20話 寄り道しよう
ここまで読んで下さった方、ブックマークして下さってる方、本当にありがとうございます!
お陰様でやっと20話まで来る事が出来ました。
話の内容はほとんど進められてないのですが…(ー ー;)
ぼちぼち頑張りたいと思ってます。
ほんの少しでも楽しんで頂けたら幸いです!
それではどうぞ!
「おい!あいつら裏門の方へ回ったぞ!あっちはほぼ女子供しかいない!何隊か援護しに行くんだ!」
「無茶ですっ!煉椰隊長っ!こちら側も押されていますっ!」
「バカかっ!仲間が犠牲になっても良いのかっ⁉︎」
「嫌ですっ!当たり前でしょ⁉︎あんな奴らに大切な仲間を奪われるもんかっ!」
「その意気だ!死ぬ気で守れっ!」
「「「はいっ!」」」
「隊長ーっ!大変です!北の方から人間がやって来ます!」
「何っ⁉︎こんな時に…。人数は?」
「おそらく4人かと」
「おそらく?……そいつら北からって言ったよな?本当に人間か?」
「…どういう意味です?」
「北って事は、そいつ等キスツの森の中央からやって来たって事になる」
「あ…」
キスツの森からやって来た人間。それを指すのは、人間の姿に化ける事が出来る高位の魔物という事になる。何故ならキスツの森に住もう何ていう物好きはいないのだから。
「これはさらにまずい事になりそうだ…。さっさと片付けるぞ!」
「「「「おおっ!」」」」
彼等は小人族。その存在を人間達は知らない。
それはある意味当たり前である。
彼等は人間達に見つからないよう、キスツの森の入り口付近でひっそりと暮らしているのだから。
* * *
小さな仮屋が出来てから1ヶ月。扉は魔法で切り取り、開閉の為の器具は買い忘れていたので、扉の開け閉めは手動だ。と言っても立て掛けるだけなのだが。
ネジも無いし、すぐに街へ買いに行こうという話も出たが、どうせ街へ行くならセリアとスーシャをもっと鍛えてからの方が良いだろうと判断し、1ヶ月という短い期間だったが6人で猛特訓した。
その結果、セリア、スーシャ、クロ、シロはある程度は強くなったんじゃないかとフィンスは思っている。
リッキスについては、まだまだ実力を隠してそうなので分からない。
今は全力で鬼ごっこをしながら、フィンスの実家があるアギール王国に向かっている。
「はいっ!タッチ!次、スーシャが鬼っすね!」
スーシャが走っていた木の上の、その又上から突然現れたリッキスはスーシャの頭に赤い花をくっ付けて、さっさとスーシャから離れ姿を消す。
赤い花は鬼の証拠だ。
この赤い花はひっつき虫のようにひっつくので、このゲームには最適だった。
「リッキス!絶対わざとでしょ!私ばっかり狙うんだから!」
スーシャは直ぐに次のターゲットを追いかけようと、周りを見渡す。
(──いたっ!)
