88 怪鳥ベギーアデアドラーVS植物モンスター幼女軍団
私、植物モンスター幼女のアルラウネ。
戦闘中だし恥ずかしいけど、これから殿方の目の前で子作りをします。
空を飛ぶ大鷲型モンスターのベギーアデアドラーに対抗するために、私は私の分身を空へと向かわせることにしたの。
敵の目の前で子作りをするなんて元聖女としても公爵令嬢として、とても恥ずかしい。
けれども、レディーとしてはしたないですよと言われようが、受粉しないと生き残れないのです。
大鷲さんに殺されるくらいなら、公衆の面前で受粉を見せつけるほうが良いのだよ!
とはいっても、私本体が受粉するわけではないから、本当のことを言うと恥ずかしさはほぼ皆無なの。
生物の実験をするように、蔓に咲かせたアルラウネの雄花と雌花を受粉させて、アルラウネの種を作り出すだけだからね。
生成したアルラウネの種を覆うように、今度はテッポウウリマシンガンを生成しました。
これでアルラウネの種を装填した、テッポウウリマシンガンの完成です。
地面に根が張っている私が空にいるベギーアデアドラーのところへ行けないなら、私の種を飛ばせば良いんだよね。
大鷲さんに刺さったわけだし、そこで強制的に発芽させれば体に張り付くことができる。
もうこの方法しかベギーアデアドラーに攻撃する手段が思いつかないです!
なので決行させていただきます。
ごきげんよう、大鷲さん。
大空で待っていてくださいませ。
わたくし、いまからあなたに会いに行きますわ。
空を飛ぶベギーアデアドラーへ向けて、アルラウネの種を連射しました。
空に放り投げられて特攻するのは大変でしょうが、わたくしのクローンならやれます。
わたくしの分身さん、後は頼みましたよ。
蔓で敬礼しながら、わたくしの種たちを見送ります。
みんな、無事に帰って来てね……。
ベギーアデアドラーのお腹や羽に、アルラウネの種が刺さりました。
光回復魔法をたくさん込めていたので、種はすぐに発芽します。
あっという間に、大鷲さんの体に十数匹の子アルラウネが生えてきました。
そう、これはヤドリギ作戦です。
ヤドリギは他の樹木の幹や枝に根を食い込ませて成長する寄生植物なの。
そのヤドリギと同じように、私はアルラウネの種をベギーアデアドラーに寄生させようとしている。
なんとか強引にできるかなと思っていたけど、予想以上に上手く進んでいる。
もしかしたら私は、知らないうちにヤドリギの植物を捕食していたのかもしれないね。きっと妹分であるトレントからのプレゼントの中にあったのでしょう。
子アルラウネたちは芽が出たところに土がないせいか、傷口から根を体内へと侵食させているみたい。
そのおかげで、大鷲さんの体から振り落とされずに済んでいる。
というか、体中にアルラウネが生えてきて根によって肉がえぐられているのだから、もうそれだけで攻撃になっているよ。
おそらくだけど、大鷲さんの肉から養分を吸収している気がするね。
それでなんとか生命の維持を保っているんだと思う。
そのおかげで、大鷲さんのお腹に幼女アルラウネ畑が出来上がってしまいました。
たくさんの子アルラウネたちが、私に向かってそれぞれ蔓を振ってきます。
「ママー!」「私、頑張るよー」「そこで、見ててねー!」
わ、我が子ぉおおおおおおおお!
クローンアルラウネといっても、私から産まれたアルラウネには違いない。
そんな子たちがわたくしのために大鷲さんと戦おうとしている。
それだけでね、ちょっと感動してしまうの。
運動会にやって来た親になった気分で、子アルラウネたちの行動を見守ります。
ちょっと奥さん、見てください。
あそこにいる幼女アルラウネ、みんな私の子どもなんですよ。
え、まだ若いのに子だくさんですって?
はい、私これでも1才の幼女なのですが、子持ちのシングルマザーになってしまいました。
パパはいないのかですって?
