土下座されました
今回短め
そして遅くなって申し訳ありませんでした。
「昨日は大変申し訳ありませんでした!!」
それは見事な土下座でした。
この世界にも土下座あるんだなぁ。
〘主様、それは現実逃避です。〙
いや、だって部屋に入ってくるなり目の前でいきなり土下座されたら困惑しません?
〘ティナリーさんは昨日の件での謝罪をしているのです。まぁ、許さなくてもいいんじゃないんでしょうか?昨日の事は一歩間違えば主様精神崩壊する危険性すらありましたし。〙
流石にそれは・・・。
「アリス、流石に何か言いなさい。ヴァイゼスと話してないで。」
「何故に、ヴァイゼスさんとお話している事が分かったのですか?」
僕以外は今は話せなかったはずでは?
「朝起きたら話せるようになってたわ。貴方が起きるまでずっとヴァイゼスと話していたから貴方がどういう子なのかはきちんと分かっているわ。」
〘朝の内にお嬢様には主様がどう生きてきたか、何故順応するのが早いのか、信用している人の前では感情を顕にする事などをお話しておきました。〙
プライバシーって知ってますか?
ヴァイゼスさん?
〘・・・因みに、この会話、私の意思次第でお嬢様に筒抜けにする事も可能です。〙
ヴァイゼスさんの機嫌損ねるとまずい事が分かりました。
ヴァイゼスさんは怒らせてはいけない人だ。
そしてヴァイゼスにとって僕のプライバシーなんて紙屑同然なのだろう事も。
「取り敢えず、この見事な土下座オブジェクトをどうにかしましょうか。アリス、許すなり許さないなり好きにしていいわ。」
「・・・どうしましょうか?」
〘許さないつもりですか?〙
いえ、許すも何もあれは僕の弱さ、ですし。
あれのおかけでお嬢様に告白するのがスムーズになったので感謝しても良いような気がしてるんですよね。
〘ですが、それでは些か問題があります。ティナリーさんは間違いを犯しました、それを罰なしと言うことで済ますのは・・・〙
「そうね、その意見に賛成だわ。それと、アリスは早く《永劫を知る者》を進化させて私も貴方と脳内会話出来るようにして頂戴。」
「と言われましても、まだ《|《永劫を知る者》を身に付けてから一日しか経ってないんですが。」
「驚きね。」
「驚きですね。」
〘驚いているところ申し訳ありませんが、ティナリーさんが放置されております。〙
違うんですよヴァイゼスさん。
面倒臭そうなので放置してるんです。
「・・・どうしましょうか?お嬢様。」
「今日一日ご飯抜きでいいかしら。」
「だそうですよ、ティナリーさん。今回はこれで許します。なので顔を上げて仕事をしてください。」
なんの仕事しているのか知りませんが。
「本当に申しわけありませんでした。」
頭を下げて謝罪をしてから去っていったティナリーさん。
それと入れ違いにラデルドさんが入ってくる。
「お、起きてるな、二人共。」
「おはよう、お父様。」
「おはようございます、ラデルドさん。」
「おう、おはようさん。悪いがすぐに飯を食って装備を準備してくれ。昼前には草原でシルバーウルフの警戒にあたるからそれまでにギルド方でミーリアス様を回収して貰う。」
シルバーウルフの警戒って、二日前の初めての依頼の時のあれの事ですかね?
〘そうです。主様が気を失った後、冒険者ギルドと街の警備を担当してる騎士団のトップのラデルドさんが話し合い、騎士団と冒険者数名が門から草原を警戒する、Bランク冒険者数名とCランク冒険者十名程の合計十数名の規模のパーティーで森の調査をするとの事です。〙
僕達は、草原担当になったんでしたっけ?
〘はい、主様達は草原担当です。目撃者ですので何処にいたとかを現場で話せるし対応も可能では無いかと推測されますし妥当な所かと。〙
戦えるんですかね?僕は。
〘一応主様の【失われた能力】の一つである《不可能な裁縫》は戦闘、支援両方に使用可能な能力です。〙
何が出来るんです?
〘《不可能な裁縫》は幾つかの段階に分けられております。第一段階では裁縫具のサイズを変えられる他に指から五十cm先までなら縫い針をある程度操ることが出来ます。〙
戦闘・・・使用?
いや、どちらかと言うとどうやって支援しろと言うんですか?
〘後ろから巨大化させた針を投げるなど出来ますから・・・それに、第一段階は前段階と言いますか、準備段階ですから、第二段階からが本番です。〙
《永劫を知る者》先生もそうだけど最初って使い道が画策されるまで困る様な。
〘私の場合は主様が能力を使わないから成長のしようがないのです。〙
だって食堂の椅子とか調べても
〖椅子〗
ヒスレアの木から作られた椅子。
頑丈さが取り柄の木材なため壊れにくい。
お値段銀貨40枚。
とかになるだけですし。
それにさっきも言いましたけど身に付けてから一日しか経ってないのでそうそう使いません。
〘主様、自分で言うのも何ですが、私の能力は日常的に使うと材質とお値段が分かる便利な能力なんですよ。モンスターに使うと特性とか分かりますし。〙
これからに期待してください。
「ミーリアス様を回収したら門の前で騎士団員数名と合流して、任務にあたってくれ。」
「分かったわ。お父様はどうするの?」
「俺の任務は国王の護衛だからな。警戒任務にはつけない。」
むしろ国王の直属の護衛の騎士団長がホイホイ外に出てたら問題ですよね。
「なら、アリス、早く朝食にしましょう。」
「かしこまりました、お嬢様。」
お嬢様の後に続いて部屋を出ようとするとラデルドさんが小声で
「悪いな、デートの一つでもしたいだろうに。」
と言ってきた。
「気にしてませんよ、と言うか、何故それがわかったんですか。」
「そりゃ、オメェ、恋愛してる奴や彼女出来た奴の顔なんてすぐ分かるさ。伊達にモテる奴が多い騎士団の団長なんてしてねぇ。」
「ご苦労様です。」
多分これ食堂に行ったら皆様から言われることですね。
〘お嬢様がチラチラと恋する娘のような視線
を主様に向けているのも原因かと。本人は無自覚見たいですが。〙
あ、これ多分僕もだな。
〘ご自身のことをよく理解されているようで。〙
「早く来なさい、アリス。」
「申し訳ありませんでした。すぐに参ります。」
◇
「あ、エリス、アリスさん。」
冒険者ギルドに着くと待っていたミーリアス様がパタパタと駆け寄って来る。
「流石、癒し系王女ね。アリスとセットで愛でたいわね。」
つまり僕も癒し系に片足突っ込んでいるということですか?
