死神メリーゴーランド
次にぼくの意識が浮上したとき、遊園地にいた。「…、どこ?」言葉が出てこない。さっきから何か頭にノイズがかかったように霞がかっている。空はどんよりと雲が厚く、絵画のようにのっぺりとして現実感がない。目の前にある色鮮やかに輝き、くるくると回り続けるメリゴーランドだけが灰色の世界の中で異彩を放っていて、それだけがここが遊園地だということを示していた。「本当にどこだよ、ここ。ぼくはビルにっ…」頭に激痛が走る。ノイズが大きくなり何も考えられない。激しい頭痛。ついに耐えられなくなりその場に膝をつき、痛みにノイズにただ耐える。「いらっしゃい」声が聞こえた。顔をあげるとそこには可憐な少女がいた。”可憐”。その言葉はこの子のためにあるのだろうとその瞬間、確信した。ぼくは言葉を失い、不思議とノイズも消えていた。たぶんぼくは一生、その光景を忘れはしないだろう。その少女は純白のワンピースを着ていて、後ろで輝くメリゴーランドの光が彼女を着飾っていた。幻想的だった。「きみが新しい人だね。」ぼくはその言葉の意味が分からず口ごもる。「あれー、違うのかな?もしかして迷子さん?」「ぼくは…迷子じゃない。」ようやくそれだけ言えた。「じゃあ、やっぱりきみはお客さんだね。久しぶりのお客さんだなぁ。」「きみはだれなんだ。」彼女はくるくると回りながら答える。「私はここの管理人かなぁ。」「管理人?」「そう管理人。今のところお客さんはあなただけ。」ぼくを指さし、彼女はそう言った。「意味が分からないよ。」ぼくはそう言って頭を振る。また、だんだん頭痛が強くなってきた。「わかろうとしてないからだよ。頭痛くなるでしょ。」「なんで...。」彼女のその言葉に僕は言葉を失った。