目覚めた朝
カーテンの隙間から眩しい光が差し込む。
そっと目を目を開くと目の前に陸の顔が現れる。
「わっ!!」
思わずそう叫んでガバリと起き上がる花。
「…ん?」
ちょうど光が陸の顔に当たり、眩しそうに目を開ける。
「花…、おはよう…。」
眠そうに目を擦る陸に朝から花の心臓は跳ね上がる。
「お、おはようございます!」
仰々しく反応する花に陸はふふと笑顔になる。
「花…、こっち来て。」
起き上がった花を再び自分の横に仰向けに寝転ばせ覆う様に花を上から見つめる。
「辻本さん…?」
近づいてくる陸の顔に目を閉じるタイミングを失ってしまう。
戸惑って赤面する花がもう愛しくてたまらない。
「花、もうなんて可愛いんだ…。」
綻ぶ陸の笑顔に、花のドキドキは一向に止まらない。
「キスする時は、目を閉じるんだよ。昨日は上手に出来ただろう?」
戸惑う花を少し苛めたい衝動にかられる。
「さあ、目を閉じて…。」
陸の誘導をしっかりと守り、ぎこちなく目を閉じる花。
近づいてくる陸の吐息が顔にかかるのを感じ、温かい唇が重なると花は恥ずかしさが一気に幸せに変わっていくのを全身で実感する。
自然に陸の首に手を回し、もっと近づきたいと求めてしまう自分がいる。
「…ん…。」
小さく声が漏れるほどに濃密にお互いの気持ちを確かめ合う。
「花…。ヤバイ、これ以上は止まらなくなる…。」
荒い呼吸を隠すかの様に耳元で囁く陸。
起き上がり深呼吸する。
「ごめん、花。花の事大切にしたいし、花の全て俺のものにもしたい…。
あとどの位我慢出来るか俺、自信なくなりそうだ。」
落ち着きを取り戻し振り返って微笑む。
陸の大きな背中を見つめながら、本当はもっと近づきたい…本音を認めた花は次は陸に愛してもらう事を覚悟した。
プルルルル…プルルルル…
熱気のこもった寝室の温度を下げるかの様に陸の携帯が鳴る。
「ごめん、副社長からだから、ちょっと出てくるな。」
花の頭にポンと手を置き、部屋を出て行く。
休日になんだろう…?
そう思いながら、悪い内容でない事を祈る。
カーテンを開け外の空気を取り込みながら、陸が戻るのを待つ。
ガチャっと、玄関の扉が開く音がして戻って来た陸の顔は心なしか曇っていた。
「何かあったんですか?」
心配になって花は聞いてみる。
「いや…、急に副社長に呼び出されて…。悪い内容ではなさそうなんだけど、内容を話してくれないんだ。お世話になってる人だから簡単に断れないんだ。今から行ってくるよ。また、連絡するな。」
そう花に告げて自分の部屋に帰って行く。
花は何か嫌な予感はした。
でも考えるのをやめよう。
陸と思いは繋がり、もう昔の運の悪い自分はいなくなったんだ…。
そう頭では思えるのだが、不幸慣れしている心は昔と同じように震えているのだった。