17話 食料を調達しよう
「あ!あっちの方にも木の実がなってるよ!」
木を使い、くるんっと反動をつけてから別の木に飛び移って行くスーシャ。
身軽なのは十分分かったから、降りて普通に歩いてほしい。
あいつ、自分がスカートなのを分かってないんじゃないかと思う。
俺は上を見ない様にしながら、スーシャの行った方へと歩いて行く。
え?上を見ないでどうやって彼女が行った方角が分かるかって?
もちろん、音と気配だよ。
チラ見でもする訳にはいかないんだから。
スーシャが見つけたのは、レコン草という植物だった。
果実は甘く、まるで果物のようで、根の方はゴボウに似た細さなのだが、さつま芋のような味がする。茎も葉も花までも食べる事が出来、様々な料理に使われ栄養も豊富という事で、街では大人気の食材だ。
「レコン草!うわぁ!こんなに沢山!」
見渡すと、辺り一面にレコン草が生えていた。
どうやらここは、レコン草の生息地らしい。
木から飛び降りてきたスーシャと一緒に、根っこから掘り出す。
5、6株ほど持って帰ろう。これなら、2週間くらいはもつだろうし。
「──ねぇ」
俺が黙々と掘る作業を続けていると、少し前から辺りを見渡していたスーシャが声をかけてきた。
「ん?」
「魔物がいっぱい寄って来てるんだけど…。なんでそんな平然とレコン草を掘ってるの?」
そう。スーシャが言うように、今はまだ遠いのだが、魔物がだんだんとこちらへ近づいて来ていた。遠いと言っても、はっきりと魔物の姿が視認出来る位置だ。
もちろん、俺は魔物の姿が見える前、スーシャが周りを見渡す前から認識していた。だが。
「そりゃあ、あいつらの相手より、レコン草という食料の方が大事だからだろ。それに、俺達は食料調達係だしな。手ぶらで帰る訳にはいかない」
何より、栄養豊富で美味い貴重な食料なんだしな。
これを逃す手は無い。
魔物の相手より、食料調達の方が最優先事項だ。ま、だからと言ってレコン草が逃げる訳でもないのだが。
「……」
なぜか黙り込んでしまったスーシャ。
そうか。強くなる為に特訓したいみたいな事も言ってたっけ。
集まって来てる魔物の数はおよそ10体程度。なら、見本を見せてから訓練するのにも良い感じか。
と言っても、そんなに大した事は出来ないが…。
「先にあいつら片付けるか」
「え…」
「強くなりたいんだろ?」
「うん!出来るだけ強くなりたい!」
「魔法は使えるのか?」
「ううん。使った事ない」
「じゃあ、今回は魔法はなしだな。俺が先に半分やるから、後はスーシャが担当な」
「え!いきなりあの数を⁉︎しかもすんごい強そうなんだけど⁉︎」
狼狽えているが、ダンジョンの中ではあの大量の魔物の中で戦っていたじゃないか。そう言うと、
「あれは…、やるかやられるかっていう状態だったし…」
「それでも、見た目とかはあんま関係ないと思うぞ。あいつらは見掛け倒しかもしれないじゃないか」
今こっちに向かって来ている魔物は、熊よりももっと大きな魔物だ。
初めは歩いてこちらの方へ向かって歩いて来ていたが、今は走って来てる。
見るからに巨体な魔物がズシンズシンと音を立てながら、だんだんダッシュになってくるのを見ていると中々に迫力がある。
…やっぱり強いのだろうか。
いや、そうは思えないけどなぁ…。
「取り敢えず、スーシャは身軽なんだから、こういう森の中にいるときとかは、周りのものを全部利用すると良いと思うぞ」
ある程度は彼女も戦えていたし、教える事も無いだろうが、ダンジョン内で戦ってたのを見てると、スーシャは小さく動き回って戦っているのが印象的だった。
だけど今日、木から木へと軽々飛び移っているスーシャを見て、大きく動いて敵の体力を減らす方が彼女に合ってるんじゃないかと思った。
その分体力もいるだろうが、そこは持久走かなんかで体力をつければ良いだろう。
まずは見本を見せる為に、俺が一番近くに来てる魔物にこちらも走って向かう。
魔物が振り下ろした手を素早く避け、背後へと回り剣でザクリ。
次の魔物へ向かうべく、木の上へと登り、近い魔物まで木の上を飛び移って行く。
まぁ、スーシャのように軽々と、とはいかないから魔法を使わせてもらうけどな。
多分、見た目的にはさっきのスーシャと同じようになっているはずだ。
2体目の魔物を頭上から撃破。
俺に気付き、向かって来た魔物を再び木に登って躱し、そちらへは行かず別の魔物の方へと向かう。
2体が近くにいたので、背後へと静かに飛び降りて、振り返らない内にそれぞれに一撃。俺を追って来た魔物には、木を使いくるんと1回転した反動で蹴飛ばし、魔物の上に着地。そしてまた一撃。
これで5体が水滴となった。
それにしても、ここ、なんか銀色の目の奴が多いな。街から出てすぐの時は、もっと色んな目の色をした奴がいたのに。
その土地、独特の個性ってやつかな。別に関係無いけど。
「ま、こんな感じか。次、スーシャな」
「え!フィンス早すぎでしょ!」
「そんな事無いだろ。ほら、危なくなったら助けてやるから」
「分かった。絶対危なくなったら助けてよね!──行ってくる」
「おう」
──結果を言うと、スーシャは1人で残りの5体を倒した。
ただ、一撃で全て倒せた訳ではなく、何回も攻撃しては回避を繰り返ししてはいたが。
これを一撃で倒せるようになれば、不意打ちに役立つだろう。
スーシャは少し不満そうにしていたが、仕方ない。これからだろう。
魔物から肉も落ち、食料の足しになったので、俺的には大満足だ。
レコン草も収穫出来たので、帰る事にする。
スーシャがまた木に登ろうとしていたが、今回はやめてもらい、横に並んで雑談しながら帰る。
「ねぇ、フィンスってさ、目紅いよね」
「ああ。そうだな。そう言えば、スーシャもセリアも紅いな」
「うん。紅い目の人はあんまり居ないって私の家族から聞いてたんだけど…」
「そうなのか?俺の家族もみんな紅いぞ」
「遺伝なんだって。だから私達の家族もみんな紅いよ。それで、親が言ってたんだけど、目が紅い人は仲間だと思いなさいって」
「なんだそれ」
「それが、そこまで詳しく聞いてなかったから、よく分かんないんだよねー」
そんなこんなで話してるうちに着き、俺達は驚いて固まった。
いや、屋根が出来てるとこまでは良いんだ。うん。
問題は周りに散らばってる沢山の木材にある。
「あ、兄貴達、おかえりなさいっすー」
俺達に気付いたリッキスが、小さく笑いながら出迎えてくれた。
「おう、ただいま。──これは、どうしたんだ?」
不自然に千切れたような…いや、強い衝撃を受けたような木材を指差して聞いた。
「うわぁぁぁっっっ!!!!!ごめんなさいっ!!!私っ、私がやっちゃいましたぁっ!!!!!」
ガバァッっと俺の前で恐ろしい程の勢いで頭を下げて来たのは、セリアだった。
リッキスは苦笑し、フィンスは訳が分からず首を傾げるが、後ろにいたスーシャは、あぁ、やっちゃったかぁ…と頭を抱えていた。




