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8話 今後の事を話し合おう

 ザバッー。バシャバシャバシャ。


 「ふぅわぁ〜」

 「どうだ?気持ち良いか?」

 「気持ち良いですみゃ〜!」

 「ほら、クロもそんなとこにいないでこっちに来るっす!僕が洗ってあげますよ!」


 リッキスは俺と同じ様に袖とズボンを捲り上げ、こっちへおいでーっとばかりに両腕を広げている。


 「ボクは別に……」


 ツンとした言い方をしながら、それでもこちらをチラチラと見ているクロ。


 「全く、仕方ないっすねぇー」


 リッキスは苦笑してクロの元へと行き、


 「うわっ!にゃにするのにゃっ!」

 「クロが素直にならないのが悪いんすからねー」


 クロを抱きかかえて、川の方へ戻ってくる。


 俺はというと、シロの身体を川の水で綺麗に洗ってあげていた。耳の後ろ、首の周りなどを念入りに擦ってあげると、シロはとてもご満悦な様子である。

 クロもリッキスに洗われ、文句は言いながらも大人しくしている所を見ると、気持ち良いんだろう。

 リッキスも楽しそうに洗っている。




 ふるふるふるっと身体を振って全身から水滴を落とした2匹を見ると、見違えるほど艶が出て綺麗になっていた。

 クロは黒い毛並みによく映える金色の瞳。

 シロは白い毛並みにこれまたよく映える蒼色の瞳だ。

 そしてなぜか、2匹とも尻尾は2本生えてる。

 だが、2匹が並び立つと中々絵になるのだ。思わず俺も魅入ってしまうくらいに。


 「ふわぁー。良い天気っすねぇ〜」

 「ああ、そうだな」


 俺たちも川から上がり、草むらに腰を下ろす。

 時間帯はちょうど昼下がり頃で、太陽が辺りを暖かく照らしてくれている。

 川辺なので木がそこまで覆い茂っている事はなく、日向ぼっこにはもってこいの場所だ。


 「──兄貴は…ここが死の森とかって呼ばれてるのを知ってて、それでもここに家を建てようと思ってるんすか?」

 「あ──。そういやそんな事家族が言ってたっけなぁ。…リッキスは嫌か?ここが」

 「嫌じゃないっすよ!むしろ、兄貴がこの森に家を建てるって言うから、僕は兄貴について来たんですし」

 「なら良いじゃないか。ここは静かで居心地が良いし。旅人のお前は一箇所に留まるのは嫌かもしれないが、帰れる場所があるってのも中々良いだろ?」

 「それは…まぁ、はい。そうっすね」

 「魔物もそこまで強いって訳でもないし、時間はたっぷりある。まぁ、ゆっくり楽しくやろう」


 リッキスは少し呆然とした後苦笑した。


 「そうっすね」

 「お2人がいるのなら、ここがどんな場所だってついて行くのみゃ!」

 「……シロの面倒はボクが見ないとダメだから仕方にゃいのにゃ」

 「──っ!このぉ〜っ!2人共可愛すぎるぞぉ〜っ!」


 リッキスは2匹を抱き抱えわしゃわしゃと撫でまわす。シロはくすぐったそうに、クロは少し嫌そうにしている光景を見ながらゴロンと寝そべり、目を瞑る。


 とても、平和な時間だ──。









 「何だ⁉︎お前達は⁈」

 「何しに来た!」

 「もちろん、あんた達を───するために」

 「ふんっ!そんな事できる訳ないだろう!俺等を何だと思ってる!」

 「そーだそーだ!俺達ゃ誇り高き───なんだぞっ!おめぇらに負けるわきゃねぇ!」

 「ふっ、それは…どうかな?」

 「っ⁉︎」


 ムグッと口を塞がれ手を掴まれる感触がする。


 「○○○○っ!」


 ドンッとした衝撃と共に、掴まれた手が離れた隙に俺は逃げ出した。


 「わあぁぁっ!」


 知ってる声──。いや、俺は知らない。いや、知ってるんだ。

 誰だ?顔がよく見えない。


 ここは…どこだ────?









 ハッと目が覚めた。

 どうやらうとうとしていたらしい。


 周りを見ると、スースーと寝息を立てるリッキスと丸くなって眠ってるクロとシロがいた。

 なんかよく分からない夢を見た気がするが、全く覚えてない。何だかもやもやするが全然思い出せないので仕方ない。思い出すのを諦めた。


 それにしても、リッキスは以外とまつげが長いんだな…。

 クロとシロは丸くなって、なんか黒と白の毛玉みたいだ。可愛いな。撫でたいが、それで起こしたら可哀想なので今はやめておく。


 ぼうっと空を見上げる。

 うとうとしている間に、空は夕焼け色に染まっていた。


 そろそろ夕食の準備でも始めるかな。






* * *






 「なぁ、これなんか良いんじゃないか?」

 「お!中々良いんじゃないっすか」

 「いみゃみゃで見た中で一番大きいですみゃ」

 「まぁまぁ丈夫そうだにゃ」


 目の前にあるのは両腕を広げて抱きついたとしても、反対までは届かないような大きな木だ。


 クロ達と出会って1週間。森の中を歩き回って、やっとここまで大きな木と出会えた。




 クロ達にはこれから家を建てるのだと説明すると少々驚いていたが、この1週間の間に2匹とも随分打ち解け、家を建てるのも手伝ってくれると言う。


 2匹のその心意気がとてもかわいすぎて、どうやって手伝ってもらおうかなんて考えない。

 取り敢えずお礼を言っておく。もちろん撫でるのも忘れない。


 あぁ、クロとシロは完全に癒やしだな。




 クロとシロのかわいさについては置いておこう。

 取り敢えず今は目の前にある木だ。


 全員の賛成の声をもらったので、この木にしよう。

 3人にちょっと下がっておくように言い、魔法を使ってばっさりと根本から切り倒す。


 ドドォ──ン──……。


 地響きと共に物凄い音を立てて、木が倒れる。


 「この大きさなら後3本くらいあれば、二階建てくらいいけそうっすね」

 「そうだな」

 「次の木を探しますか?それとも先に建てちゃいます?2部屋くらいなら余裕で建てられそうな気もするっすけど」

 「うーん、そうだなぁ…。先に少しずつでも建て始めるか」

 「了解っす」

 「どこに建て始めるのみゃ?」

 「前に建てようと思ってた場所があるんだが、そこまで戻るか、新たな土地に建てるか…」

 「新しい土地が良いのみゃ!ワタシも協力出来るみゃ!」

 「おぉ、そうか。ならみんなで新しい場所を探しに行きますか」


 特に前の場所にこだわりがあった訳でもないので、新たな土地を探しに行く事になった。

 それでも、水辺の近くは外せないよなぁ。

 生きていくのには必須である。魔法があるとは言え、万が一の時が無いとも限らない。


 ま、なんとかなるか。


 シロも手伝ってくれると言うし、クロもなんだかんだで手伝ってくれるのだろう。


 俺の知らない良い場所もあるかもしれないし、また場所探しから楽しんでいこう。

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