実はですね、私があの子たちの実のパパなんですよ。
同時に実のママでもあるのですが。
そうなのです、複雑な家庭なのです。
それでも私たち親子の思考は以心伝心。
私のクローンだから、子アルラウネたちがこれからなにをしようとしているのかは手に取る様にわかる。
「みんな、準備は、良い?」「まかせてー」「やっちゃうぞー」
子アルラウネたちが、麻酔茨でベギーアデアドラーへとダンスのお誘いをします。
大勢の幼女たちに抱擁された殿方は、緊張してしまったのか動きが少し鈍くなりました。
けれども、それだけでは巨体の大鷲さんの暴走を止めることはできません。
大きな男の鳥にとって、幼女に絡まれることは大した負荷にはならないようです。
「次、行くよー」「わかったー」「やっちゃうぞー」
子アルラウネたちが、モウセンゴケの蔓を生やしました。
モウセンゴケの蔓を子アルラウネたちの間で連結させていきます。
そうしてベギーアデアドラーの羽を、モウセンゴケの塊で覆ってしまいました。
線毛から溢れ出る粘着質の粘液によって、大鷲さんへマッサージを行っているみたい。
ネバネバとした感触が気持ち良いのか、ベギーアデアドラーの翼は身動きが取れなくなっていきます。
幼女アルラウネたちの献身的なマッサージに、骨抜きにされたみたいだね。
糸を引くくらいの粘着性を持っているモウセンゴケの蔓によって、羽の動きを封じることに成功しているよ。
体を蝕む麻酔茨、そして翼の自由を奪う粘着質の蔓によって、大鷲さんの動きが完全に止まりました。
翼が動かなくなったベギーアデアドラーは、そのまま地上へと落下します。
ベギーアデアドラーが私の近くの地面へドシャンと激突しました。
背中から落ちてくれたおかげで、腹に寄生していた子アルラウネたちは無事だったみたい。良かった。
「ママ、早く、トドメを」
うん、みんなの頑張りを無駄にはできないね。
空中ダンスにマッサージ、お疲れさまでした。
娘たちの次はママであるわたくしがご奉仕する番です。
今度こそごきげんよう、大鷲さん。
わたくしの子どもたちが大変お世話になりました。
一緒に遊んでいただいたようで、大変嬉しく存じます。
そのお礼なのですが、大鷲さんをわたくしのお茶会へご招待いたしますわ。
大丈夫、両方の翼がふさがっていても、わたくしが食べさせてあげますの。
はい、あーんしてくださいね。
蔓で大鷲さんの嘴を開いて、わたくしの手作りお菓子をご馳走します。
毒種のテッポウウリマシンガンを生成して、大鷲さんの口の中めがけて連射です。
スポポポポン!
無数の毒種が、ベギーアデアドラーさんの喉の奥へと吸い込まれていきます。
わたくし自慢の毒種のお味はいかがですか?
お腹がいっぱいになったら、嘴を閉じて合図してくださいね。
それまではずっと毒種を大鷲さんへと食べさせてあげますの。
あら、おかわりが欲しいのですか?
嘴をそんなに大きく開けてしまって、余程お腹が空いていたのでしょう。
えぇ、毒種マシンガンの追加です。
あら大鷲さん、そろそろ喉も乾いてきたのですね。
わたくしが大鷲さんに紅茶を飲ませてさしあげます。
はい、あーんして。
大鷲さんはわたくしの毒花粉をぐびぐびと飲み込んでいきました。
泡を吐きながら、おいしいですと感想を述べてくださいます。
どうやらお気に召してくださったみたい。
白目になった大鷲さんは、お腹いっぱいですと言うように地面に顔を落としました。
どうやら、ごちそうさまみたい。
わたくしのお茶会へのお礼ですといように、大鷲さん口の中から青い花が飛び出てきました。
まるで手品みたい。
──うん、なんだろうあれ。
なんで鳥の口の中に花が生えているの?
それに以前、どこかで見たことあるような…………。
「ベギーアデアドラーがやられた!? あ、あり得ないんですけど…………」
慌てふためく毒の妖精。
どうやら私が勝つとは露ほども思っていなかったみたい。
「次は、あなたの、番」
「た、助けてー!」
毒の妖精が逃げ出す。
けれども羽が一枚しかないせいか、上手く飛べていないみたい。
そんなスピードでは逃げることなんてできないよ。
私は地中からハエトリソウを生やします。
そうしてハエを捕まえるように、2枚の捕虫葉の口で毒の妖精に噛みつきました。
「グギャアアア!」
ハエトリソウで毒の妖精を捕獲です。
さて、どうしてやりましょうか。
食べちゃうことだって、できるよね。
「こ、このままじゃ済まないんだから。援軍が来ればすぐに形勢は逆転するんだからね!」
毒の妖精の負け惜しみかな。
そう思ったのも束の間、それは負け惜しみではなく真実かもしれないと虫の知らせのような感覚に襲われます。
なんだかね、不思議な気配を察知してしまったの。
空の向こうから、なにかが近づいて来ている。
聖女であったときの私と似たような力を持ったなにかが、凄いスピードで飛んできているみたいなの。
聖女が空を飛ぶはずはない。
ではいったいなんなのか。
得体の知れないなにかが、徐々に近づいている気配だけが感じる。
そして私は、それが聖女と同じ光魔法を持った存在だと、気がついたのでした。
お読みいただきありがとうございます。
次回、四天王襲来です。







