

 

 でもね、それくらいの相手なら、私にとっては敵にもならないんだから。

 だって私にだって、仲間がたくさんいるんだから!

 



 ごきげんよう、姉ドライアドさん。


 この度は、わたくし主催のアルラウネ合同演奏会にお越しいただき、ありがとうご存じます。

 アルラウネ・テッポウウリ交響楽団による、アルラウネと子アルラウネ、総勢18人による大合奏会のお時間でございます。



 それぞれの子アルラウネが20丁、そしてわたくしが40丁のテッポウウリマシンガンをご用意させていただきました。

 合わせて380丁のテッポウウリマシンガンによる巨大編成のマンモスオーケストラですの。



 それだけでなく、お客様へとサービスもご用意いたしております。

 姉ドライアドさんをこの場で倒したら、そのまま鎮魂歌(レクイエム)を演奏してあげましょう。

 ですので、死者の国へ旅立ってもご安心くださいませ。



 では、四天王のフェアギスマインニヒトさまへ送る、アルラウネ・テッポウウリ交響楽団の演奏をご堪能ください。



 ズポポポポポポポポポンッ!!



 わたくしと子アルラウネたちよる大合奏が始まりました。

 観客である姉ドライアドの盾の植物モンスターたちに、数え切れない程の棘種が刺さっていきます。



 どうやらわたくしたちの演奏を気に入ってくださったみたいで、植物モンスターたちに刺さった種が発芽し、新たな子アルラウネが生まれました。

 そうしてネナシカズラによって寄生した子アルラウネたちによって、植物モンスターたちは内部から破壊されて、次々と倒れていきます。

 その場には子アルラウネたちだけが残りました。


 なんと、ただのオーディエンスだった植物モンスターたちが、あっという間に演奏する側へと回ってくれたのです。



 新たにアルラウネ・テッポウウリ交響楽団のメンバーとなった新生子アルラウネたち20人と一緒に、今回の一番のお客様である姉ドライアドさんへと盛大な演奏を送ります。

 さあ、一緒に姉ドライアドさんへわたしたちの想いを届けましょう!



 盾を失った姉ドライアドは、地面から樹木の壁を作り出したみたいですが、そこに刺さった種から再び新たな子アルラウネたちが生まれていきました。

 壁を突き破り、さらに演奏に重みが加わります。



「これはさすがのアタシでも防げないねえ……」という姉ドライアドの小さな声が耳に入りました。



 そうして森を覆いつくすような轟音を発する種弾が、ついに姉ドライアドの足となっていた陸ガメに届きます。



「ここまでかね、降参…………なんてするわけないのさ。そんな攻撃、通じないねえ!」



 突如、姉ドライアドの周囲に光のバリアが貼られました。

 勇者の兜を使用して、光魔法で小さな結界を張ったみたい。



「残念だったねえ、お姫様。奥の手は最後まで隠しておくものさ!」



 勇者の兜をある程度扱うことができるとは言っていたけど、こういうこともできたんだね。

 ビックリだよ!



 でもね、光魔法はわたくしには通じないのです。

 光魔法を極めた聖女としても、光合成大好きな植物としても、それが通じないことはわかっているの。



 種弾がバリアに接触した瞬間、種が結界の光魔法を吸収しました。


 わたくしは光魔法をエネルギーとして吸収することができます。

 種だってわたくしの身体の一部。だから同じように光魔法を無効化することができるんだから。



 次の瞬間、姉ドライアドの焦ったような声が聞こえてきました。



「そんなバカな、結界が通じないっ!?」



 勇者の兜のバリアを、種弾が通り抜けるように通過しました。

 そのまま数え切れないほどの棘の種が、陸ガメに突き刺さります。


 すぐさま種は発芽し、ネナシカズラとなって陸ガメの体内を侵食していきました。

 ネナシカズラの触手は、陸ガメの甲羅に生えていた姉ドライアドの本体である古木へと伸びていきます。



 苦虫をつぶしたような表情となった姉ドライアドが、口惜しそうに呟きます。


 「どうやらこの身体はここまでのようだねえ、気に入っていたのに残念だよう」と、古木に付着している小さな物体を手に取りました。

 どうやら本体の木に小さな卵を付着させていたみたい。

 


「精霊魔法『強制的生命操作(ティクタートア)」』



 姉ドライアドが魔法を唱えると、卵から子蜘蛛が孵化しました。

 子蜘蛛はその場で急成長していき、陸ガメと同じくらいのアシダカグモになります。

 精霊魔法で急成長させたうえに、魔改造したんだ!



「久々の引っ越しの時間だねえ」と告げると、姉ドライアドの古木の枝がアシダカグモへと伸びていきます。


 蜘蛛の背中に枝が突き刺さると、枝が丸太のように太くなりました。

 陸ガメの背中に生えていた古木が、アシダカグモの枝に吸い込まれるように移動していきます。


 またたく間に、姉ドライアドは陸ガメからアシダカグモへと宿主を変えてしまいました。



「カメは防御力が高かったけど、歩くのがのろまだったからねえ。それにくらべて、この蜘蛛は素早いうえに優秀だよう」



 アシダカグモが大きくジャンプします。

 でもさすがにその巨体じゃ、いくら早くても500丁を超えるテッポウリマシンガンの種を避けきることは不可能なの。



 私のテッポウリマシンガンによる種の掃射が、アシダカグモを襲います。

 けれども、種は蜘蛛には当たりませんでした。



 アシダカグモが蜘蛛の巣のような糸を出して、種弾の盾にしたのです。

 魔改造されたアシダカグモは、硬くて粘着質のある強力な糸を作り出すことができるみたい。


 その糸で蜘蛛の巣の盾を前面に作って、私たちの攻撃は防がれてしまったの。

 陸ガメよりも厄介だね。いったいどうすれば……!



「残念だったねえ、お姫様。アタシのクモの改造糸で種を包んでしまえば、種が貫通することも発芽することもないようだよ」


「でも、反撃する、暇も、ないのではなくて?」


「その通りだよう…………仕方ないねえ、アレだけはやりたくはなかったんだが、この状況ではやむを得ないねえ……」



 姉ドライアドが地面に着地します。

 そしてアシダカグモの背中に生えている古木の枝が、地面へと垂れるように突き刺さりました。



「この手を使わせるお姫様が悪いんだよう。アタシを恨むんじゃないねえ」



 枝から発せられた黒い筋が、ひび割れを作るように地面へと広がっていきます。

 そうして周囲の森の葉が、濃い紫へと変色していきました。



「これからこの森は、動物だろうと植物だろうと無差別に全ての生命を殺してしまう、死の瘴気を放つ森へと生まれ変わるのさ」



 こちらを見下すように、姉ドライアドが嘲笑します。



「闇精霊魔法『死毒樹海降誕トーデスギフトヴァルト』」



 聞いたことも見たこともない魔法が発動しました。



 そうしてドリュアデスの森は、刹那の間に死の森へと変貌してしまったのです。

次回、アルラウネvsドライアド その4です。

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― 新着の感想 ―
子アルラウネがたくさん! みんな可愛いですね。 ここは天国ですか。 (姉ドライアドによって地獄に変えられました)
[一言] >雑草なんて植物は存在しないのさ。どの子も可愛いアタシの植物たちなんだからねえ なんて言っていた割に、死の森に作り替えようとしている……。 これはどうも……。
[良い点] 姉ドライアド… 悪役がよく使う台詞を使いましたね… ( ´゜д゜`)アチャー 「この手を使わせるお姫様が悪いんだよう。アタシを恨むんじゃないねえ」 自分が悪いのに、他人のせいにする… こ…
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