表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私たちのヴァルキューレ  作者: 紅葉崎もみじ
ヒーローでも、勇者でも・・・
23/27

23話 逆境と距離

 結果、


 私は敵の罠にかかった。




 踏みしめた地面、そこから轟音と共に光が溢れる。


 すさまじい雷光が私たちを包んだ。

 痛みはないが、衝撃で視界がぐらぐらと揺れる。


「キャアアっ!!」


 ロボットは力をなくしその両手をだらりと下げ両ひざをついた。



 ―――――動かない!



 瞬間、罠の効果を理解する。

 これはこちらの動きを阻害するものなんだ!

 多分さっきの電流でこっちの回路をマヒさせたんだと思うけど。


 先の戦い。この敵と遠距離型の戦闘。


 何故近距離型のこの敵が優勢だったのかが分かった。

 つまり遠距離型はこの罠にかかって動けない間に近い間合いに入り込まれたんだ。



 というかまずい・・・・!



 私の視界には罠にかかった私に向かって近づいてくる敵が映っている。


 そこには歓喜の感情を感じる。

 決着がついたことによる安堵。


「う、動け!」


 頼む、動いてくれ!


 遠距離型は近距離に近づかれた後、回避運動をとっていた。

 つまりこの効果は一時的なもので時間がたてば回復するはず・・・!


 早く!

 動け動け動け動け動け動け動け――――――!


 待て。

 千歳は何か策があるって言っていた。


 だったらそれを信じて・・・。


 だが隣の少女は何も言わない。

 ただ、何かを待っている?


 まさかこれがギリギリ解けるってわかってるの?

 そこまでの効果しかないと。


 だがお構いなしにこちらへ突っ込んでくる敵。


 まずい。

 もう距離がない。


 私と敵の間隔はもう数十メートル。

 対人では十分な距離だが巨大なロボットではもう間近な距離。


 早く早く早く早く早く早く早く早く――――――!




 マヒが解け、身体が動けるようになったが、

 それはわたしの願いが通じたわけではないだろう。




 なぜならもう敵は目前、攻撃のモーションに入っていた。


 だめだ。

 対処が間に合わない。


 私のロボットも相手のロボットも同じく近距離型だ。


 だが、私と相手では間合いが異なっている。


 拳に武装がついている相手の間合いはほぼゼロ距離。

 一方私は太刀を持っている分間合いが広い。


 間合いに入られなければ私が有利だ。

 だが太刀や刀は刀身の先のそり。その部分に一番速度と威力が乗る。

 つまりは柄に近い刀身の根元の部分では攻撃が加えづらい。


 それでも私の太刀なら実際はほとんど切れない部分でも十分なダメージが与えられるかもしれない。

 しかしもう遅い。


 さっきまで無防備に腕を下げていた私よりもすでに攻撃を繰り出そうとする敵の攻撃のほうが早い。


 だめだ。

 一撃でももらえば、あとは体勢を立て直す暇もなく次々と攻撃を加えられて終わりだ。





 土壇場で、敵の動きがゆっくりに見える。


 だが私はどうすることもできずにそれを見ることしか―――――







「防いで!」







 その言葉を理解するよりも、考慮するよりも早く。


 私はほぼ反射で太刀の刀身で体を防ぐ。

 攻撃のモーションは間に合わなくても、防ぐ動作ならギリギリ――――――!


 

 だが無意味だ。



 刀身でギリギリ防ぐことなど敵も予測していた。


 そもそも太刀で機体全体が防ぎきれるわけがない。

 敵は攻撃の軌道を変え、刀身で防ぎきれない部位、足に狙いを定める。


 そこでは致命傷でには至らないだろう。


 だが体勢が崩れ、しかも足が壊され動けない。


 そうなればもうこちらに反撃する隙がない。


 だめだ。

 せめて攻撃を太刀で防げれば、衝撃を利用して後ろに下がることができれば・・・!


 もう遅い。




 敵の攻撃が―――――



 私に突き刺さ――――、




 いや。


 それよりも早く私の持つ太刀に変化が起こった。


 そもそも太刀といっても機械的なデザインで、つばの部分にはもう一つの柄のようなグリップがあったり刀身には鍔から切っ先に向って縦に半分になるようなスリットがはいっている。




 そしてスリットがスライドし、刀身には数十センチの隙間ができた。


 緑色の光が隙間からもれる。


 隙間には光る新しい刀身。




 瞬間、敵の拳打が止まる。


 いや、太刀が防いでいた。

 見えない、しかし持っている私には確かに分かる。


 刀身の周りに見えない、盾のように広い刀身がある。


 なにか質量を持った不可視の『場』のようなものが展開されていた。



 これは太刀の能力?

 いや、今はそれより・・・・!


 私は防いだ攻撃の衝撃を利用して後ろに下がる。


 攻撃の間合いを取る―――――!


 

 チャンス!



 相手の感情が見える。

 勝利への確信は、絶望へ変わる。


 下半身がキャタピラになっている敵は予備動作もなく動くことができる。

 とっさの判断で後方へ逃げる敵。


 安全な距離を取ろうとする。




 だが逃がさない!





 私は完全に届かない距離で太刀を振るう。



 普通なら届かない。


 だが。



 私は太刀の能力を理解する。



 太刀を覆っている『場』


 盾のように刀身を大きくしていた形状が、長く細く変化する。





 何倍にも長くなった刀身で、



 私は敵の胴を両断した―――――。




  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