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惨劇の夜

 社内旅行初日の一大イベントを終えた四人は心地よい疲れの中ホテルに向かう。

 約束の18時までに宴会場に行かなければならず、ゆっくりしすぎた四人は慌てていた。


 部屋に返った陸はフロントからメッセージを預かっていると連絡が入り取りに行く。

 差出人のない封のしてある白い封筒は何か嫌な予感を連想させた。


 部屋に返って封を切り、中身を取り出す。


『古谷花を守りたいなら18時に一人で海岸の駐車場まできてくださいね。 倖田愛』


 そう一行書かれていた。

 陸は慌てて走り出す。

 ホテルの廊下を走り抜ける姿を見て、花は間違いなく何かあったと思い必死に追いかける。


 陸は花が付いてきている事に全く気づいていない。

 愛はどんな手で何をやらかすかわからない。

『死ねばいいのに!』

 と叫んだ彼女の言葉が頭の中をぐるぐると回り続ける。


 朝からまとわりついていた嫌な予感はこれだったのか…!

 何があっても来るんじゃなかった!!


 どれだけ後悔しても時は刻々と前に刻み続ける。


 暗くなり始める中息を切らして陸が海岸の駐車場に到着する。


「おい!どこだ!出てこい!!」

 大声で叫ぶ。


 花は陸が叫ぶ姿を遠くから目撃する。

『やっぱり何かあったんだ…。』

 不安と恐怖に震えながらも、陸をそのままにしておくなんて事は到底できない。


『早く…、早く行かなきゃ…!陸さんが…!』

 ずっと走り続けてきた花の足はもつれて思う様に前に進めない。


 広い駐車場に一台だけ止まっている黒い車から愛が降りてくる。


「今なら…まだ間に合うわよ?私と付き合ってくれれば、全部無かった事にしてあげる。」

 後ろに手を組んで徐々に近寄る愛。


「もともと君とは何もないだろう…。どんな権力を使って君が仕掛けてきたとしても…何を失ったとしても俺は花と別れる気はない!!」

 上がる息を必死に整えながら怒りに震える陸。


「だったら丁度いいわ!あなたの大切な古谷花さんが自らここに来てくれたみたいだし…。辻本さんの目の前で、大切な彼女を切り刻んでやるわ!!」

 そう言った彼女の手にはナイフが街灯の灯りを跳ね返しギラリと不気味に鈍い光を放っていた。


「花、帰れ!!早く逃げろ!!」

 花は足が凍りついた様に動けない。


「花!!花!!!」

 振りかざしたナイフは『ズンッ』と鈍い音を立ててた。


「うっ…。」

 その場に蹲ったのは花ではなく陸の方だった。

 花を庇い刺されたのである。


「…や、やだ…!陸さん…?!」

 彼が抑えた腹からは真っ赤な血が滲み出ている。


「あら、彼の方に刺さっちゃたみたいね。まぁいいわ、最初からそのつもりだったし。

彼はもう私のものよ?私の手で彼の命ごと掴み取ったわ!!」

花には愛はもはや人間の顔をした悪魔にしか見えなかった。


全ての感情が凍りついた花の表情を上から睨みつけながら

「あなたもいい顔してるわね!最高の夜だわ!!」

狂ったように笑い出す。



ナイフを投げ捨て車に乗り込んだ愛は、倒れ込んだ陸と花に向かって車を急発進させる。

 花は必死で陸を庇い、彼はかろうじて逃れたが花はそのまま鉄の塊の衝撃を受け、頭を強く打ち倒れこむ。


「…な…はな…。」

 陸は激痛と出血による朦朧とした意識の中で花の名前を呼ぶが反応がない。

 花の頭から流れ出る赤い血は徐々にアスファルトを静かに濡らしていく。


 陸は必死にスマホを探し、救急車を呼ぶが途中で意識が遠のいていった…。


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