五、祈り
ママは、イエス様を信じている。
祭壇の前で祈る。
「主よ、わたしは、どうすればいいのですか」
何回かそう祈ったら、夢にイエス様が現れたと言っていた。
イエス様は亡くなった年齢の三十三歳ではなく、五十歳くらいだった。
透明感のある白と青の空を見上げて、涙ぐんでいた。
空を指さして言った。
「わたしが生を受けたのは、この世を治めるためです」
ママは目覚めて、落雷が落ちたみたいになった。
主が何かを伝えようとしている、でもその内容が分からない、わたしなんかに何ができる、と苦しんでいた。
パパは、ママが疲れているからそんな夢を見たんだと解釈した。
話は変わるけど、パパは、スティーブ・ジョブズを現代のダ・ヴィンチとリスペクトしている。
ママは、そんな信仰心の薄い人物をリスペクトするのはおかしいと言って口論になる。
それもしょっちゅう。
ママは僕にも、主に対する信仰心の薄い人間は早死にすると言う。
ママは起業してから、何か変だ。
顔つきも悲愴。
この間は、某出版社のコンクールに応募するための小説を狂ったみたいに書いていた。
小説家になるつもりはないのに何で書いているのか分からないと本人が言っていた。
この頃のママは変。
やっぱり僕のせいかな…




