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私たちのヴァルキューレ  作者: 紅葉崎もみじ
ヒーローでも、勇者でも・・・
22/27

22話 感情と信頼

 私は動けない。


 何かしらの罠が張り巡らされた地帯を抜ける手段が私にはない。


 しかし、それは相手も同様だ。


 相手の場合は恐らくこの地帯を自由に動けるのだろうが、ただそれだけ。

 遠距離からの武装がないために決着をつけるためには必ずこちらに近づかなければならない。


 結果、場は膠着。

 両者ともに攻めあぐねている状況。



 だが相手は攻めにくいというだけで決して攻められない訳ではない。

 好きなタイミングで攻められるのに対して、私はそれを受けることしかできない。


 攻撃が完全に後手に回っている。

 長期戦になればなるほど不利なのは明らか。


 そして相手はいざとなれば逃げることもできる。

 それだけでどれほどの心理的な負担が軽減されるか。



 戦況としては互角だが、人間としての心境は私の圧倒的な不利・・・。



 私にできる最善策はこのまま戦闘終了まで粘ることだ。


 これがもし現実の戦いなのだとすれば終わりが見えない戦いを延々と続けるつらいものだった。


 しかしこの戦いは条件が満たされれば強制的に終了となり、次の戦闘ではスタート地点が変わる。

 戦闘開始の場所によってはそれで戦況がひっくり返るかも。


 さらに確証はないことが、戦闘が再開されるとロボットのダメージはリセットされる、では仕掛けた罠はどうなる?

 前の戦闘の状況がすべてリセットされるならば罠をしかけたこともリセットした状態でスタートするのではないか?



 ならばこの不利を戦闘終了まで持ちこたえれば一転して次は私の有利になる。



 しかし、



 私はロボットの足を一歩前に出す。


 相手、そして隣の少女から焦ったような感情が伝わってくる。




 私は誰も殺さないで戦うと決めた・・・。

 それは私自身で戦いに制限をかけるってことだ。


 それがどれだけ至難なことか。

 私でもたやすく想像できる。






 だからこそ、私はこの逆境を乗り越えなければいけない。

 逆に言えば、これぐらいの逆境が乗り越えなければこの先だれも殺さずに戦えるわけがない!


 そう思った。




 大丈夫・・・・まだ大丈夫。

 続けて二歩目。


 ロボットが動くことにENという制限があるということは、必然的に敵が仕掛けた罠にも何らかの制限があるだろう。


 だとすれば一度罠を仕掛けだ場所の近くに罠は仕掛けない。

 張るならばなるべく広範囲に罠がいきわたるようにある程度の範囲を空けるはず。


 つまり先ほど罠が仕掛けられていた地面とその付近は安全・・・。


 もちろんこれはこの戦いがゲームのように戦力のバランスが均等になっている場合の話で。

 もしかしすれば私たちの太刀がぶっ飛んだ性能を持っているように相手が使用できる罠も何の制限がなく使えるというむちゃくちゃな効果を持っているのかもしれない。


 だけど、多分それはない。


 三歩目。


「ちょっと待って」


 と、千歳から声がかかる。


「不用意に動きずぎよ。どこにトラップが仕掛けられているのか分からないのに。何故そんな臆せず進めるの」

「なんでって・・・多分罠にも制限があるだろうからその周りは安全だろうと思って・・・」

「確証がなさすぎるわ・・・!それより聞きたいことが、さっきは何故相手が罠を仕掛けるタイプだと分かったの?どうして罠の位置が分かったの?」


 戦闘中に怒涛の勢いで話すな・・・。


「どうしてって・・・・なんとなく?」

「はあ?」


 あ。なんか胡散臭い感情を抱かないでください。

 表情は例のごとく変わらないけど、それもなんとなく分かるから。


「そうしか言いようがないんだって!私、目立たないようにずっと人をうかがって生きてきたからなんとなく分かるようになったの。何感じてるのかとか、なにをされてうれしいか・・・その逆とか」

