やらかしました
「では、私の方から勇者達に説明はしておこう。」
使用人となる事を決めた後、色々王様達と話し、勇者達には僕が出て行ったことだけを伝えてもらうことにしました。
だって絡まれると面倒臭いですし。
あと、お嬢様はエリス・ヴァイスという名前でこの国の上位貴族らしいです。
「ところで、なんでエリスはここにいたんだ?」
騎士団長が今更みたいな顔でお嬢様に問う。
「・・・ミーリアスが今度の依頼はどうするかを聞いてきてしつこかったのよ。」
「あの、ミーリアスってどなたですか?」
て言うか依頼?
「扉の前で隠れているつもりでいるこの国の第二王女よ。」
「ギクッ!」
今扉からギクッて聞こえましたよね?
絶対口で言いましたよね?
扉から走っていく音がする。
「・・・逃げたわね。」
「逃げたな。」
「我が娘ながら人見知りだからなぁ・・・。」
え?え?
どういう事ですか?
「まぁ、いいわ。さて、話もついたし、ミーリアスは逃げたし、今日は帰るわ。アリス、行くわよ。」
「はい、畏まりました。」
よく分からないけどまぁ、学校で鍛えたスルー能力でどうにかなる事なので問題ないでしょう。
「じゃあ、またな小僧。」
騎士団長が扉を閉める直前にそんな言葉を言ってくる。
お嬢様にお仕えするから会うことになるのは確定ですね。
分かります。
「さて、私の屋敷に向かうわ。そこで私専属の使用人として働いてもらうの。詳しくは着いてから、ね。」
「畏まりました、お嬢様。」
「・・・普通、使用人として採用した一般人て皆分かりました、とか、はい、とかの返事をするものだけど。異世界だとそれが普通なの?」
「え?いえ、ただ、僕の世界でも使用人の文化はあるので一応それに沿って行動しておこうかと。まぁ、誰かに教わらないとダメなうわべだけものですが。」
お嬢様はふぅんと言った後、歩き出し始めました。
「ねぇ、アリス。」
「何でしょう?」
「・・・貴方、恋人とか居るの?」
「いえ、居りませんが。こんな見た目ですし、気味悪がられていましたし。」
告白なんてしたこともされたこともありませんよ。
それに、アニメ見たり本読んだりしてたせいで友達もろくにいませんでしたし。
思い出したら悲しくなってきたなぁ。
「そう、見る目ない連中ね。」
「え?」
「何でもないわ。」
◇
お嬢様について行って王宮を出てしばらく歩いているとあるお屋敷の前でお嬢様が止まる。
「ここが私の屋敷よ。」
「・・・凄いですね。」
僕は日本人だ。
何が言いたいかと言うと、これまでの道にあった建築物もこのお屋敷も初めて見る驚きがあるのだ。
と言うか、僕、ビルとかコンクリ建築より日本家屋とか西洋の石とかレンガ造りの建物の方が好きなので感動していた。
お嬢様はそんな僕を見て笑う。
「早く中に入るわよ。ほら」
お嬢様に手を取られてお屋敷の中に入る。
入って中を見るとそこは大きめなホールだった。
そして、メイドさんがいた。
20代くらい金色の髪の女性だ。
「ただいま、サラ。」
「お帰りなさいませ、エリスお嬢様。それで・・・そちらは?」
メイドさんが滅茶苦茶僕に視線を向けてくる。
目付きが一般人のそれじゃない。
まぁ、お嬢様がいきなり見ず知らずの男連れてきたら警戒するよね?
「見た所女性の様ですが、ご友人ですか?」
泣いた、割とマジで。
僕今後もこんな扱いされるのでしょうか?
「サラ、アリスは男よ。」
「・・・はい?」
「そして、私の専属使用人になったわ。」
「・・・え?」
「ついでに異世界人でもあるわ。」
「・・・???」
「更に・・・。」
お嬢様、お嬢様。
メイドさんが混乱してます。
女の子と思ってた子が男で、お嬢様の専属メイドに決まってて異世界人とか僕も混乱しますよ。
全部僕なんですけどね、メイドさんの混乱の要因。
「・・・とりあえず新しい使用人という事ですね?はじめまして、私はお嬢様の護衛兼メイド長のサラと申します。」
「初めまして、異世界から勇者達と一緒に召喚されたけどステータスが低くスキルもなかった見た目女の子の森咲 亜璃栖です。勇者達と行動する気がなかったので王様に頼んで離れようとしてたところでお嬢様に使用人になれと言われました。こんな見た目ですが、性別はキチンと男です。」
おじきをして挨拶してきたメイドさん―――もとい、サラさん。
「挨拶も済んだし、他の使用人とお母様に貴方を紹介しましょう。」
お嬢様が右手につけていた指輪を外す。
刹那、今まで不明確だったお嬢様の姿が明確になった。
「え?」
お嬢様は僕を見ると何かを思い出したかのように手のひらをポンと叩き、笑う。
「あぁ、そう言えばアリスと会ってから今までずっと『これ』を付けてたわね。」
そう言い、手に持つ指輪を指で弄る。
「この『指輪』は認識阻害魔法が掛かっているのよ。これにより自分の姿とかが記憶に残りにくくなるのよ。最も、邪な感情を持つと効果は消えるけど。」
そう笑いながら説明するお嬢様の姿に、僕は見とれていた。
それどころか、一目惚れと言っても過言では無い感情を抱いていた。
紅色の、真紅色の、透き通る様に輝く美しい髪。
とても整った、地球のモデルすら霞んで見えるほどの顔立ち。
細めの体つきでありながら出ているところはしっかり出てる抜群という他ないスタイル。
「・・・。」
「あら?惚れたかしら?」
「・・・はい。」
・・・はい?
今僕なんて言いました?
惚れたか聞かれたのはからかいだろうけど、それに本気ではいって答えましたよね?
え?
うぁぁぁぁぁぁぁあ!?
「そんな顔を赤くして転げまわられるとこっちも恥ずかしくなるわね。」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!?殺してくださいぃぃぃぃ!!」
「駄目よ。にしても、そう。惚れてくれたのね、なら頑張りなさい。」
その後お嬢様のお母様と使用人の皆様に挨拶したけれど、その度にお嬢様が
「この子、私に惚れたらしいのよ?」
て言うので精神的にダメージを負いました。
後、何故かお嬢様からメイド服を渡されました。
着ませんよ?
次回からメイド(亜璃栖)が登場!
他の使用人とかエリスの両親はこの次で紹介されますです。