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黒医  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第一章 ゼロから始める
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 ゴールデンウィーク直前の四月末、急に父親が今まで存在すら知らなかった祖父母のいえに連れて行くと言い出した。


 まだ学校にいかなければいけないのに、父さんは僕達を休ませて、強引に父さんの実家のあるという仙台に向かった。母さんも何も言わなかったから特に問題はないんだろう。海外に行く友達なんかも連休前に休んだりしてたし。


 僕達、家族四人は父さんが運転するワゴン車に乗って仙台を目指す。


 道路についてはよく分からないが東京を出て、埼玉を通過し、東北自動車道を走っていたのは憶えている。


 両親はいつもと同じなようで、違って見えた。コソコソと二人だけで会話している事が多く、僕達兄妹との会話はあまりなかった。ひょっとしたら、これが夜逃げというやつなのかもしれない。


 車で移動中は特にする事もないので、寝ているか外を眺める。妹も同じだ。普段は特別に仲がいいというわけではないが、わるいという事もなく、至って普通の兄妹だと思っている。


 標識を見ていると福島県を過ぎて宮城県に入ったのがわかった。


 右の車線に大型トラックが並ぶ。若い女性が運転している。あんなに若くても大型トラックを運転できるんだなと感心していた。


 その時、後部座席の僕の隣に座っていた妹の沙織が僕の左手を握る。


 僕は少しだけ驚いて沙織を見る。沙織は僕だけに聞こえるような声で話し始める。


「お兄ちゃん……。あたし見ちゃったの……」


 何を見たんだ。僕の部屋には見られてはいけない本やらプリントが少なからずある。


 ラノベなんかだと兄妹の隠し事が発覚して、いけない恋に発展する場合もあるが……。あいにくと恋になりそうなブツは隠していない。


「何を見たんだ?」


 恐る恐る聞いてみる。妹も話しづらいのか少しためてから口を開く。


「あのね……。お父さんが……」


 何が起こったか分からなかった。眼を開けると僕は地面に寝ていた。


 胸が苦しい。うまく呼吸もできない。


 見える範囲に沙織が倒れている。あちこちから血を流し呻き声をあげている。


 だんだんと意識が薄れていく。目の前に父さんがいた。


「大丈夫だ悠人。お前は助かる!」


 父さんは俺の胸に針のようなものを刺す。痛みなどすでにわからない。ただただ苦しい。


 何をしてるんだ。針なんて刺して……。父さん血だらけじゃないか。そんな事を思ってると僕の胸の辺りから噴水のように血が噴き出した。なんだよ。父さんに殺されるのか。苦しみも少しだけ楽になった。死ぬって事なのかな……。


「悠人。沙織を頼む……」


 絞り出すように声をだして僕の隣に父さんが倒れた。殺しておいて頼むはないだろう。


 はぁ。もういいや……。


 遠くで色々な音が聴こえるが僕の視界は暗闇に支配されていった。p


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