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私たちのヴァルキューレ  作者: 紅葉崎もみじ
ヒーローでも、勇者でも・・・
13/27

13話 ビギナーズアンラック

「想定外だわ・・・まさかこんなに早くあれと戦うことになるなんて」

 

 ―――――なんて不運。


 千歳が苦々しいような言葉を吐く。




 目の前には人型の機械。


 私たちの乗るロボットと細部が似通っている部分もあった。

 シャチのような頭部とか。


 しかし全体的な印象は全く異なる。


 下半身は足が一回り太いだけの些細な差だが。上半身は完全な別物だ。

 胴体の分厚い装甲。身体のバランスが悪くなるほど誇大した腕。こちらのロボットの腕ほどはあろうかと思うほど太い指。

 しかも左右で腕の大きさが異なっており、右腕には何だかよくわからない外付けの器具が取り付けられている。


 極めつけはその手に持った巨大な戦棍せんこん

 大型の武器がロボットの凶悪さと屈強さを増大させている。




 一目見ただけで悟る。


 あれは先ほど相手をしたものとはまるで別物だ、と。


 しかし、


 私はそのロボットからあることを感じ取っていた。



「千歳・・・・・あれは」

「敵よ」


 有無を言わせぬ声色だった。

 いつものように感情を感じさせない平坦な声。



 だが、いつもと違いとても冷たい声だった。




「何も変わらない。倒すべき敵」


 なんでそんなこと言うの?

 まるで私に言い聞かせるみたいに・・・。


「で、でも・・・・あれってまるで」


 そう、あれはまるで。


「私たちみたいに・・・・」

「来るわ!」


 私の懸念は相手が砂を蹴ったことで打ち消された。


 こちらに飛び込んだ敵はその手の武器を振りかぶる。


 速い・・・・。

 でもさっきのチーターほどじゃない。


 私は少しロボットの位置をずらすだけで攻撃を躱す。


 よし、さっきよりは上手く躱せ――――





 それは慣れという慢心だった。





 振り下ろされるメイスが砂面に接触した瞬間。

 

 地面が爆ぜた。


「きゃあああっ!!」


 相当な重量があるであろうメイスが生み出したインパクトは一帯の砂を大量に巻き上げた。


 私は砂塵に巻き込まれ大きく体勢を崩す。


 

 しまった・・・・!

 先ほどまでのように大きく避けていれば巻き込まれることはなかったはずだ。

 余裕を出して小さく避けたことが裏目に出た。


 完全な慢心。

 速度に油断し、威力を予想しなかった。


 さらに敵の追撃。

 インパクトの衝撃で地面に突き刺さったメイスの柄を支点にしての回し蹴り。


 避けることはできなかった。

 それでもなんとか装甲の付いた腕で受けた。


 衝撃がコックピットにまで伝わってくる。


 機体が浮かび上がり私は砂の上に投げ出された。




 起き上がらないと――――――!




 慌てて上体を起こすが、


「うっ!?」


 機体の上半身に蹴りが落とされる。


 再び地面に倒された。


 さらに太刀を持つ右手を片足で踏みつけ動きを封じ。

 逆の左手にはメイスの柄頭を打ち付けられ、完全に組み敷かれた。


「まだあなたにこれの相手は無理よ。すぐに私が・・・・・」


 危機的状況。

 なのに私は別のところに意識がとらわれていた。


 


 この敵には意思がある・・・・。

 こちらの動きを封じる動き。

 さっきの敵にはなかった細かい思考を、人の思考を感じた。


 原始的な暴力ではなく、理性的な戦略。





 つまり・・・・。





 つまりこの敵の中には・・・・。




『なんだァ?まったくなってねえなあ・・・・テメエまさかルーキーかぁ?』

「・・・・⁉」


 声。


 私のものでも、千歳のものでもない。

 どこからか響いた声は恐らく・・・・。


 今私たちを組み敷く敵から。



『ぜんっぜん歯ごたえがねえぞ・・・・。せめて抵抗ぐらいしろや、つまんネェだろおがよおっ!』


 敵の中から・・・・。



「乗ってるの・・・・?」


 千歳は答えない。







「この敵には・・・・・・人が乗ってるの!?」








 私は理解できたはずだ。


 ただ、敵と戦うとだけ伝えられていた。


 それでも少し思考を巡らせれば分かったはずだ。


 戦う敵は・・・動物を模した鉄の塊だけではないことを。







 私たちと同じように、


 街の命運を握った人間と戦わなければならないことを。


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