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同棲

ベランダから見える空がオレンジ色に輝く頃、花は夕飯の支度を始める。

そんな彼女の後ろ姿を見つめながら陸は本当に幸せを感じている。


「明日、日曜日だな!どこか出かけようか?」

今日一日色々あったが折角の貴重な休みを花と充実して過ごしたかった。


「そうですね!」

嬉しそうに答える花。


陸のリクエストで作ったカレーの匂いが立ち込める。

今までは夕飯時にはコンビニや外食が当たり前だったが、花の手料理はどんなに高級な料理よりも陸には価値があった。


二人で向かい合って食事を始める。

「どこに行きたい?日帰りにはなっちゃうけどな。」

美味しそうにカレーを頬張る陸。


「人混みより自然の多いところがいいですね。どこかいいところありますか?」

花は陸のオススメの場所に行きたかった。


「そうだな…。」

考え込む陸。


「来週、もし土日両方休めるなら一泊で温泉とかどうですか?

そしたら、明日はまったりとお家で休んでもいいですし。」

今日も呼び出されていたし、陸に疲れがたまっているのではないかと花は気遣う。


「…なぁ、花。一緒に生活しないか?」

唐突な陸の提案に戸惑う花。


「それって…、一緒に住むって事ですか?」

目を丸くする。


「嫌か?気を遣わないではっきり言っていいんだ。」

陸は恥ずかしそうにする。


「嫌なんかじゃないですよ。私は嬉しいです、とっても。

辻本さん、逆に仕事とか忙しいのに私と一緒で疲れないか心配です。」

陸は花の言葉にわかってないなと思う。


「俺がどれほど花に毎日癒されてるか…、花は全然分かってない。

少しでも一緒にいたいんだ…。花さえ迷惑じゃなかったら…。」

陸は続ける。

「花と一緒にいられるなら、場所なんてどこでもいいんだ…。用事がなかったら一緒にいられないのが嫌なんだ。明日も花と一緒に家でまったりならいいけど…。俺、子供みたいなこと言ってるな…。」

茶髪の髪を恥ずかしそうに搔き上げる。


花は陸の背中に抱きつく。

「私もおんなじ気持ちです…。離れたくない…。」

陸のお腹に組まれた花の両手を優しく包み込みながら、

「今夜もここにいていいかな…?」

その言葉に、

「もちろんです…。今から一緒に住みましょう。」

背中から聞こえる声に陸は無茶な告白を受け入れてくれたことにホッと胸をなで下ろす。


風呂上がりの二人は急によそよそしくなる。

今朝のキスを思い出して、花はいよいよか…と緊張する。


「お布団、行きますか…?」

そう花が切り出すと、

「あ、あぁ。」

不自然に陸が答える。


陸は陸で、また今日も我慢できるかどうか、不安でしかたなかった。


陸の腕枕で優しく包まれながら心地よい彼の体温を感じて、安心する花。

すぐそばにある花の顔にキスしたい衝動に駆られるが必死で抑える。

花は陸が来てくれるのを待っていた。

しかし、一向に動かない陸に、花は不安になる。


「辻本さん…?寝ちゃったんですか?」

陸の顔を覗き込む花。


「いや…。」

返事が帰ってきてドキッとする。


「あの…、キスしてもいいですか?」

顔を真っ赤にしてお願いする花を見て陸は驚きを隠せない。


「花…?無理しないでいいんだぞ?」

自分に気を遣ってそう言ってくれてるのだと思う陸。


「あ…、ごめんなさい。そんな気分じゃなかったですか?」

寂しそうに少し泣き出しそうな彼女の顔を見て、陸は愛しくてたまらない。


「そんな気分じゃないわけないだろ…。」

優しく花を抱きしめキスをする。

うっとりと、陸に身を任せる花を見て、

「いいのか…花?」

そう確認すると、恥ずかしそうに小さく頷く。


二人は狭いベッドの上で寄り添うように身体を重ねていくのだった…。



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