毒花
毒花が咲いていた。
その毒花は、他人と深くかかわりたいと願っていた。
だが、それを許されない願い。
毒花の毒気にあてられた者は、その毒ゆえに命を削られてしまうからだ。
毒花は普通の花になりたいと思った。
普通の花になろうと頑張ろうと思った。
でも、駄目だった。
毒花は毒花であることからは逃れられず、また、毒花がそう願ったころには、彼が毒花であるという特質は確定しまっていたからだ。
「私はあなたの毒なんかで倒れたりしない。あなたの毒を全て包みこんであげるよ」
そう言ってくれる者がいたら、毒花はどれだけ癒されただろう。
だが、そんな者などいるわけがない。
彼の毒気は強すぎて、彼に近づく者は、多かれ少なかれ、寿命を削られてしまうからだ。
そのようなことを言うことができ、そのとおりにできる者は、同じ毒花か、その毒花が芽生え始めてからずっとそばにいて、その毒に慣れたものだけ。
半端な者は、毒に耐え切れない。
毒花は思った。
自分に許されることは、相手が毒気に冒されないぎりぎりの距離をとって咲いていることか……あるいは、人知れず自ら枯れ果ててしまうか。
毒花は笑顔なく笑った。