けじめ
最初朝日によっての、空の変化だと思った。
しかし、それにしては色が濃い。 時間も、朝日が見えるほど経過してないようだ。
色が、こっちに迫ってきているようにも見える。 優しい日の色ではなく、全てを焼く灼熱の炎の色だ。
……ここまでくると、原因は一つしかない。
「森が焼けている……そういうことですか?」
僕がそういうと、玉藻が頷いた。
「正解。 恐らくこれのせいね」
玉藻は窓に置いていた、何かをつまみ、僕に見せる。
それは、米粒ぐらいの小さな機械のようだった。
何かに引っ掛けるような突起があり、どこでもつけれるような、そんな形をしている。
スパイ映画に登場するような、発信機にも見える。 ……いや、もしかしなくとも、そうに違いない。
「発信機……一体どこに……」
「服の中。 君の懐から携帯を回収しようとしたら、引っ付いてたわ。 恐らく、君が捕まっている間に化け物共に付けられたんでしょう。 多分、森を焼いているのも、彼らね」
ああ。 僕が捕らえられ、気を失っているあの時だ。
だとすれば病院で、化け物と化したクラスメートに待ち伏せされたのも、説明がつく。
「一体残らず、殲滅したと思ったんだけどねぇ……討ち漏らしがあったかぁ……」
悔しそうに、呟く玉藻。 どうやら、病院内の化け物達は、玉藻が一掃したらしい。
銃弾を受け、ウィルに運ばれていたあの時。 擦れゆく意識の中、僕は肉塊と化した化け物の姿を見ていた。
当初、あれをしたのはウィルだと思っていた。 けどこの分では、玉藻が殲滅したらしい。
……。
………。
………………まてよ。
大事なことを忘れていた。
義父。
義父はどうなった?
「た……フォクシーさん。 一つ聞いてもいいですか?」
「ん? なあに?」
玉藻、と呼びそうになるが、ぐっとこらえる。
ここで呼んでしまったら、説明がめんどくさい。 それに、義父がどうなったのか、一刻も早く知りたい。
「病院内の化け物は、フォクシーさんが殲滅した、と言いましたね? ……その中に、猿の化け物はいませんでしたか?」
「猿……猿ねぇ……」
頭をひねり出すように唸る玉藻。
……頼む。 思い出してくれ。
もし、僕が願うなら。 僕が思った通りならば――。
「うーん……犬と猫の混ざりものとか、得体の知れない奴ならいたけど」
「……」
「猿はいなかったかな? ボスが来れば、とかなんとか言って、野垂れ死んだ奴いたけど」
瞬間、僕の体が震える。 そして、表情を悟られないよう、顔を下に向ける。
「え、どうしたの? なんかまずいこと言った?」
僕の様子を不審に思ったのか、玉藻が僕の顔を覗き込みそうになったが、顔を逸らした。
「いえ……大丈夫です。 ちょっと気になっただけですから」
深刻そうな表情に戻し、無理やり笑ってごまかす。
怪訝そうな顔をした玉藻だったが、それで納得したようだ。
「とりあえず、ウィルも疲れ切って寝てるし、君も意識が無かったから、ここを動かなかったのよ」
「そう、なんですか……」
「一応、ウィルが張ってた結界もあるけど……万が一、てこともあるし。 ま、ここに訪れる際、結界内に別世界への転移門……ポータルを創ったから、あんなの気にしなくてもいいわ」
「無駄な戦闘はしなくてもいい、と?」
「そういうことになるわね。 じゃ、私はポータルの調整に入るから。 終わったら、戻ってくるわ」」
そう言って、玉藻は家の中を出ていく。
それを見届けると、僕は寝ているウィルの方を見た。
「……」
玉藻は、無駄な戦闘をするな、と言った。
けど。
僕はそれを無駄とは言わない。 自分にとって、それは大きく、待ち望んでいた事だ。
「森に義父が……」
玄関まで歩き、外に広がる森を……紅く焼けた森を凝視する。
こんなに大きな感情を……願望を持ったことは、生まれて初めてだ。
ああ。
もし、神様がいるとするなら。
こんな僕に様々な機会を与えてくださり、感謝しています。
けれど……これから行う行為をお許しください。 僕にけじめをつけさせてください。
「……行く、か」
確かめるように、軽くジャンプする。
うん、大丈夫だ。 『いつも』の様に体が動いてくれる。
これなら、どんな相手でも後れを取ることはない。
ならば。 行う行動はただ一つ。
「―――――あいつを……義父を殺す」
そう呟き、僕は焼けゆく森の中へ走っていった――――――。
2/15 文章におかしな部分があったため、訂正しました。




