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理不尽。 それに対抗するための活路


 僕はそのまま、剣を軽く振る。 重すぎず、軽すぎず。 ……悪くない。 

 細身のため、防御面に関しては心もとないが、攻撃面は十分すぎる性能だ。

 そして、あの化け物を見据える。 僕が突如、剣を出したことにより、面食らっているようだ。

 理解出来ない光景に困惑している義父をよそに、僕はそのまま距離を詰める。

 そして、そのまま胴体を斬りつけた。


「グアアアアアッ!!!!!」


 体を傷つけたことにより、獣が鳴く。

 しかし、思った以上に体が硬い。 剣は悲鳴を上げ、手元にジン、と衝撃が走る。

 ……どうやら、胴体には体のあちこちに見られる鱗が生えているようだ。 それが剣撃を緩和し、思ったように傷つけられてない、というのが現状か。

 クソ。 これじゃあ、じり貧だ。 まともに戦えば、こっちが持たなくなる。

 ひとまず再び、距離を離す。

 義父もこちらの手が有効的ではない、と知ると、じりじりと追いかけるように距離を詰めてきた。

 どうやら警戒しているらしい。 ……それもそうか。


 実際、はたから見れば僕は、得体の知れない何かだ。 人間だったのに、獣人と化し、今度は魔法という奇跡を使ってくる。

 人間の常識では計り知れない、非現実的な話だ。 こんなの、誰しもが『あり得ない』とつぶやくだろう。

 ――――――なら、それをさらに彩ってやろう。 ……魔力ぎりぎりだが、この状況を打破する方法がある。


「グッ……」


 僕は手に持っている剣に魔力を流し込み、付加させる。 いわゆる、『エンチャント』と呼ばれる、魔力を付呪させる魔術だ。 それに応じ、剣が青白く光る。

 ……それと同時に、体の力が抜けていくのが感じる。 ゆっくりと、溶け込むように力が消えていく。

 これは体の最終警報。 これ以上魔力を使い果たしてしまえば、せっかく助けてもらえたこの命も消える。    

 ……けど、これが最善の一手だ。 こうすることで、刃は魔力で強化され、さらに鋭くなる。

 例えば、そこに生えている木。 これが、この剣で斬るとまるで溶けたバターの様に切れる。

 ただし、時間制限付きだ。 要は、この効果が切れる前にとどめを刺す必要がある。 術が切れるか、殺すか。 ただそれだけだ。


 すると、義父は一歩踏み出し、右腕を突き出して飛び掛かってきた。

 ……いい機会だ。 こいつの切れ味を試すのに、ちょうどいい。


「ふんっ!!」


 ぎりぎりまで引き付け、紙一重のところで避ける。

 そして、そのまま突き出した義父の右腕を、力一杯剣を振りかざした。


「ギャアアアアアァァ!!!???」


 何も抵抗がなく僕の剣は、義父の右腕の肉を斬り分け、切断する。

 断面から行き場を失った大量の血が、吹き出し、地面に流れていく。

 化け物になって、初めての激痛なのか、義父の表情は徐々に恐怖の色に染まっていた。


 しかし。


「なっ!?」


 信じがたい光景を目の当たりにした。 義父の右腕の断面が、ナメクジの様にうごめき、増えていく。

 血は止まり、新たにゆっくりと、だが確実に失った筈の肉が再生されていく。

 今でこそ完全に再生されたわけじゃないが、いずれ切り落とされる前と同じように、動けるようになるだろう。

 義父も自身の体に驚いていたが、次第にこの状況に理解したのか、僕の方を見て嗤った。

 なにをしても無駄だ。 お前は俺に殺される運命なんだ。 と、言わんばかりに。


「――――――ッ!!」


 ふざけるな。 これじゃあ、正真正銘の化け物じゃないか。

 斬っても駄目。 他の攻撃はあまり有効じゃない。 そして、相手は驚異の再生力持ち。

 理不尽すぎる。 あんなのどうやって倒せばいい?


「――――いや、まてよ?」


 そこで気づいた。

 確かに僕自身、こいつを殺すには、力も技術も魔力もない。 正直、お手上げ状態だ。

 だが、それは僕個人の力での話。 ……そうだ。 何も、こいつを一人で殺す必要はない。


 ……ああ、自分は馬鹿だ。 いたってシンプルな答えだ。


 なにもできないなら、他の物を頼ればいいじゃないか。

   

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