予感
「ちょっと浩ちゃん!!今のわざとでしょ!!」
花と陸の目の前でビーチバレーに白熱する二人。
「おい!呼び方!!他の奴らに聞こえたらどうするんだよ!」
キョロキョロしながら浩介は周りを確認する。
「…ごめん!つい白熱してゃって!!」
顔の前に手を合わせて謝る楓。
花はそんな楓が可愛いなぁと思って眺める。
それぞれ二人きりになりたいのは山々だが、いくら人目につかないところを選んだとしても広いビーチのどこに同じ会社の社員がいるかわからない中で、もう四人でワンセットはやむ終えないと一同諦めていた。
息を切らして戻ってくる浩介。
「はーイチャイチャしたいなぁ!せっかく彼女が水着だってのにさぁ!ね、辻本さん!!」
喜びが不完全燃焼な浩介は陸に同意を求める。
「まぁ…な。」
恥ずかしそうに答える陸に、
「なんすか!!辻本さん、その乙女みたいな態度は!!」
テンションの上がった浩介は日頃のストレスを発散するかの様のここぞとばかり陸に絡んでくる。
「おい!吉田、いい加減にしないと会社に帰ってから酷いからな!」
冗談で陸が反応すると、
「ちょっと、ここぞとばかりに権力使ってきましたよ?古谷さん、しっかり辻本さんにお仕置きしといてくださいよ!」
花と楓は二人のやり取りに爆笑する。
「辻本さん、ちょっとくらい二人きりになっても良くないっすか?あの岩陰なんか丁度いいじゃないですか!」
そう言って楓の腕を引っ張る。
「えっ?ちょっと、浩ちゃん?!」
岩陰に消える二人。
「…。」
急に静まり返ったその場の空気が陸をその気にさせる。
「俺たちも行こうか、岩陰。」
こっそり花に耳打ちする。
「陸さん…?」
立ち上がる陸を見上げる花。
逞しく小麦色に焼けた陸の身体は花をドキドキさせる。
彼女の手を引いて岩場に移動する二人。
静かに波の音だけが響いている。
何も言わずに陸の顔が近づいてくる。
花はそれを受け止める様にそっと目を閉じる。
誰かに見つかったら大変な事になるだろう…、そんな背徳感が二人のキスをどんどん激しく煽っていく。
「…ん…。」
漏れる声をまた塞ぐ様に求める陸の様子がいつもと違う事に花は気づいていた。
これから先も、ずっと一緒に居られるんだから…
そう宥たくなる様なキスだった。
花は陸の背中に手を回し、激しいキスとは裏腹に優しく陸の身体を包み込む。
陸は花の柔らかな腕に気づいた時我に返った。
「花…。俺から離れるなよ…。」
きつく抱きしめる陸の体温を感じ『どこに居ても心は一緒よ…』と頷く。
どのくらい時間が経っただろう…。
夕日が美しく水面に反射し、花と陸を照らし出す。
肩を寄せ合い、じっと波の音とその美しい景色を一生二人は忘れまいと誓うのだった…。




