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32話 見定めよう

気付けばこんなに放置してしまってました…(・・;)

すみません

こんな亀更新ですが、お付き合いして頂けると嬉しいです

 普通なら怪しむ所なのだろうが、奥さんは快く3人の男達を迎え入れた。

 ここでは何人かで集まって夜を過ごすのが安全とされている。だから奥さんの行動は普通なのだが、フィンスはどこかに引っ掛かりを覚えた。


 「ご飯は食べたかい?良かったら一緒に。この人達が上等なお肉をくれたんだよ」

 「マジですか⁉︎いやぁー、助かります!俺たち、もう腹ペコで…」

 「そうかいそうかい!じゃあ、一緒に食べよう」


 ニコニコと3人の分の料理も用意する。


 「うわぁー!この肉、最高ですねぇー!」

 「そうでしょう!私もこんな美味しいお肉、今まで食べた事がないのよ!」


 そこでチラリと旦那さんを見る奥さん。

 旦那さんは苦笑しながら、勘弁してくれよ…と呟いているが聞こえてないようだ。


 1人は楽しそうに話しているのだが、後ろの2人は表情も動かさず黙々と食べてる。


 「なんか気味が悪いわね」

 「そうね。ちょっと怖いかも…。あの人も笑ってるのに目笑ってないし…」


 3人から少し離れた所に座っているスーシャとセリアは、コソコソとそんな事を話している。

 男はそれに気づく事もなくにこやかに会話を続けていた。


 「ああ、そうだ!俺たち、果実水を持ってるんです!この肉のお礼に…と言ってもそんな高価な物じゃないんですけど、どうですか?」

 「あら、いいの?」

 「もちろんですよ!」

 「じゃあ、頂こうかしら」


 それじゃあ、と一人一人に注いでいくが、


 「あ」


 リッキスに最後の一滴を入れた所で、全てがなくなってしまったようだ。

 行き渡ってないのはフィンスだけである。


 「すみません!ちょっと待って下さい!」

 「俺は別にいいから気にしないで下さい」

 「そんな訳にはいかないですよ!」

 「兄貴、僕のをどうぞっす!」

 「いやいやいや、お兄さんにはもっと良いのを!一つしかないんですけど」


 少し離れた所に置いてある鞄の中を漁り、目当ての物を見つけたのか、嬉しそうに取り出した。


 「さぁ、どうぞ!これも中々美味しいですよ!」

 「ありがとう」


 受け取った飲み物を飲もうとした時、黒い物体が凄い勢いで通り過ぎて行った。──フィンスが持っていた飲み物に体当たりして、全てを零してから。


 ただ、フィンス達4人以外の他の人から見たら、通り過ぎようとして当たってしまっただけの様に見えただろう。

 実際、そう見える様にしていたのだから。


 ……クロ?


 黒い物体の正体をしっかりと見た4人は内心で首を傾げるが、顔には出さない。


 「なっ⁉︎」

 「うわぁー。すみません、せっかく頂いたのに…」


 申し訳なさそうに言うフィンス。


 「あ、あぁ…仕方ありませんね…」


 フィンスに答える男は必死に笑おうとしていたが、若干口を引き攣らせ、顔には青筋が立っているように見えた。だが、後ろにいる男達は隠す事もなく顔が完全に怒っている。


 …これは絶対何か入ってたな。

 まぁ、今奥さん達がいる中で仕掛けてきたりはしないだろうし、放置しておくしかないだろう。


 フィンスは軽く3人に目配せしておく。


 「ふぁー。私、眠いし先に寝させて貰うわ」

 「あ、私も!」

 「そうねぇ、明日も早いものね。見張り番はどうしましょうか?」

 「あ、俺とリッキスでやっときますよ。ゆっくり休んで下さい」

 「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。3時間交代で良いかしら?」

 「いえいえ、今日は俺達がやりますよ」


 それは申し訳ないと言う奥さんに、気を取り直したのか男が会話に入ってくる。


 「俺達は急に無理言って入らせて貰ったんです。代わりは俺らがやりますんで女の子達やお二人はゆっくりして下さいよー」

 「あら、そうかい?じゃあお願いしようかしらねぇ」

 「すまないなぁ」


 奥さんと旦那さんはそれぞれお礼を言って、寝袋に入っていった。


 「何かあったら起こしてね」

 「よろしくお願いします」


 そしてスーシャとセリアも。






 ──そして3時間くらい経っただろうか。


 「……………」

 「……………」

 「……………」

 「……………」

 「……………」


 この無言の続く時間が辛い。

 と言うか、これ、交代制じゃないの?あの人達、寝ないのか?

 奥さんの前ではにこやかに喋ってた男も何を考えているのか、無表情だし。


 周りにいる人達も見張りを残して皆んな寝入ってるようだ。

 辺りは静まり返ってる。


 …ん?