いつそんな事をしましたっけ。
〘本人には総じて自覚は無いものです。そう、主様の場合は懐いた人にしか感情を顕にしない猫系でミーリアス様は誰にも笑顔をかける仔犬系です。〙
言われてみれば・・・。
「あ、アリスさん。傷、大丈夫でしたか?」
ミーリアス様がおずおずとしてはいるけれど僕に声をかけてきた。
心配してくれてたんですか、いい子ですよねミーリアス様。
「はい、心配していただきありがとうございました。」
「・・・!」
お礼を言うミーリアス様が驚いた顔をしていた。
「どうかしましたか?」
「いえ、あ、アリスさんは人を信じていなさそうだったので、笑顔でお礼を言われるとは思ってなかったのです。」
「・・・事実でしたけど、面と向かって言われると悲しくなりますね。」
「もう、大丈夫よね?アリス。」
「はい、もう大丈夫、と言いますか、抱えてたもの全部はき出してスッキリしましたのでこれからは新しく亜璃栖として出なくアリスとして生きていくことにしましたので。ミーリアス様、今までのご無礼申し訳ありませんでした。」
ミーリアス様はあわあわと慌てだし首を横に振る。
「こちらこそ失礼な事を言ってしまい申し訳ないのです。その、心の底からの笑顔が綺麗だったので。」
綺麗だったのでって、男としてくるものがあるんですが・・・。
〘性別は告げていないので女性と思われているのでは?〙
・・・そう言えば、お嬢様の専属メイドとは言ったけど男とは言ってなかったような?
「あの、ミー「早く依頼を受けるわよ。」・・・。」
わざとですね。
絶対にわざとですよね、お嬢様。
めちゃくちゃ目で「だまっていなさい」って言ってきてますもんね。
「ほら、早く来なさいな。二人共。」
「はいです。」
「すぐに参ります。」
受付に行くとセラさんが目を見開いて僕らの後ろを見ていた。
そして、こう言った。
「げ!サラ姉!」
そう、僕らの後ろにはサラさんが居る。
それも、メイド服を鎧と混ぜ合わせたメイド服戦闘フォームとでも言う服装で。
背中にはハルバードと呼ばれる戦斧と槍を組み合わせたものを担いでいる完全前衛装備。
「この依頼、サラ姉も受けるんだ。魔法主体のミーリアス様と魔導銃のエリスお嬢様、ハルバードで前衛なサラ姉・・・アリスさん、戦闘、どっち寄りですか?」
「・・・しいていえば、近接型でしょうか?」
鋏と縫い針、まち針は武器に入るか怪しいけれど。
〘一応神から与えられた武具ですから、ただ、主様は日常でも使えます。〙
「接近戦型二名、中、遠距離二名でのパーティーですか、これならシルバーウルフが来てもなんとかなるかと。サラ姉はCランク並の腕前あるし。うん、頑張ってきてください。」
セラさんが笑顔で応援をしてくれる。
さすがの営業スマイルですね。
「さて、騎士団の方々も来ているでしょう。」
「今更ながら森の探索の人達と連携はないんですかね?」
「それでしたら問題ありませんよ、アリスさん。あちらの担当とは一昨日話してあり今日の結果を明日ギルドで報告する事になっています。」
なるほど、なら今日は様子見というところでしょうか。
「騎士団の人達は皆いい人なのです。頑張って依頼を達成して王都の人達を安心させましょうなのです。」
「ええ、草原と言ったら商人が通る道が近くにありますし、普通の人が外に薬草取りにも行けなくなってしまいます。」
なるほど、あそこは魔物の出現率が低いから薬草取りとかに出かける人もいると。
なら、騎士団の人達とも仲良くしてがんばらねばいけませんね!
はい、無理でした。
門に行き、騎士団の人達と出会ったら、ある一人の騎士がお嬢様に向かってこう言ったのです。
「貴族が娯楽で冒険者なんてしてんじゃねぇよ。自分は何も出来ないくせに。」
気がついたら僕はその騎士を思いっきり右ストレートでぶん殴ってました。
でも、騎士としてどうかと思いますしちょうどいいですねよね?
騎士団の副団長さんが一緒にいたのですが、副団長さんやれやれ見たいな顔してましたし。
一章はサクサク進むよ?
・・・多分。
あと数話で一章が終わる予定です。
あと、アリス君は前の話で過去を振り切りったので人を信じていないと言うことはこれからは無いです。
と言いますか、アリス君が信じていないのは多分今のところ大臣(プロローグで出てきたきり)と勇者達です。
次はできるだけ早めに投稿する予定です




