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9話 2匹の能力を知ろう

 スン、スンスン──。


 2匹の猫達が辺りを嗅ぎ周り、1匹──シロは難しい顔をしている。


 「うー…。難しいのみゃ」

 「シロにはまだ厳しいのにゃ。──もうちょっと奥に行くのにゃ」


 2匹がしてくれているのは、家を建てるに相応しい場所を探してくれているらしい。


 クロによると、匂いでそこら辺に滞る魔力の濃さが分かるのだとか。

 この森は魔物が多い為、魔力が多い所に家を建てると家自体も自然と丈夫になり、自然災害などによって壊れたりする可能性がかなり低くなるらしい。


 川の近くが良いという俺の希望により、今は水浴びした川に沿ってどんどん上流へと進んでいる。


 途中で開けた場所があれば、匂いを嗅いで確かめてくれているのだ。

 主にクロが。クロによると、シロはまだ魔力の匂いというものが分かってないらしい。


 そして歩く事、数時間。


 「ん、」


 クロが何かを感じ取ったようで、川から逸れて森の中へ入って行く。

 俺達も黙って後をついて行くと、少し開けた場所に出た。


 「ここが良いと思うにゃ。もっと奥に行った所に…大きい魔力を感じるにゃ、けど、だいぶ遠い気がするのにゃ」


 景色としては、最初に見つけた場所の方が綺麗だったが、今まで歩いて森の中を見回ってた中ではここも居心地が良さそうだ。

 川も近くにある事だし。

 何より家が丈夫になるというのがいい。


 「俺はここで良いぞ。2人はどうだ?」

 「僕もここで良いっすよ!」

 「…ワタシはお2人に従うのみゃ」


 魔力をクロほどに上手く感じる事が出来ないのを根に持っているのか、シロは少しむくれている。

 ま、それもまたかわいいんだがな。


 「じゃあ、ここにするか!今日から建て始めようとは思うが、取り敢えず野営の準備もしておこうか」

 「そうっすね!今日1日で建てれる訳ありませんし」

 「…前のやつは1日もかからなかったけどな……」

 「え……?──だからあんな風に…コホンッ。こ、今度はゆっくり建てましょう!ね!僕も手伝うんで!」

 「お、おう…」


 リッキスの言葉が地味に俺を攻撃してくるが、俺は負けない!


 「とっ、取り敢えず食料と、焚き火用の枝の確保と寝床を整えないとっすね!」

 「そうだな」

 「枝集めはワタシが行くみゃ!」

 「…シロ1人じゃ危ないから僕も行くにゃ」

 「2人で大丈夫っすか?」

 「危なくなったら隠れるから大丈夫なのにゃ。……フィンス、リッキス」

 「ん?」

 「どうしたっすか?」

 「これからちょっとずつでも良いから、ボクに戦い方を教えて欲しいのにゃ」

 「あー!ワタシも習うのみゃ!」


 クロとシロの言葉に、俺とリッキスは顔を見合わせる。


 「ほ、ほら!ここは魔物だらけの森で、これからはここに住むんだし、ボクだけでも余裕で魔物を倒せるようににゃりたいのにゃ!」

 「まぁ、その方が僕達も安心っすよねぇー」

 「確かにそうだな。いいぞ」

 「ホ、ホントにゃ⁉︎」


 飛び上がらんばかりの勢いで喜ぶクロ。こんなに喜んでるのを見るのは、初めてだったように思う。


 「枝を集めてくるにゃっ!」

 「あ、待って!クロ!」


 2匹はあっと言う間に森の中へと姿を消した。


 「ほんとに2人で大丈夫っすかねー?」

 「暫くは大丈夫だと思ったから、行かせたんじゃないのか?」


 そう言うとリッキスは苦笑する。


 旅の途中でリッキスは度々、静かに森の中を見回すという謎行為を繰り返していた。

 その様子はまるで森の中の声を聞いているようで、こっちへ行こうと言い出したかと思えば、そこには動物がいたり木の実があったりと、毎日の食料を安全に確保する事が出来ていたのだ。

