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2話 ギルドへ行こう

 アギール王国の王都の下町にある、この街で1番大きく賑やかなギルドに人目を引く少年が入ってきた。


 服装は一見普通の旅装で、腰に2本の剣を差しているだけなのだが、その立ち居振る舞いの為か、高貴な者を思わせる雰囲気を漂わせている。


 鮮やかな金髪に、優しい色の中に真っ直ぐな意思を宿した真紅の眼を持った少年は、女性は勿論、男性でも思わず二度見してしまうほどの美少年だった。


 周囲にいた人達はその少年が受付の前まで行くのを見て、どこかの貴族がギルドに依頼する為に寄越したお使いだろうと考える。

 ──が、


 「ようこそ冒険者ギルドへ!初めての方ですね?今日はどの様な御用件ですか?」

 「ギルドに加入したいのですが」

 「…え?──ハッ、失礼しました。加入の手続きですね」


 ギルドの受付嬢もこの美少年がてっきり貴族のお使いだと思っていたのだろう、一瞬驚くがすぐに気を取り直して加入手続きの紙を取り出した。


 「こちらの方にご記入お願いします」

 「分かりました」


 記入して渡された紙を見て、受付嬢は名前などの確認をしていく。


 「──フィンスさんですね。……あら?名前と年齢しか記入されていませんが、宜しいのですか?ギルドカードは簡単な身分証明にもなります。これだと城門を通る時やクエストをこなした時くらいしか役に立たないと思いますが」

 「それで良いです」

 「分かりました。それではギルドの説明をさせて頂きますね」





* * *





 時は少し前に遡る。


 家を出たフィンスは家を建てる為、良い土地を探そうと森へ直行しようとするが思い留まり、冒険者ギルドへと向かう事にする。




 先に言っておくが、俺はこの王都や街に家を建てようとは思っているのではない。人付き合いが苦手な為、1人のんびりと生活出来る、理想の田舎生活ならぬ森生活をしようとしてるのだ。


 何故ギルドに向かう事にしたのか。それは率直に言えばお金だ。

 家を出る時に、両親がとんでもない額のお金を渡そうとしてきてくれたのだが、それでは自分の力で家を建てる事は出来ないと思い、全て断ったのだ。

 なので今、俺は無一文である。


 食料は森でどうにか出来ると思ったものの、よくよく考えれば家を建てる為の金槌などの道具が買えない。

 流石にそこから自分で作るのは難しいだろうから、道具類を買う為のお金を稼ぐ為にギルドに入る事にしたのだった。






 このアギール王国は山を開拓して出来た王国で、1番高い所に城が、次に貴族などの高貴な家が建ち並ぶ貴族街、その下に平民の家々がある下町で成り立っている。


 貴族街を歩いている時は、公爵家の次男と分かってか挨拶してくる人が多かったが、下町に来ると流石に顔を知っている人はいないので気軽に歩ける。




 この街で1番大きいギルドに着き、中へ入ると流石だと言っていいほど広く、人も多い。

 やけに注目を受けるような気がするのは気のせいだろう。

 受付に行き、加入の意思を伝えると用紙を渡してくれた。それに必要事項を埋めようとペンを執る。


 まずは名前。フィンス=ハーゲンと書こうとして、フィンスと書いた所で思い留まった。


 アギール王国でハーゲン公爵家の名前は当然有名だ。

 ハーゲンなんて書いてしまったら、大騒ぎになるか、良くも悪くも公爵家と仲良くなりたいと考える人達で俺の行動範囲が狭まるかも知れない。

 それだけは、どうしても避けたい。

 別にフルネームで書けと言われているのではないので、フィンスだけにしておこう。


 次に年齢は、16っと。


 住所は……駄目だな。バレるし、今から自分の家を建てに行くんだから。


 使える武器、又は魔法。……ん?こんなの別に書かなくて良いだろ。


 自己アピール。…………何の為にだ?


 お?下の方に小さく何か書かれている。

 何々?


 ※使える武器、又は魔法、自己アピールは、ギルドがあなたに合った仕事を斡旋出来るようにする為のものです。その他の目的では一切使用しません。

 記入されていた方が効率良く出来るのであって、強制的に書いてもらうものではありません。


 なら書かなくても良いか。


 俺が名前と年齢だけを書いた紙を渡すと、受付嬢の人は少し驚いた様だったが、ギルドの説明を始めてくれる。


 「まずランクから御説明致しますね。ランクはF〜Aと上位のSランク、最上位のSSSトリプルエスランクの8段階に分かれています。フィンスさんは今入られたばかりになりますので、最下位のFランクです。

 これは、依頼を達成したり、魔物を討伐していくとどんどんランクが上がっていきます。上位のランクになると下位のランクでは受けられない依頼や、指名されての依頼などもあり、達成報酬が高額になったり、普段立ち入り禁止の場所にも入れる様になったりするので頑張って上位を目指して下さい。


