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2度目の恋

「じゃあな!あんまり思い詰めんなよ。」

 徹は花の頭にポンと手を置く。


「うん、ありがとう。少し元気出た。」

 玄関の扉を開け背中を見せる徹に彼を呼んで本当に良かったと思った。


 見送りに出ようと玄関の外に出るとすぐ隣に黒い影が…。


「うあっ!!誰だ!!」

 驚き叫ぶ徹。


「…辻本さん…?!」

 そこに立っていたのは陸だった。

 海外赴任の話をしようと、花の実家に連絡をしたら、ここに来ていると聞いて足を運んだのだ。


「お前…針谷か?」

 怒りに満ち満ちた表情で針谷を睨みつける陸。


「なんで俺の名前知ってんだよ?」

 土方で鍛えた彼は臨戦体制になる。


「忘れるかよ!花が襲われたあの夜、助けに行った俺に向かって花が最初に呼んだ名前がお前だったんだから…!」

 花にとって針谷は、陸の知らない花をたくさん知っている人物であることは間違いないと思っていた。

『いやらしくも花の足に触って包帯巻きやがって!』

 それは口には出さなかったが、嫉妬となって陸の頭から消えることはなかった。


 花は記憶がないためなんのことだか分からず慌てふためく。


「あの…、辻本さん。針谷くんは私の高校までの同級生で、今日は私が色々忘れてしまっている部分の話を聞きたくてわざわざ来てもらったんです。」

 必死で陸をなだめる。


「…そういう事だ!!ヤキモチ妬くのもいい加減にしろよ!!…じゃあな、花。」

 フッと花に笑顔を送り、手を振って背を向ける徹。


「針谷くん、本当にありがとう。」

 丁寧にお礼をいう。


 徹は安心した様な、悔しい様な…なんともいえない複雑な感情に戸惑ったが、どこかスッキリとしていた。

 あの二人なら、また必ず元の恋人同士に戻るだろう…、そう確信していた。



 残された花と陸に気まずい空気が流れる。

 普段温厚な陸があんなに怒りをあらわににするなんて花はまだ心臓がドキドキしていた。


「花…。本当にごめん…。」

 深々と頭を下げる。


「いえ…。私こそ、辻本さんの気持ちも考えずに針谷くんの事家に上げてしまって、ごめんなさい。」

 花も陸に頭を下げる。


「…。」

 沈黙が続く。


「あ、あの…、今日は何か私に用事があったんですよね?」

 陸の様子を伺いながら別の話題を切り出す。


「あぁ…。でも、やっぱり今日はやめるよ。別の日に改めて。今日はごめんな。」

 悲しい顔をしている陸が気になり花は言葉より先に立ち上がる陸のシャツを引っ張る。


「あの…、待ってください。行かないで…!」

 咄嗟に出たその言葉はまるで自分の気持ちをさらけ出しているかの様で顔から火が出そうになる。


「あの…、あの…。」

 久しぶりにプライベートで逢えた陸を、花は自分の立場でどう引き留めたらいいのか分からなかった。

 花の中では上司と部下で完全に線引きされている。

 陸の好きな人は昔の自分で今の自分ではない…。


 言葉が出てこない。


「どうした…花?」

 心配そうに覗き込む陸に花はパニックになる。


「…ごめんなさい…。」

 ボロボロと流れ落ちていく涙に陸もどうしたらいいのかわからない。


「私は…辻本さんが好きな花ではないのに…、頭の中が辻本さんでいっぱいで…。ごめんなさい…。」


『辻本さんの記憶がない私が好きになってしまってごめんなさい…』

 そんな思いで花は陸に頭を下げる。



「…なんで謝るの?俺はいつも花の事で頭がいっぱいだよ?どんな花だって、俺にとってはみんな同じ大好きな花だよ…。」


 その陸の言葉に花はずっと押し殺していた想いが溢れ返った様に、

「辻本さんのことが好きです…!」

 そうはっきりと伝えた。


「花…!!」

 その言葉をどんなに待っていたことか…。


「もう一度、想い出作っていこう?」

 そう強く抱きしめる陸。


 コクリと頷き、陸の広い胸の中で花は安心感に包まれていた…。



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