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14話 魔物に挑もう

 奥へ続く道を俺達は静かに進んで行く。

 順番は先頭が俺、クロとシロが2番目、その後ろに銀髪の少女、また後ろに金髪の少女、そして最後がリッキスだ。


 少女達の名前はまだ聞いてないし、こちらの名前も教えていない。

 俺達や彼女達に何かがあった時の為だ。


 ま、何があっても自分達がやられるつもりはないし、もちろん彼女達も守るつもりではいるんだが…。

 念の為である。




 階段を下り、奥へ奥へと進んで行くが魔物が現れる様子はない。

 どうやらさっき倒したので全部だったらしい。


 奥に進むにつれ強い魔物が出そうな気もするが、全くそんな気配はなかった。

 ま、進むのが楽で良いんだけどな。


 何も出ないまま、いかにも魔物のボスが待ち構えていそうな大きな扉の前まで来た。


 今まで扉なんてなかったのに、このボス部屋の扉の豪華さ…。


 羨ましい…。俺の家にもこんな豪華な扉を付けたいものだ。


 「…兄貴?」


 おっと、いけない。あまりにも繊細で、美しい彫刻が施されている扉に見とれてしまっていた。


 「開けるぞ?」

 「はい!」

 「みゃ!」


 リッキスとシロは返事をしてくれ、クロは黙ったまま、早く開けろと言わんばかりに俺を見つめてくる。

 2人の少女もコクリと頷いたを見て、俺はそっと扉を押し開けた。


 中は、ダンジョンとは思えないほどの煌びやかな部屋で、奥に豪華な椅子…いや、あれはもう玉座と言っても良いかもしれない。そこに足を組み頬杖をついた、人くらいの大きさのカマキリがいた。

 いや、ちょっとカッコつけてるっぽいけど全然カッコ良くないし。

 金色の目がキラリと光る。


 「──ヨク、ココマデ来タナ」


 ニヤリと口角を上げ、殺気を飛ばしてくる。

 少女達は背後でヒッと息を呑んでいるが、俺は正直全然怖くない。


 というか、魔物って喋れたんだな。


 カマキリ型の魔物は、それはもう、組んでいた足をゆっくりと下ろし、優雅に立ち上がった。──ように見えた…。


 それと同時に横の方からわらわらと、沢山の魔物が現れる。

 そうだよな。やっぱいるよな。

 でもさっきよりは若干少ない気がする。


 「リッキス、クロ、シロ。周りの雑魚は任せたぞ。それに──」

 「分かってますって!お嬢さん方もお守りするんで安心して行って来てください!」

 「わ、私達も多少は戦えますから!」

 「そうっすか?なら僕から離れない様に、自分の身を守って下さいっす」

 「分かりました」

 「…あとシロ。さっきみたいな全力の光攻撃はやめて下さいね?」


 リッキスが言ってるのはもちろん、さっきの雷の事だろう。


 「みゃ!」


 シロは元気良く返事をしているが、どうなる事やら…。


 「ちょっと兄貴、面白そうに笑わないで下さいよ!何かに期待してる様に見えるんすけど!」

 「もちろん、期待しているんじゃないか」

 「期待しないでくださいっす!」

 「あ、あのー…」

 「?どうした?」


 声をかけてきたのは銀髪の少女だった。


 「このネコちゃん達も戦うんですか…?」

 「あぁ。戦う。まあまあ強いんじゃないかな?……他のネコに比べたら」

 「いや、この2匹は論外だと思うっすけど……。むしろ他のネコと比べたら、他のネコが可哀想な気が……」

 「ん、話してる間に来てるが…準備は出来てるか?」


 気が付けば、魔物達が俺達に迫って来ていた。


 「余裕っすよ!」

 「にゃ!」

 「みゃー!」

 「大丈夫!」

 「頑張ります!」


 気合い充分なみんなの様子を見る限り、大丈夫そうだ。


 「じゃ、俺はあのカマキリを倒して来るわ」

 「気を付けて下さいね!」

 「ああ」


 リッキスに返事だけして、俺は一足先に走り出す。

 勿論魔物の中に突っ込む形になる訳だが、気にしない。

 少しくらいは減らしといてやろうと、火魔法でボスの所まで一直線に焼き尽くした。これで邪魔してくる魔物はいないはずだ。


 ……あ。ここ洞窟なの忘れてた。

 空気……は大丈夫だと信じよう。ちょっと調子に乗ってしまったな。


 そのまま一気に俺はボスの元へと駆けた。






* * *






 「ったく、兄貴ってば1人で半数近く倒しちゃってるじゃないっすか…」

 「…あの人、すごく強いのね」

 「まぁ…、今迄に見た事のない強さではありますね。──ボスは兄貴に任せて、僕らはこいつらをささっと片付けちゃいましょうか」

 「そうね」


 そう言って金髪の少女が取り出したのは短剣。銀髪の少女は拳を構えている。


 「…そちらのお嬢さんは武器は無いんっすか…?」

 「私は武器は要らないんです。これで十分」


 気になったリッキスが銀髪の少女に聞くが、銀髪の少女はにっこり笑って自身の拳を見せた。


 「そ、そうっすか…。お二人共くれぐれも無茶はしないでくださいね」

 「大丈夫よ!」

 「はいっ!」


 ──グルルウゥルゥゥ……


 急に魔物の方から呻き声が聞こえ、不思議に思ったリッキスが振り返るとバタバタッと倒れていく魔物達。

 その前には2本の尻尾を立て、倒した魔物と向き合っているクロの姿が。


 魔物をよく見ると身体に毒が付着していた。

 だが、地面に毒は一滴たりとも落ちていない。

 この短い時間でフィンスに言われた事を考え、工夫した様だ。


 「…やるっすね、クロ」

 「にゃ!」


 リッキスを見たクロは誇らしげでもあり、もたもたしてるんにゃらボクが全部倒してしまうにゃ、とでも言ってる様でもあった。


 一方でシロは、集中して魔物一体を確実に仕留めようと力を調節しているが、中々上手くいかず、攻撃が魔物に当たっても魔物は普通にしている。


 「…みゃー」


 そんな魔物の様子にだんだんイライラして来たらしく、シロの魔力が上がっていく。


 「ちょ、シロ!落ち着いて下さいっす!僕ならともかく、クロやお嬢さん方に当たったらどうするんすか!」


 リッキスの制止も聞かず、シロは一体の魔物に向かって魔法を放った。


 ドゴオオォォォン────


 「「「「………」」」」


 魔物に光の超巨大な光の柱が落ちた。

 一体の魔物に対して十分過ぎる攻撃に、リッキス、クロそして少女達は絶句した。

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