騎士団へ その3
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怯えて黙りこくった私に
「まぁ、嬢ちゃんが大人しくしてりゃ手荒なことはしねぇよ。」
と、男は言った。
手荒いことは、されないだろう。大切な人質だから。
(でも…!私の軽率な行動が、人に迷惑をかけた!)
(私は、奢っていたのね…。市場に行って、まだまだ知らないことは沢山あるってことを知ったはずなのに…!)
「なんとかなる」と、思っていた。
実際はどうにもならない。
私にできるのは、ただ「待つ」ことだけ。
私にそんな、自力で逃げるなんてできない。
すぐ捕まってしまうのがオチだ。
「……。」
「………。」
「……。」
「…………。」
長い沈黙が場を支配する。
突然、薄暗かったこの部屋に光が差し込んだ。
ヒュッと風を切る音の後、
メリッー
私のすぐ横で変な音がした。
私は振り向いて、
「えっ…?」
と思わず呟いた。
波打つ黄金色の髪、顔の上半分を隠す仮面、そして口角の上がった赤い口。どう見ても女性…な人が、私の横にいた男のみぞおちに膝をめり込ませていた。
(あの入り口からここまで、一瞬…?)
「うぐっ!」
あまりの速さに時間差で衝撃が来たのだろう。
驚いた顔から、苦しそうに顔を歪めた男が吹っ飛んだ。
…血を吐きながら。
ひゅっと喉が鳴った。
私は真横で見てしまったのだ。血を吐く男の姿を。
そして徐々に広がっていく鉄臭いにおいも。
それは6歳の少女には酷すぎた。
「あ、あ、ああ…」
けれど、私は目を逸らすことが、できなかった。
私の視界の中で、物事は進んでいく…
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