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私たちのヴァルキューレ  作者: 紅葉崎もみじ
ヒーローでも、勇者でも・・・
9/27

9話 本当の初陣

 ズキリと、鈍い頭痛。


 以前と同じ頭が割れそうな衝撃はないが、それでも痛いものは痛い。


 これがロボットとリンクのようなものをつなぐ感覚なのだと今は分かる。


 

 目を開く。目の前には終わった世界。


 

 私はここに戻ってきた。


 無理矢理連れてこられたわけではなく、今度は自分の意思で。

 連れてこられたことには変わりないけど・・・。


 周りを見渡してみると今度は砂漠のような場所だった。ロボットの脹脛ふくらはぎ部分まで砂に埋まっている。


 遠くの方にはおそらく前回私達がいた岩山地帯が見える。


 ここも前回と同じように生き物の痕跡はなかった。


「大丈夫?」


 隣を見ると前と同じように千歳が立っている。

 花柄の可愛いパジャマ姿だった。


 ・・・・なんていうか、本人にそんな気はないんだろうが戦う前にそんな恰好を見せられると緊張していた身体が一気に弛緩する。

 端的に言うと気が抜けた。


 まあ、戦闘が始まったのが夜中だったから仕方ないんだろうけど。

 かくいう私もTシャツにホットパンツと寝る前のラフな格好だ。

 

 もうすぐ日付が変わる時刻、ベッドの上でなんとなくスマホをいじっていると突然頭痛が起きて次の瞬間にはここに転送されていた。

 どうやら戦いの猶予も与えてくれないようだ。


 少し時間をもらえればそれらしい格好に着替えたかったんだけど・・・。

 それらしい格好とやらがどんなものかは知らないが。


 てか、これ入浴中とかだったら裸で戦わなくてはいけないんだろうか・・・。

 うわーその時を想像するとものすごくやる気がなくなる。

 なんで戦う前にこんなに意気消沈してるんだ私は。


 と、そろそろ無言で見つめるのをやめないとパジャマ姿によやらぬ感情を持っていると勘違いされてしまう


 もちろん男でもそっち系でもない私は何のやましい気持ちもない。


 ・・・・本当だよ?


 だからそんな訝しげな目(無表情だから分かりずらいけど)でこちらを見るのはやめて下さい千歳さん。

 大丈夫だから。


「あーいや、頭痛に慣れなくて」


 これ以上変態扱いされたくもないので、下手なごまかしをしておく。


「そのうち慣れるわ」


 無茶言わんでください。女子高生に痛みに慣れろって・・・・。


「・・・落ち着いてと言おうと思ったのだけれど、その必要もなさそうね。初陣ではないとはいえその落ち着き様・・・あなた実は結構大物?」


 落ち着いてるというか気が抜けてるという方が正しい気がするけど。


「それで、どうするの?」


「しばらくはこのまま待機。おそらく前回の敵が追いかけてくるから」

「1週間近くも前なのに?」

「前回の場所とそう距離は離れていないし。そもそも前回のようにネコ科を模した敵は総じて執念深い、というかプライドが高いのでしょうね。一度逃げても執拗に追いかけてくるわ」

「ネコ科を模した敵はって、もしかして他の動物を模した敵もいるの?」

「ええ。色々といるわよ。でもそれを説明するのは後にしましょう」


 千歳は微妙に鋭くなったかもしれない視線で遠くを見つめた。


「来たわ」


 彼女の視線をたどると、2キロほど先からすさまじい速度でそれは近づいてきている。

 この距離だが近づいてくる物が巨大なため私にも視認することができた。


 確かに前回一方的に攻撃された敵だ。


「なんか、怒ってるような気配を感じるんだけど」

「一週間近く待たされたら、誰でも怒るんじゃない?」


 マジですか・・・。


 そう言ってる間も敵はどんどん近づいてくる。

 速い。

 

「前にも言ったけれど、あれは基本的に素早いだけで突っ込んでくるしか能がないわ。冷静に動きを見れば大丈夫」


 敵はもう数百メートルの距離にまで近づいてきた。

 

 あんな速度の物が突っ込んでくるの?


 直撃した衝撃を想像して、背筋が凍る。


 そして敵は目の前に――――




「避けてっ」




 私たちの乗るロボットは横に飛びのいて体当たりを回避した。

 多少無様に転がったが、まあいいだろう。


「もうちょっとスマートに避けられないの?」

「そういわれても・・・」


 コックピット内にも転がった振動が伝わってきたため、隣から苦情が来た。


「すぐに立って」

「は、はい」


 急いで立ち上がる。

 動きに手間取ることなくスムーズに動くことができた。


 事前に思う通りに動かせると聞いていたが、実際に動かすと少なからずの感動がある。


「戦闘中に敵から目を離さないで」

「はいっ」


 慌てて視線を後方へ。

 体当たりを避けられたチーターはたたらを踏んでよろけていた。


 間抜けな姿を見ると、途端に心の中での脅威度が低くなっていく。


 あれ?これもしかしていけるかも・・・。


 心に少しばかりの余裕ができる。

 それでも気を脱がずに腰を落として相手の出方をうかがう・・・。


 とはいっても。戦闘ど素人の私に敵の動きを読むとか、そんな離れ業ができるわけもないのでただ相手を注視しているだけだけれど。


「そう、集中して。まず負ける相手ではないけれどそれでも油断せず」

「わ、分かった」

「私のマニュアルを思い出して、それの通りに戦ってみて」

「・・・・・・・」


 マニュアル・・・・?


 


 え、あれを?


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