26話 後始末
とにかくどっちの敵を運ぶか決めないとな・・・・。
といってもすでに結論は出てるんだけど。
遠距離型の方を運ぶつもりだった。
何故かというと。
単純に防御型は装甲が厚いから運ぶのに労力がかかるだろうと思ってだ。
というか運べるのかな・・・?
上半身と下半身に分断されているけど、多分まだ遠距離型よりも防御型の方が重いんじゃないだろうか?
それなら腕も落とすか、装甲を引っぺがせば何とか運べそうだがそこまでやるのは流石に気が引ける・・・。
遠距離型を運ぶことにしたがそれでももう一方をそのままにするわけにもいかないだろう。
万が一私が離れている間他の人間に発見されれば格好の餌食だ。
カモフラージュぐらいはしておくべきだろう。
私は倒れた防御型に近づいていく。
するとせめてもの抵抗か無事な右腕だけを使って体を引きずって逃げる。
しかし砂をかいても体は動かない。
まあ、そりゃあ怖いよな・・・。
この人視点だと私は今まさにとどめを刺そうとしてるように見えるんだろうし。
私がすぐそばまで近づくと潔く動きを止めた。
あー多分覚悟とか完了してるんだろうけど大丈夫だから。
こっちに殺す意思はないって。
私はその辺の砂を機体の上にかける。
半ばほど埋まるぐらいでちょうどよく敗れた残骸に見えるようにはなってきた。
・・・・うん。これでいいか。
周りにはこのロボットの残骸が転がってるからいい感じに残骸っぽくなってる。
さ、次の後始末もささっと片付けるか。
私はカモフラージュした残骸から離れ、遠距離型の方へ移動する。
・・・・・。
多分防御型の人の頭はパニックだろうな。
まあそれだけ私の行動が不可解なんだろうけど。自分で言うのもなんだが。
遠距離型を担いでその場をあとにする。
遠距離型の人は往生際が悪いというか、担がれた後も手足を動かして抵抗を続けていた。
この人からは死とさらに私の行動の不可解さからくる二重の恐怖が感じられた。
逆に怖がらせちゃってるな・・・。
まあ、しょうがないといえばしょうがないんだけど。
そのまま歩き続けて30分は経っただろうか、何もない砂漠の平原からようやく遮蔽物を発見した。
なんの代わり映えがない岩だけど。
とりあえず岩の陰になる位置にロボットを降ろし、先と同じように砂をかけて見えづらくした。
これで良し。
私は役目は果たしたとばかりにその場を離れる。
あとくされがないように2体を隠した場所から反対方向に移動しよう。
できることなら2度と会わず、殺しあわないで済むことを願うよ。
また30分は移動しただろうか、残りのENはついに5割を下回った。
やはり他のロボットを担いで移動するのは負担になっていたのだろう。消費する速度が2倍近くも早かった。
それでももうあの2体からは5キロは離れただろうから次の戦闘でまた鉢合わせする確率は十分に低くなっただろう。
とわいえこういう状況で、ENがまだ5割と思うのかそれとももう5割と思うのか・・・。
このENが戦闘中に回復できるのかが分からないためどう感じればいいのかに戸惑ってしまう。
しかし回復できるならどうやって回復させるのだろう?
もしかして車のようにガソリンスタンドならぬENスタンドでも配置されてるのか?
・・・・・・。
希望的観測に任せて行動するわけにもいかないか。
戦闘終了までどれだけ時間があるかわからない訳だし、また戦闘になる可能性ももちろんあるだろう。
となればなるべくこの状態。
ENの残量が5割ほどを維持しておいたほうがよさそうだ。
私は遠距離型を置いた地点から点々と立っている大岩に隠れるように腰を下ろす。
ロボットが腰を下ろして意味があるんだろうかと一瞬思ったがまあそれは気持ちの問題ということで。
「・・・・・ふう」
気が休める時間ができ、一息つく。
「・・・・・・」
会話がない。
さっき遠距離型のロボを運んでいるときからずっとだ。
私自身、何も会話がなくても立てられるほうだとは思っていたが。
さすがにこんな狭い密室に二人きりの相手にかたくなに黙られるとキツイ・・・。
本当はいろいろと聞きたいことが目白押しなのに。
さっき疑問に思ったENのこととか。
でも話しかけられる雰囲気じゃないし・・・。
なまじ空気が読めるからこういう時遠慮してしまう。
どうしよ、このまま黙ってるわけにもいかんし・・・。
「いつまで黙っているのかしら」
うわしゃべった。
いや、だめってわけじゃないんだけど。
なんかこう前置きがないとただただびっくりしちゃって碌な反応返せないから。
「そこまでかたくなに黙られるとこちらも声がかけづらいし」
あ、向こうもこっちと同じこと思ってたのね。
「あー、なんていうかしゃべりづらかったっていうか」
「どうしてかしら」
「だって、千歳私がしたこと怒ってるんじゃないかと」
「怒ってないとさっきも言ったでしょう」
言ったっけ?
「なんで?」
以前話したとき千歳は甘さを捨てろと言った。
今の私の行動は、その意に反するものじゃないのか?
「・・・・・・えっと」
そのとき、千歳は初めて口ごもった。
平坦で抑揚がないが聞こえやすくはっきりしゃべるからなんだか珍しい。
「本当のことを話すと・・・・」
「うん」
「私、あなたの行動を見てうれしかったの」
「・・・・・・・・・え?」
ちょっと言われた意味が分からない。
「おかしい?」
「と・・・・・いうより意味が分かんないかな」
「でしょうね」
いやいや一人で納得しないでください。
「さっきのあなたの行動、いえあの時から」
「あの時・・・・?」
「私が人と戦って、殺そうとしたとき」
「!・・・・あの時。でもそれが?」
「あのときあなたは私の行動を間違っていると言ってくれた。それはこの戦い、世界の摂理としてはあなたのほうが間違っていたのかもしれない。だけど、
あなたが私を止めてくれる人で、私は嬉しかった」
そう言って彼女は微笑んだ。
彼女が初めて見せた目に見えて分かる感情。
それはとてもはかなく、綺麗だった。
それはもし私が男だったとしたら、あっさりと恋に落ちてしまいそうな。
そんな笑顔だった。




