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最新のウェアラブル端末は時間移動さえできるのか?

作者: 木納技嗣

 テストに出るであろう日本史の部分をノートに書いている。

「ねえ、お茶淹れてきて」

「自分ですればいいだろ、巫菜(みな)

 横から手を出し、俺の書いていたノートを巫はたたむ。

「息抜きと言うことで」

(まだ書きたかったのだが……まあ、いいか)

「持ってきたら書かせろよ」

「お菓子でも、待ってきてくれたら。うれしいなー」

「よろ~」と手を振りながら小声で言われた。

 扉を開けて部屋から出る。

 仕事で居ない両親。

 壁時計は、2時ちょうどを指していた。

 一人、キッチンにある冷蔵庫に向った。


 緑茶の入ったグラス(ビール会社のロゴが書かれている)を両手で一つずつ持って自分の部屋に行くため階段を上る。

 ふと、溶けた氷がグラスに当たって音を鳴らす。

 一瞬、緑茶に巫の顔が映ったような気がした。

 巫菜と縞貴(しまき)の関係っていったい何だ。

 自分は、巫菜と付き合っている訳でもないし幼馴染という訳でもない。

『友達だから。しまき君は』

 昔、彼女から言われた一言。

 友達で何が悪い。

 友達サイコー。

 俺は、何時からかそう想うようになっていた。

「ピポーン」

 三年前から音がおかしくなったチャイムの呼び出し音。

「宅配便でーす、島流さーん」

「宅配便ですー」

『めんどくさいな』

 床に緑茶の入ったグラスをおき。

 玄関に向った。



 10センチメートル四方の箱には、受け取り人欄に島流 縞貴。

 と書かれていた。

「遅いよ。しまき君」

「宅配が来てたからな」

「何頼んだの?」

「さあ?」

「あ~、怪しい」

『見せられない物だったら持って来るかってのキッチンにある棚の中に隠すよ!』

 何かを納得したのか軽く頷く。

 箱に貼られた伝票に会社名が書かれている。

【サクスィードシックス株式会社】

「聞いたこともない会社名だな」



 お茶を注ぎなおしてきた。

「たぶん、応募した懸賞じゃないか。気になるなら巫菜が開けて良いぞ」

 新しく注ぎなおした緑茶を持ってきて渡そうとしたら、既に開けられていた。

「腕輪?」

 包装紙が千切り破られビニール製の包みも箱から飛び出している。

「似合うかな?」

「待て!! 腕にはめるな! 爆弾かもしれない!」

 巫菜が体をビクッと振るわせた。

「その手には乗らないんだからね!」

「めっちゃ動揺してるじゃん」


「もー、びっくりした!」

「その腕輪、本当に装飾品だと思うのか。上になんか電子的な部位が見えないか?」

「なにこれ、なでなで」

『言いながら撫でるなよ』

 電子的な部位が突如、飛び出した。

 SFチックに紙みたい物が展開された。

 大きさは、ざっと横が5cm位だろうか。

「聞えるか、(アルファ)そちらの状況をどうぞ」

「遊ぶな!」

了解(ラジャ)!」



 何度、説明書を読んでも理解できない。

 そうじゃない。

 説明書に書かれている内容がおかしい。

《第8世代ウェアラブル端末》

《機番JP―1ARLURINNGU22―DA1》

《過去にも未来にも、貴方の生きている範囲なら行くことができます》

 いくらなんでも信用出来る話を超えている。

「この飛び出した部分は電子ペーパーって言うみたい」

「そこは、まだ解かる。だが時間を移動できると言うのは設定だろ」

「説明書ちゃんと読んだ?」

「第四章、時間を移動した後の体の状態についてのところ」

《時間移動後は、移動した時間帯の体に移動する前の記憶が上書きされます。

 即ち、ここで移動しているのは精神体を基礎とする記憶です。

 これにより大幅なエネルギー使用量の軽減に成功しました》

「もう、五回も読んだから全部覚えた!」

「あ~! 大事なことを忘れていたよ」

「いったいなんだ、ミナ」

「お菓子がない!」

「もう疲れたから、寝る!」

 布団の上に寝転がる。



 いつの間にか本当に眠ってしまったようだ。

 右腕の手首辺りに違和感を感じる。

「む!」

「何じゃこりゃー! ミナの野郎、俺の腕にアノ腕輪を装備させやがった!」

 こんな意味不明な物、身に着けてられるか!

 

 突如、顔に熱いものが流れてきた。

『何で泣いてるんだ、なんで……』

 じわじわとこれから体験する未来が頭の中に押し寄せてくる。

 涙が止まらない。

 怒り、悲しみ、喜び、日常、自分の人生が流入してくる。

 未来や過去でやり直しをしたこと、体験したこと、流れに逆らおうとしたこと全て。

 俺は、全ての現実を受け止められるのか?

 ミナに本当の気持ちを伝えることを躊躇すること等がどれ程、意味がないかよく解った。

 友達でいようとか無意味。

 好きって気持ちを伝えてもし、駄目なら一生友達でもいい。

 リスクなくしてリターンなしだろ。

 さっきまで勉強していた机を見る。

 乱雑に説明書がおかれていた。

 記憶の中にあった筈の【時間移動を終わらせたい方へ】と書かれたページを探す。

 あった!

《契約解除方法、時間移動を終わらせたい方へ》

《第46、契約解除方法。

 これまでの記憶は、規定により消去することはできません。

 また、一度契約を解除された場合、二度と再契約することはできません。それでも宜しければ自己責任で次のページを捲ってください》

 

《第47、契約解除方法》

《音読してください》

《契約解除》

「契約解除」

《最後に好きな時間帯に記憶を送る決まりとなってますので日時を指定してください》

《0000年、00月00日、00:00分》

『最後に入力する時間はこれしかない』

《2018年、8月18日、14:00分》

 電子ペーパーに入力する。

 一瞬で、自分の意識が飛散した。

 


 壁時計は2時から3秒ほど経っていた。

 冷蔵庫にまた向かい、透明なボトルに入った緑茶をプラスチックのコップに注ぐ。

 キッチンの棚から親が買ってきた、国産小麦100%のクッキーを皿に6枚ほどおいてトレーを使ってコップとクッキーの乗った皿を運ぶ。

 右手首を見ると腕輪は、なくなっていた。

 宅配便がくるのを待つ。


「ピポーン」

「宅配便でーす、島流さーん」

「宅配便ですー」

『来たか』

 扉を開ける。

「島流さんですか、ここに署名御願いします」

 名前を書く。

「有難う御座いました」

 

 キッチンの棚に包みを隠す。

 今ならどんなことでも、できそうな気がする。

 次の休みの日にでも、買い物にでも誘って見るかな。

 そう心に決めた俺は、トレーを持って部屋へと向かうのだった。


                                            ~終~

 


 

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