スーシャが見つけたのはシロ。気配を消して地面を走ってるシロを木の上から追う。もちろん、スーシャも気配は消してある。
──パリリリッ
「わっ!」
だが、シロは気付いたようで微弱な雷を放ってきた。慌てて避けた隙に、シロは身を隠してしまった。
「ああっ!やっちゃった!」
この鬼ごっこ。範囲やルールは特に決まってない。魔法でも何でも使いたい放題なのだ。ただ、アギール王国に着いた時に鬼だった者が、仮屋に戻ってから1週間、朝・昼・夜のご飯を作るという罰ゲームでみんな必死であった。
鬼になった者は最悪だ。休まずに相手を探さないと、先にゴールされてしまう可能性があるのだから。
そんな中、フィンスはある気配に気付いた。
「…魔物か?いや、それ以外もいるな…。人間じゃなさそうだ」
「どうしたんすか?兄貴」
隣にやって来たリッキスを見て、飛び退こうとしたフィンスだったが、鬼の証である赤い花を付けてないのを見て安心する。
「いや、あっちの方に魔物が群れてるなぁと思ってな」
「行ってみますか?」
「あぁ。魔物だけじゃ無さそうだしな」
「スーシャ達はどうします?」
「そのまま続けてもらおう。一応体力の訓練にもなるしな。それにいつ俺達を見つけられるのかも試したい」
フィンスの言葉に、リッキスはニヤリと口角を上げる。
「そうっすね」
数分という短い時間で、フィンス達はそこに辿り着いた。
「うわぁ…。気持ち悪い魔物っすね」
「そうだな…」
そこにいたのは、お尻の先っぽだけが赤い、犬位の大きさのアリの魔物の集団だった。しかも数え切れないほどいる。
その集団が中心に向かって一斉に襲いかかっていた。一部の魔物達が2人に気付き、襲いかかって来るが、リッキスに瞬殺される。
「兄貴…あれって…」
リッキスの指差した方向。それは中心部だった。そこには…。
「街…だな」
人間が住むには小さ過ぎる街があった。塀の高さはちょうど魔物の頭位の高さで、フィンスとリッキスは余裕で上から中を覗けるほどだ。
だが、街並みは人間が作った物よりも凄いんじゃないかと思うくらいの立派な街だったんではないかと思う。と言うのは、既に魔物が滅茶滅茶に荒らしているからだ。
それでも残っている建物の端々からそう思うのだ。ここの技術は相当なものだろう。
そして、あちこちから戦っている音や声。
遠いからか、何を言ってるかはフィンス達には聞こえなかった。
* * *
「隊長っ!もう持ちませんっ!」
「他の者達は逃げ切れたかっ⁉︎」
「ここに居るA部隊以外は秘密通路から街の外へ出るのを確認しています!ただ、無事かどうかは…」
「今はそれだけで十分だ!お前達も秘密通路から行け!」
「隊長は…?」
A部隊の隊長である煉椰は微笑んで、目の前にいる不安そうな副隊長の肩にポンっと手を置く。
「これからは快稀、お前が隊長だ。いいな?」
その言葉の意味を理解し、快稀は首を横に振る。
「隊長を放って行くなんて、そんな事出来る訳ありませんっ!」
「必要な事だ。許せ」
「そんな…。隊長は何も分かってない!僕達がどれだけ貴方を必要としているか…」
「そうですよ!」
「皆んなで逃げるんです!」
「隊長!」
A部隊の隊員達も口々に声を上げるが、煉椰はそれを一喝する。
「バカ野郎っ!そんな事して、こいつらが後を追って来たらどうするつもりだ?それこそ全滅だ!」
「それは…」
「いいか?俺が時間稼ぎをしている間に、皆んなを無事に遠くまで逃すんだ!それが最後の俺の命令だ!…しっかりやれよ。お前らなら出来る。何て言ったって俺の部下なんだから」
「隊長……」
「なぁに、そんな顔すんなって。俺だって死ぬつもりはねぇよ」
笑った煉椰に対して、快稀も泣きそうになりながら笑みを返す。
「──なら、次会った時は甘い物を奢りますね!」
いつも気難しそうな顔をしている煉椰からは想像出来ないが、大好物は甘い物であり、本当は気さくでとても優しい事を皆んなが知っている。
「それは楽しみだ。たらふく食わせろよ」
「もちろんです!……どうかご無事で」
「おぅ。お前らもな」
隊員達が秘密通路を通った後、煉椰は入り口を壊して中へ入れない様にした。
街の周りを囲んでいる魔物達の数は数え切れない。
しかも、煉椰の何倍もの大きさだ。
正直言うと、秘密通路の入り口を壊さなくても、魔物達がその中を通る事は出来ないだろう。
だが、相手はアリの魔物だ。仲間が逃げた事に気付かれ、新たな穴を掘り、後を追われては困る。
仲間達が無事に生き残れる事を祈り、妖精達に自分に力を貸してくれる様に頼む。
(どうせ死ぬんでも、沢山道連れにしなきゃな。あいつらに格好がつかない)
「さて、やるか!」
数え切れない魔物の軍団を前に、たった1人、声を出して気合を入れ直す煉椰だった。