 少なくとも探知のような特殊魔法を持っているのは確かだろう。


 「やっぱりバレてました?流石は兄貴!それにしても、どうやって枝を運んで来てくれるんでしょうね」

 「さぁな。口か……尻尾とかか…?」


 あの2匹には尻尾が2本あるから、尻尾で持ったとしても安定性は良いはず…。


 「尻尾!それは考えつかなかったっす!」

 「ま、俺は食料探してくるから、ここは頼んだぞ!」

 「了解っす!」






* * *






 「あ!兄貴!早かったっすねー。収穫はどうでしたか?」

 「おう!上々だ!」


 俺は早速、さっき狩ってきたばかりの獲物を空間収納から取り出して披露する。

 大きめの鳥2羽に、鹿1頭、あとは魔物を何体か狩った時に落とした肉。森の中で見つけた赤い木の実などもある。


 「…流石兄貴デスネ……」

 「頑張っただろ?」

 「普通頑張っても、ここまでは無いと思うっす」

 「そうか?あとは魚でも釣ってこようかと思ったんだが…」

 「充分っすよ!」

 「なら良いか」


 辺りを見回してみると、俺が以前狩った動物の毛皮で寝る場所を整え、火をおこす為、石で釜戸の様な形を作っていた。リッキスの方も準備は万端のようだ。

 後はクロ達だな。


 「先に捌いとくか?」

 「そうっすね。その間に帰ってくるでしょ」


 という事で、2人で動物の毛皮を剥ぎ、肉を捌いていく。




 ガサガサッと音がしたのは、鹿を捌き終わった頃だった。


 「!帰って来たか?」

 「…兄貴、さっきから風が吹いて草木が揺れる度にそれ言ってますよね」

 「だって心配じゃないか」

 「まぁ、そうっすけど。──あ、今度は本当に帰ってき、た……?」


 リッキスに、将来は絶対親バカなりますねと少しバカにされながら、俺は次に鳥を捌こうとしたのだが、彼の言葉に顔を上げた。


 リッキスの視線の先には、黒髪の男の子と白髪の女の子が立っていた。

 見た目から言って、大体10歳ほどだろうか。

 男の子はシャツに短いズボン、女の子はワンピースといった感じのラフな格好をしている。

 そしてどちらも何故か裸足であった。


 「どちら様っすか…?」


 リッキスは訳が分からないといった様子だが、ふと俺は、2人が両手に抱えてる物に気づいた。


 「もしかして、クロとシロか…?」

 「そうにゃ」

 「びっくりしたみゃ?」

 「ええぇっ⁉︎」


 俺の問いに軽く頷くクロと、可愛らしく小首を傾げるシロ。

 リッキスは思わず声を上げている。


 びっくりするなんてもんじゃないわ。何故急に人間になったし。

 いくら魔法があるファンタジー世界でも、展開が急すぎる。

 普通は徐々に成長して、そして進化していくもんだと思うのだが…。


 ま、それは置いとくとして、だ。まじまじと2人を観察してみる。

 俗に言う猫耳というやつはなく、尻尾は2本見える。

 クロシロ共に、毛の色=髪の毛の色となっており、目の色も変わってない。


 そして、2人共ほんとにかわいい。俺が親バカになりそうだとリッキスが言ってたのも分かる気がしてきた。


 「なんで人間の姿になれるんすか?」

 「ボク達は少しだけど魔法が使えるのにゃ」

 「この姿になれるのは、ほんの短い間だけなのですみゃ」


 そう言って、2人は拾って来てくれた枝を地面に置くと、パッと元の姿に戻った。


 「驚いたな、人型になる魔法が使えるのか。でも、それよりも無事に帰って来てくれて良かった。おかえり」


 そう言うとシロはにっこり笑って、クロはそっぽを向きながらも俺の言葉に答えてくれる。


 「ただいま帰りみゃしたみゃ」

 「…ただいまにゃ」

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