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新居

「花のご両親、凄く素敵な人だったな。」

 陸は花の両親からどれだけ望んでも、もう手に入らなかった大切なものをたくさんもらった気がした。


「そうですか?お母さんなんてだいぶ陸さんのこと見てはしゃいでましたよ。」

 思い出し笑いをして微笑む花。


「花と家族になりたい。今日ほんとそう思った。」

 花はドキッとして陸を見る。


「花はまだ二十歳だもんな…。結婚にはまだ早いよな…。」

 節目がちに呟く陸。


「二十歳だと、結婚しちゃダメですか?」

 花は陸を見る。


 驚いた陸は、

「だって、花はまだやりたい事たくさんあるだろう?俺が二十歳って言ったらまだ大学生だったしな。」

 懐かしそうに陸は当時の自分を思い出す。


「私のやりたい事は陸さんのそばにいて一緒に生活したい…それじゃダメなのかな…。」

 花は俯く。


「俺も…。花とずっと生活したい。じゃ、結婚しようか?直ぐにでも。」

 笑いながら冗談めかしに言う陸。


「はい!」

 花の明るい表情に、


「花、本気で言ってる?」

 びっくりする陸。


「はい。どうして?」

 なんで何度も確認してくるのかがよくわからない花。


「これから先、一緒にいて俺のこと嫌になる瞬間たくさん見つけるかもしれないよ?

 焦らないでいいんだ。花が俺と本当に一緒になりたいって思える日が来るまで、俺はいつまででも待ってるよ。結果振られたら…、そん時は一生一人でいいかな…。」

 花以外はもう愛する人は出てこない、そう思っている陸。


「陸さん…。」

 花より長く生きている陸の言葉を花はもっと噛み砕かなければいけないのかな?と考え込む。



 そうこうしているうちに不動産屋につく。

 事前に条件は陸の方から伝えてあったため、即物件を見に再び車で走り出す。


 最初の物件は利便性は完璧だったが、窓からの景色がイマイチだった。


 すぐに次の物件に移動する。


 玄関のドアを開けた瞬間明るい空間が広がる。

 中に進んでいくと、大きな窓から見える景色は、前のアパートとどこか似ている青々とした緑が広がっていた。

「わぁ!ここ素敵ですね!明るいし!」

 テンションがどんどんあがっていく花をみて、陸はもうここしかないなと即決を心に決める。


 携帯に呼び出された不動産屋さんは二人に声をかけ外に出て行く。


「花、いい物件見つかってよかったな。会社も近いし、ここなら繁華街抜けなくても帰れるし。」

 そっと花の横に立って頭を撫でる。

 陸との新しい生活を想像しては花は心が躍るような気持ちになる。


「陸さん…私、今すぐ結婚したいです。今の私じゃダメですか…?」

 陸を見つめる花の逆プロポーズに陸は顔が赤くなる。


「本当にいいのか?花?俺は凄い…嬉しい!泣きそうだよ。」

 花は優しく陸の頰を包み込む。


「ここで、こうして陸さんと一緒に、ずっと時を共にしたいです。

 いつか子供も生んで、笑顔の絶えない家庭を作りたい…。

 他には何も望まないです。」

 二人は窓から見えるオレンジ色に染まる空に、未来を誓う。


 近づく唇はもう決して離れる事はないと引き合うように重なりあう。


 ガタンと玄関のドアが開く音がして二人は驚き何事もなかったのように離れる。

 離れた場所からでも視線だけは絡み合い微笑み合う。


「ここに決めます!来週入居でも大丈夫ですか?」

 陸は花の表情を見ながら一つ一つ確認して行く。


「もちろん、大丈夫ですよ。」


 その言葉に、

「よし決まりだな!!」

 二人の未来にゴーサインを出した。

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