 隣をふと見ると、リッキスが座りながら前後にゆーらゆーら揺れている。


 ……。仕方ないな。

 リッキスをそっと地面に横たえ、毛布を掛けてやる。

 それでも彼は起きない。…………。まぁ、うん。


 「…優しいんですね」


 男がやっと口を開いた。


 「そんな事はない。……それより、俺に何か用があるんじゃないのか?」


 フィンスの言葉に男は軽く目を見開く。

 そして、嗤った。


 「なーんだ。バレてましたか。さっきは失敗しちゃいましたし、こうなりゃ力ずくでいかせてもらいますね」


 ゆらりと立ち上がった男の顔からは表情が抜け落ちていた。

 そして後ろにいた2人の男も立ち上がる。


 「…何が目的だ?」

 「ちょっとね、あなたに人形になって欲しいだけですよ」

 「ふん、そんなのなる訳ないだろ」

 「あなたに拒否権はありません。言ったでしょう?力ずくでいくと。こちらはもう後がないんですよ」

 「そんなの知ったことか」

 「ふっ、そうでしょうね。全ては俺達の事情の為なのですから。貴方はあるお方に目をつけられてしまった。ちょっと運が悪かっただけです。この人達を傷付けられたくはないでしょう?さぁ、俺達と一緒に来てもらいましょうか」

 「…俺がそんな脅しに乗るとでも?」

 「これを見てもそれが言えますか?」


 背後を面白そうに見る男に倣ってフィンスもそちらの方を見ると。


 「……」


 2人の男の内1人の男に担がれたリッキスがいた。当人は起きる様子はない。


 いや、うん。なんと言えば良いのか…。せっかく俺の近くで寝かせてやったというのに。まぁ、いいか。


 「…どこに行けば良い」

 「話が早くて助かりますよ」


 無言で森の中に入って行く男達について行く。

 時折襲って来る魔物達は全て、リッキスを担いでいない方の男と、奥さん達の前ではにこやかに喋ってた男が倒してくれているのだが、俺からしてみれば魔物を倒すスピードが遅すぎる。

 それにだんだんと疲れが見え始めてるのだが…大丈夫なんだろうか?

 まだキスツの森に入れてないのに。いや、キスツの森には入る予定はないのかもしれないな。


 しばらくしてようやくキスツの森に着いた。しかしまだ入り口前である。

 ここに辿り着くまでに身体をボロボロにした奥さん達の前ではにこやかに喋っていた男──長いな。もうニコ男でいいか──が俺に気付かれないように静かに息を整えている。そして、こっちを見てキリッとした顔作ってても、疲れてるの分かってるからな。


 「この森の事は知ってますよね?」

 「ああ」

 「なら、この人をここに放り込んで魔物に殺されたくなければ、大人しく俺たちの言うことに従って下さい」


 ……え。わざわざここまで来といて脅し?

 なんかもっとこう…なぁ?色々とありそうな予感がして、ほんの少しだけワクワクした気持ちを返して欲しい。


 「嫌だ」


 俺の言葉にニコ男が目を見開く。


 「…この人を見捨てるんですか?」

 「いいや」

 「森に入れば死にますよ?」

 「それはどうだろうな」

 「…この森の話は知ってるんですよね?入ったら生きては出られないと」


 普通に出れるけどな。


 「ああ」

 「……」

 「……」


 無表情でお互い見つめ合う。やめろ。俺にそんな趣味はない。


 「俺達は本気ですよ?」

 「ああ」

 「…ペスト、ダノン、頼む」

 「了解した」

 「分かった」


 リッキスを担いでいた男と、始終無言の男が頷くとキスツの森へと入って行く。


 森へは入らないのかと思った。

 付いて行こうとすると、ニコ男が目の前に立ちはだかる。


 「貴方を行かせる訳ないでしょう。森に入れば命はない。3人共ね。貴方が悪いんですよ」

 「3人共?リッキスを置いて戻って来る気じゃなかったのか?」

 「…俺の話を聞いてました?キスツの森へ入れば皆んな死ぬんです」

 「んん?じゃあ、あいつら道連れ?」

 「そうです。追いかけたら貴方も死にますよ」


 話してる間にリッキスの姿は小さくなっていく。

 まぁ、別にほっといても良いんだけどな。


 「俺らは死なないよ。お前達はどうか知らないけどな」

 「……。どうしても行くつもりですね。連れて来るように言われてるのですが…まぁ、良いでしょう。死んでしまえば何も出来なくなりますし」


 どうぞ、とでも言うように道を譲るニコ男。


 「お前は仲間を助けに行かないのか?」

 「……行きませんよ。彼らは貴方達を死へと導き、立派な功績を残したと伝える者がいなければ不憫でしょう」

 「そうか」

 「どうぞ安らかに」


 ……。どうやらあいつの中では俺達は絶対に死亡するらしい。

 誤解しててくれてた方が都合が良いので、何も言わないでおく。


 俺は振り返らずリッキス達を追って森の中へ足を踏み入れた。

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