青色の物語
今日も君は白い紙の上に、薄い青色のペンで物語を書く。
……本当は知っているくせに。
「龍ちゃん、書けたよ」
君は柔らかな笑顔で薄い青色のペンで綴った物語を僕に渡す。
「ありがとう、京」
僕は手渡された物語を読もうとする。けどやっぱり読めない。いや、見えないと表した方がいいかもしれない。
何故なら数年前から僕の眼には、青色だけが映らないからだ。
「龍ちゃん、面白い?」
「うん、面白いよ。本当に、京は昔から物語を書くの上手いな」
君の犬みたいにふわふわした頭を優しく撫でる。すると君は顔を真っ赤にしながら嬉しそうに笑う。
「私、龍ちゃんに誉められるのが一番好き。だからもっとたくさんの物語を書くの。ちなみに一番に私の物語を読むのは龍ちゃんの役目だからね」
「うん、京にそう言われて僕も嬉しいよ」
また君は、薄い青色のペンを手に取り白い紙に新しい物語を書いていく。
君は昔から物語を書くことが大好きだった。いつも僕が誕生日にプレゼントしたシャーペンで物語を書いていた。
君がその薄い青色のペンで物語を書くようになったのはちょうど僕の眼から青色が見えにくくなった頃。
もちろん君は何故青色のペンで物語を書くようになったのかを僕に教えてくれない。
「……本当は知っているくせに」
「どうしたの?龍ちゃん」
君の笑顔のまま、僕を見る。
「僕は青色が見えないって知っているくせに、なんで京は青色のペンで物語を書くの?」 君はにっこり微笑んでまた物語を書き出した。
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