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ルナール

投稿遅れました......申し訳ありません......m(__)m

「な、なんだったんだ?」


 依然として、目の周りは真っ暗。 自分の体も見えない程だ。

 あの映像は一体何なのか。 そして、何故、僕にあんなものを見せたのか。

 ……ますます分からない。 と、考えていると足元の子狐が走り出した。


「あ、おい」


 またか。 先程と同じように子狐がある程度距離が離れるとこちらを見ている。

 ……なぜ、この暗闇の中、あの子狐だけが見える? 自分の体は見えないのに。 

 ……まあいい。

 どうせ何も知らないのに考えたところで、何も答えは出ない。 ここは、何かが分かるまで子狐についていくのが賢明だろう。

 だが、正直気が滅入る。 また、走らされると思うと億劫だ。


「……仕方ないな」


 一歩踏み出し、そのまま走る。

 と、その時違和感を覚えた。

 妙に体が軽い。 先程とは足を前に出すたびに、グングンと前に進む。

 まるで、自分の体じゃないみたいだ。

 現に追いつけなかった子狐も、いつの間にか追いつき、息も苦しくない。

 このまま、ずっと走っていたい。 楽しい。 そんな感情が沸き上がる。 ……今まで、こんなこと考えたこともなかったのに。

 すると、子狐が止まった。 ……次の目的地はここらしい。


「お次はここかい?」


 そう、子狐に問いかける。 が、反応しない。 ……いいから見ろってことか。

 少しムスッとなりながらも、僕も先程と同じように横に並ぶ。

 そして、再びパラパラとフィルムを回す音と共に映像が始まった。


 映像はまるで霧がかかったように、ぼやけていた。

 映像の主も困惑しているのか、視界をキョロキョロと振らす。


『気づいたかね?』


 突然、老人の声が聞こえる。 それと同時に映像が鮮明になった。

 映像の主は、籠の中で眠っていたようだ。 どうやら建物の中にいるらしい。 生活感のある内装で、傍に暖炉があるのが確認できる。

 ……先程の映像の続きだろうか?


『ふふ、ワシはここじゃよ』


 また声が聞こえる。 すると、視界は焦るように素早く後ろを向く。

 そこには、老人が揺り椅子に座っていた。 パイプを吹かしながら微笑んでいる。

 その服装はまさに魔法使いだ。 白髪に長い白鬚。 長めの緑のローブを着ている。

 ……本当にあんな恰好をしていた人がいたのか。

 すると、視界が急激に動き、威嚇するように視点が低くなる。


(……人間ッ!! おにいちゃんや、おかあさんを殺した人間ッ!!)


『……落ち着きなさい。 ワシは何もしない』


 まただ。 あの声が聞こえる。 ということはあの映像の続きか。


(うそだッ!! ボクをだまして殺す気だろッ!!)


『そんなことはしない。 ほら、干し肉をあげよう』


 老人は懐から干し肉を取り出し、差し伸べる。

 それでも、映像の主は威嚇を止めない。


『ほれ、いらんのか?』


(うるさい、うるさい、うるさいッ!!)


 しびれを切らしたのか、映像の主は差し伸べられた干し肉ではなく……老人の手に嚙み付いた。


『......っ』


 噛み付かれた老人の手は、傷口から、だらりと血が流れる。

 表情も一瞬苦痛で歪んだ。 しかし、警戒すまいと、微笑みながら映像の主の頭を撫でる。


『辛かったな、苦しかったな......』


(え......痛くないの?)


『家の前でお主を見つけた時、鳥達がお主の事を教えてくれた。 人間達に家族を殺され、命からがら逃げてきた、と。 それに比べたら、こんな傷口、屁でもないわい』


 警戒を解いたのか、映像の主が噛み付くのを止めたようだ。

 視界には、痛々しい傷跡が見える。 申し訳ないと思っているのか、映像の主は傷を舐め始めた。


(ごめん......なさい)


『ふふ、いい子じゃ。 これからはワシがお主にいろんな事を教えよう。 ......お主、名は?』


(......無い)


『そうかそうか。 なら、お主の名はワシが名付けよう。 そうじゃな......」


 老人は映像の主を抱きかかえ、髭を弄りながら考える。

 そして、思いついたのか、ハッ、っと表情が明るくなった。


『ルナール。 フランス語でキツネという意味じゃが......まあ、名無しよりはいいじゃろ』


(ルナール......それがボクの名前......)


 ルナール。

 その名前を聞いた瞬間、僕はハッとなる。

 そうか。 この映像は......


「ようやく気付いたようだね」


 不意に横から声がする。 驚いて振り向くと、そこには緑の服を着た子供の狐獣人が立っていた。


 おそらくあの子は......小さい頃のウィルだ。



 

 


 

 

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