 依頼の事ですが、ギルドであればどこのギルドへ行っても、ギルドカードさえあれば受ける事が出来ます。

 ギルドカードの事ですが、魔物討伐の依頼を受けた場合や、又そうではない時も自動でどんな魔物を倒したのか記録してくれる物なので、万一空間収納が使えたとしても、そこには入れないで下さいね。


 又、ギルド本部があるルギト国では、ギルドの加入員に特別待遇があり、イベントなども沢山行っていますので、是非一度訪れてみて下さいね」

 「依頼は今からでも受ける事は出来ますか?」

 「ええ、勿論です」


 説明してくれてる間にも作業をしていてくれていたのだろう、机の見えずらい所から赤色のカードを差し出してくれた。


 「これがフィンスさんのギルドカードとなります。今は赤色ですが、ランクが上がっていくと、黄色、緑、青、銅、銀、金、プラチナとなっていきます。

 依頼を受けるには、あの掲示板に貼り出している中から自分のランク以下のスタンプが押されている依頼を選び、その紙をギルドカードと一緒に受付まで持って来て下さいね」


 これで説明は以上です。他にわからない事があれば何時でも聞いて下さいね、と締め括り説明は終わった。


 長々と説明してくれた受付嬢にお礼を言い、早速掲示板へと向かってみる。


 また何やら視線を感じるが、特に何かしてくる様子も無いので気にしないでおこう。




 掲示板は巨大だった。

 広いギルド内の壁一面の大きさで貼られた依頼の数も半端ではなかった。

 依頼の1つを見てみると、受付の人が言ってた様に右上にスタンプでランクが書いてあった。


 自分のランクがある場所に行くと、何か良い依頼は無いか早速探してみる。


 Fランクはどうやら街中の雑用が多い様だ。それでも何枚かは魔物討伐があった。雑用でも良いのだが、街の外に出る依頼の方が遥かに討伐の方が報酬が高い。なので討伐依頼などを何枚か適当に引っぺがし、受付へと向かう。


 「あら?もうお決まりですか?」

 「はい。これをお願いします」


 先程貰ったばかりのギルドカードと依頼の紙を渡す。


 「討伐依頼ばかりですがよろしいですか?入りたての皆様は街中の依頼からこなしていき、徐々に魔物に慣れていくというのが基本なのですが…」

 「そうなのですか?でも大丈夫です」

 「そうですか。ただ、ギルドは依頼中の怪我や死亡などの責任は一切負えません。準備万端にして、無理だけはなさらないようにして下さいね。

 ──討伐依頼の事ですが、討伐依頼は倒すだけでカードが勝手に記録してくれるので問題ありませんが、魔物や動物の一部を持って帰って来て欲しいという収集依頼もありますので気を付けて下さいね。今回は討伐依頼だけなので問題ないとは思いますが…」

 「分かりました。ありがとうございます」


 どうぞ、とギルドカードと討伐対象の名前が書かれた紙を渡され受け取る。


 「これで受諾は完了です。頑張って下さいね」


 にこやかに送り出され、ギルドを後にしようとした時、目の前が影がかかったように暗くなる。

 見上げるとがたいの大きい男と、後ろに悪そうな笑みを浮かべた3人組が立っていた。


 「お前、新人か?」

 「……そうですが、何か?」

 「いやいや。急に話しかけて驚かしちまったのは悪いが、そんな警戒しないでくれや」


 あからさまに顔に出ていたのだろう。目の前に立ってる男が、ガシガシと頭を掻きながら言い、後ろの3人はそれを見て笑っていた。


 「親分の顔見たら誰だって警戒しますって」

 「いやいや、お前もだろ」

 「俺ぁ、イケメンだろ?」

 「バカ言うな。どっちもどっちだ」

 「「何だとぉ!」」

 「ギラハ!てめぇ表出るかぁ!?」

 「相手にもならん」

 「くそッ。お前は強すぎるんだ!」

 「てめぇらが弱すぎるんだよ」


 ──どうやら悪い奴らではなさそうだ。


 「こら!てめぇら!ちったぁ黙りやがれ!俺がこの人と話が出来ねぇだろうが!」


 ボスっぽい人が3人の頭に拳骨を落とした。


 「悪いな。うるさい奴らで。俺はバンナ。後ろにいる奴らの1番うるさいのがズーモ、2番目にうるさいニック、常に冷静なのがギラハだ」

 「ちょ、俺の説明雑すぎません!?」

 「何だニック。お前それ以上にこれって特徴無いだろう?」


 拳骨を落とされて、頭を抑えながら抗議の声を上げたニックは、逆に精神までダメージを負ったようだ。

 若干涙目になってる。可哀想に…。


 「俺はCランクの冒険者だ。あんたは?」

 「俺はフィンス。ついさっきギルドに加入したばかりだ」

 「フィンスか。よろしくな!俺があんたに声掛けたのは他でもねぇ、俺たちのクランに入らないかと勧誘しに来たんだ」


 バンナと名乗った男は爽やかな笑顔でそう言った。

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