「・・・・・」


 お互いにロボット越しだけど、わずかにだが伝わって来るものがある。


「相手は追いかけてくる私をあざ笑ってたと思う。このまま誘い込まれて来いって嬉しそうだった」

「それで違和感を感じたと・・・?じゃあ罠の位置は?」

「それは単純にロボットの視線が私と地面を交互に見ていたから。多分パイロットの視線と連動してるんだと思う」

「そんなこと私も気づかなかったのに・・・」


 話しながらも私は相手から視線をそらさない。

 いつ突っ込んできても対処できるように身構えている。


 そしてまた一歩前に踏み出す。


 ふう、大丈夫だった・・・。

 罠の規模もどういう種類の罠なのかわからないから、次の罠までの猶予があやふやになってきた。


「待って。罠を見破ったロジックは一応納得してあげるわ。でもどうしてそう不用意に動けるの?それもあなたの読心術で分かるのかしら」


 読心術って・・・そうたいしたもんでもないよ。

 ただ経験と勘で大体の予想ができるってだけで。




「うーん、それは相手がケチだからかな?」




「ん?」

「あ、ケチな戦いをするタイプってことね。罠をはってじっと相手が来るのを待つタイプ。よく言えば、慎重で几帳面。そういうタイプは無駄を嫌ったりするから。罠を張るときもランダムに配置せずに均等に置くんじゃないかなって・・・」

「・・・・!」


 だから今までの数歩は移動ができた。

 相手の性格を読んでなんとか歩めた数歩。


 でもこれ以上は流石に動けない・・・。


 罠の性能が分からないからどれだけの間隔があいて配置されているのかがわからない。


 そういうロジックの部分まで私は読むことができない。

 私にできるのは相手の思考と感情をある程度理解するだけ・・・・。


 ん?

 それなら。


 私は右足を少しずらし踏み出す気配を出す。

 その瞬間相手のロボットの上体が若干後ろに下がった。

 臆した・・・。


 つまり踏み込んでくるなと感じてる。


 右足を前に出す。

 罠が発動する気配はない。


 これならいける・・・!


 私は同じ要領でゆっくり歩を進めていく。

 だが遅い。


 相手は自由に動ける。こちらが数歩動いてもすぐに距離を空けられる。


 これじゃあ攻撃できる位置にまで近づけない・・・・!


 そして十歩ほど進んだとき気配が変わった。

 体制が若干だが前のめりになっている。

 つまりこのまま進んで来いって思ってる。

 進むことを待っている。


 もちろん私は進まずにゆっくりと迂回するように移動を開始する。


 だが、


「・・・・・・っ!」


 ここで相手から何も感じなくなった。

 つまり私が相手の反応から罠の位置を予測していると気づかれた!


 もともと乏しい情報だ。隠そうと努力されればそれだけで何も分からなくなるくらい。


 だめだ・・・・。


 これで完全に移動できなくなった。


 これでもう相手からの攻撃をただ耐えるしか・・・・。



「進んで」



「え」


 耳を疑った。

 千歳の言葉、支持は私の想像できない一言だった。


「このまま進んで、相手に飛び込んで」

「で、でも・・・・」

「大丈夫、策はある。勝てるわ」


 ・・・・・・・。


「分かった」

「何も聞かないで信用するのね」

「うん。でも千歳のキャラ的に確証がない時にそんな言い切りをしないだろうし。なにより絶対の自信を感じるから」

「・・・・・そんなこと言われたの初めて」

「だろうね。表情変わらないし。何考えてるのか分からないって言われたことなるでしょ」

「・・・・・」

「でも、私はなんとなく分かる。だからその考えを信じるよ」

「・・・感情が信じる条件になるの?」

「なるよ。例えならなくても・・・・




 もうしばらく一緒に戦うパートナー信じないでどうすんの」




「・・・・・なんだか人が変わったみたい」

「だろうね。実際こんな歯の浮くセリフしばらく前の自分なら絶対言わないだろうし」


 でも、自己嫌悪ばかりしている自分だが。

 今の自分はそう嫌いじゃなかった。


「じゃ、行くよ!」


 操縦桿を握る手に力がこもる。


 私は砂を蹴り相手に向けて飛び出した。


 

 

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