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DEATH GAMEをもう1度  作者: いのいち
序章
1/11

VR世界の誕生

 改訂版、導入部投稿です。

 細かい調整はこれからもしていきますが、大幅な改訂はしないつもりです。

 投稿済みの話は段々と導入部にあわせた風に改訂していきます。まあ、システムとかの方がメインなのでストーリー的な変化はそれ程ない…はずです。

 人の技術の進歩は、同時に電子世界という人の手で作られた世界を誕生させた。現実とは隔離されたその世界で人はアバターという自分が操作する分身ともいえる存在を操作することでのみその世界を味わえた。

 しかし、作られた世界である電子世界においては現実では不可能であるようなことでも、可能だった。


 例をあげよう。例えば、空を飛ぶなんてことは現実にはできやしない。いずれできるようになったとしても、その背中には邪魔としか言いようのない大きな装置があるだろうし、小回りなど効かない自由なものだ。

 だが、電子世界でのアバターは違う。そのアバターが存在する電子世界においてのルールとは人が決めるものであり、プログラマーがそういうシステムを作ったのならばそのアバターが飛ぶことには何の生涯すらない。

 ただ、飛ぶのに抵抗があるなら背中に羽を生やしてもいい。現実ではたとえ羽があったとしても、筋力などの様々な問題から飛ぶのは困難だろう。

 が、電子世界では違う。羽があるから飛べる、で済んでしまうのだ。理不尽だろう。だが、それが創造主たるプログラマーによって決められたプログラム………それが世界のルールとなるのだ。


 人の手により創られた現実以上の魅力を持つことを許された世界。そんな世界に人はアバターを通した操作という形ではなく、もっと近い形での体感を夢見ていく。

 その理想形はすでに物語の中では紡がれていた。VRヴァーチャル空間という、自身の全てを電子世界へと投影する技術。


 学者という存在の中には『無理』『不可能』『有り得ない』と言われるような技術を盲目的に『可能』と思いただひたすらに研究をすすめる人物がいる。

 そんな学者の中の1人がVR技術というものに興味を持ち、片手間に研究を始めた。最初は片手間だった研究はいつしか『彼』にとっての専攻となっていた。

 専攻ではなくとも、興味を示し協力してくれる仲間たちも出来ていく。彼らとて本気で可能と思っている訳ではなかったが、それでも夢見てしまう。

 元来、先を――夢を見据えるからこその研究。今を生きるものにとっては当たり前のことすら昔は有り得なかった。ならば、今有り得ないことすら未来には当たり前になるのでは。

 皆が皆というわけではなかったがそう夢見ている研究者も確かに居た。






 結果から言えば彼らの努力は報われた。全てが思い通りにいったわけではなく、偶然の結果が味方したこともあるが、それでも彼らの努力は本物だったし、結果として偉業ともいえることを成し遂げたわけだ。

 ただこの時点では完成品なんて言えたものではとてもなく、夢見た完成像からは遠いものだった。

 だが、この技術は人類の更なる発展を与えるのは確かであり、この基礎が出来上がった時点でバックスポンサーという点では不自由はしなくなる。

 そして、更に規模が大きくなった研究チームは徐々にではあるが確実に物語の中にあったVR空間の理想形へと近づいていった。


 最初に公開されたVR空間においてはいわゆる五感のうちの嗅覚、味覚は搭載されていなかった。電子世界にリアルを求める上では必要不可欠な存在ではあるが、他の視覚、触覚、聴覚に比べれば必要性はどうしても落ちてしまう。

 開発者たちからすれば、完全な状態での公開をしたかったのだろうが、この時点で世界中が注目する技術であり、一刻も早い実用化が望まれており、世間の声に耐え切れなくなった形での発表となった。

 技術面はしっかりと確立され、安全性も確認されていた、ということが決断に踏み切った理由の1つだろう。

 完全な形での公開こそ出来なかったが、それでも当初の目的、VR空間への自身の投影を可能にする、歴史的な大発明であった。






 この後に嗅覚、味覚の実装をも目指したVR技術の開発は進んでいく。

 さて、この2つの実装については大きな問題が立ちはだかる。この2つについては個人の嗜好の差が激しい。その嗜好の差の再現は難題といってよかった。

 音(聴覚)とて人によって好みの差はある。心地よい音、不快な音。だが、これは万人が同じ条件だ。

 例えば、工事が行われていればその工事音は不快なうるさい音だと感じる人が多いだろうが、中にはその音が気に入る人もいるだろう。音とは個人の嗜好と関係なく存在している。


 それに比べて、嗅覚、味覚は聴覚というものは選り好みという要素が強くなってくる。気に入らない音に関しては遮断、もしくは防音による音の大きさ自体の軽減をすればいい。現実では完全な遮断など無理だし、防音に関しても簡単にはいかないが、VR世界では設定1つでそれが可能となる。

 ただ、VR世界においても音とは重要な情報源の1つとなる為にそれに制限をかけるということは相応のリスクが付き纏う。

 もちろん、嗅覚、味覚から得られる情報とてしっかりとあるが、初期の段階での実装がなかったということもあり、最初期から作られたVR空間にはその2つに依存しないように作られ、風潮としては情報源として実装ではなくより娯楽的な方面での実装を望む声が強くなっていた。


 それに応えるようなシステムの開発も同時に行われることとなる。

 例えば、香水などは大きく分けると2つの意味がある。自分の為か、他人の為かである。

 自分が気に入った匂いがする香水があったならばその匂いを嗅ぎ続けることで自身はリラックス効果を得るだろうが、よくいる人にとってその匂いは不快なものである可能性は否定できない。

 逆に、他の人の心象をよくするように香水をつけていたとしても自身がその匂いをそれほど好まないなんてこともあるだろう。

 ただ、現実においては匂いの発信源が変わらない以上は自分、他人が感じる匂いは変わらない。どちらも満足する結果になるとは限らない。

 だが、どちらも満足するような結果をもたらすことがVR世界では可能だった。香水において、VR世界で実装を目指されて2つの解決策。

 1つは自分が感じる匂いと、他人が感じる匂いを変えるようにシステムをいじくることであり、もう1つが香水などの特定の匂いの発信源に対して、無臭に変換あるいは自分が指定した匂いにするというシステムである。

 ただ、これらは全ての匂いに対して行えるものはなく、香水などの娯楽的要素が強いものなど限定的なものにしか対応していない。

 これは匂いというのも重要な情報源であるからして、匂いイコール情報となる場合はそれを阻害してしまう結果になるからである。






 そして、嗅覚、味覚が実装が可能になった頃には世間にもVR技術というものは広く流布していた。

 この時点で5感を再現することにして、VR世界の基礎は完成を見たといって言い。


 だが、それでは満足しなかった人物がいた。

 彼はVR技術の開発を本格的に始めた人物であり、結局は開発を始めた後はその人生の全てをVR技術に費やしていた。彼は誰もが認めるこの技術の第一人者だった。

 そして、VR世界を最も現実を再現しようと固執していた人物でもある。


「まだだ。五感を再現したならば、次は………」


 彼は老いていた。人ならば決して避けられない運命に彼は近づいていた。

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