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くだらない話のお供②

『戦国バーテンダー』!!第四話です!!


今回の話に登場するカクテル、『モヒート』は映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の影響でよく飲まれるようになったそうな。

....映画の影響って凄いな〜

あと、高評価よろしくお願いします!!

『モヒート』とは、主に蒸留酒(スピリッツ)の一つとして知られている酒、ラム酒をベースをしたカクテルである。

その材料としてはミント・ライムジュース・砂糖などなどで、その清涼感も相まってか『ジン・トニック』と同じく、バーの『始めの一杯』兼『定番の一杯』として親しまれていた。


「『もひぃと』....またもや珍妙な名前の酒だな」


ただし、それはあくまで壮馬の生きる未来の世界の話であるためか、過去の世界の住人である景虎は『モヒート』の名前を聞いたため、首を傾げていたのは言うまでもない。

けれども、酒好きとしての本能がその酒に向いたのか、景虎はあの時のように不安よりも好奇心の方が勝っていた様子になっていた。


「この『モヒート』と言うカクテルは、ラム酒という蒸留酒を使ったモノになります」


「ラム酒?ジンとは違うのか?」


ラム酒という言葉を聞き、思わずジンのことを思い出した様子でそう尋ねる景虎。

その質問を聞いた壮馬は、景虎に対して待ってましたという顔になると、ラム酒についてこう説明した。


「ラム酒はサトウキビと呼ばれる植物を材料として使用した酒で、甘く香ばしい風味を持っているからかよく果物に例えられることが多いんです」


「ラム酒....サトウキビ....」


壮馬がそう説明したところ、景虎は思わず繰り返すようにその言葉をそう呟いていた。

も言うのも、この頃のサトウキビは薬として使用されていたため、今のように調味料として使われることはほぼほぼ無かったため、そんな反応になるのも無理はなかった。


そんな景虎を尻目に....壮馬はモヒートに使う材料を、ホワイト・ラムやミントの葉などをカウンターに取り出すと、そのままカクテル作りの準備を行なおうとしていた。


「それが『もひぃと』の材料か」


「えぇ、『モヒート』はラム酒やライムの他にミント.....薄荷の風味も重要なんです」


壮馬はそう言った後、彼にミントの葉の匂いを嗅がせたところ、景虎自身はミントの葉の匂いに慣れてはいなかったものの、その匂いが気に入ったようで


「....爽やかな匂いだな」


その口角を少しだけ上げながらそう言った。


彼の反応を見た壮馬は、これならイケるのではないか?と思ったようで、そのままカクテル作りを始めるのだった。


まず、壮馬はグラスの中にミントの葉・ライムジュース・砂糖を加えると、それをすりこぎ棒で力を加えすぎない形で潰していった。

その光景を見た景虎は、ほのかに鼻を突き抜けていくミントの香りの感じつつ、『モヒート』がどうやって出来ていくのかを見守っていた。


「店主よ、何故薄荷をすり潰しているのだ?」


「これはスマッシュという作業でして、薄荷を潰して香りを付ける重要な工程なんです」


そう言いながらある程度ミントを潰した壮馬は、そのグラスの中にラム酒と炭酸水、それから砕いた氷ことクラッシュ・アイスを加えると、バー・スプーンを使って軽くステアを行っていた。


「ほぅ、またステアか」


壮馬の美しいカクテル作りの腕に対し、そう声を漏らす景虎。

そして、徐々に出来上がっていく『モヒート』に対する期待感が増していったのか、その顔にはワクワクとした表情がいつの間にやら出ていた。


当の壮馬本人はテキパキと作業を進めていき、出来上がった『モヒート』を景虎の前に置くと、ニコッと笑いながらこう言った。


「お待たせしました。『モヒート』になります」


目の前に居る景虎に対し、営業スマイルを顔に出しながらそう言う壮馬。

彼のその言葉に対し、景虎は待ってましたとばかりにグラスを手に取ると、出来立ての『モヒート』を一口飲んだ。


シュワシュワと弾ける泡とミントの風味、それから砂糖の甘みとライムの酸味によって、これでもかと広がる清涼感に対し、景虎は思わず満足げな顔になった状態でこう言った。


「....この爽やかな風味がたまらん」


「ありがとうございます」


景虎のその呟きを聞いた壮馬は、バーテンダーとして嬉しそうな顔になった後、その顔を隠すために営業スマイルを浮かべていた。

ただし、そのことは景虎自身にはバレていたようで....内心面白い奴だなと思っていたとか。


「まさか、薄荷と酒の相性がここまで良いとはな」


「薄荷を使った物でしたら、ウイスキーベースの『ミントジュレップ』もオススメですよ」


「そんな物がまだあるのか!?」


壮馬の言葉に対し、食い入るようにそう言う景虎。

そんな彼の様子を見た壮馬は、この様子だと後々ウイスキーも飲むことを予想したのか、今後のためにウイスキーをたくさん仕入れようと思ったとか。


そう考えている壮馬を尻目に、景虎は美味しそうに『モヒート』を飲んでいたが、ふと何かを思い出したかのようにこう声を漏らした。


「....酒という物は良い物だな。何しろ、この騒がしい世のことを少しだけ忘れ去ることが出来るのだからな」


景虎がそう言った瞬間、壮馬は彼の周りで何かがあったのだと察した後、つまみのパイナップルとリンゴのドライフルーツを提供すると、彼に向けてこう言った。


「この店は、バーは大人の社交場です。それは言い換えれば.....大人が本音を吐き出せる数少ない場所なんです」


「本音を吐き出せる場所....か」


壮馬が景虎に向けてそう言うと、彼自身はその言葉に思うところがあったようで、難しい顔になりながらモヒートを一口飲んでいた。


その様子を見た壮馬はニコッと笑った後、景虎に向けて優しくこう言葉を続けた。


「ですから、景虎さんが溜め込んだ分だけ愚痴ってください。だって、この店には僕しか居ませんからね」


「.....それもそうだな」


壮馬の言葉を聞いたからか、納得したように景虎はそう声を漏らすと、彼に対して自身の胸の内を語った。


彼自身、名だたる戦を経て国を治める武将となったものの、今現在は部下達の内部争いが激化しているためか、その争いにウンザリしていること。

部下達の権力争いがキッカケとなり、毘沙門天信仰に走った末に出家を考えていること。

そして....自分自身が治める国のこと。


それらのことを語り合え、喉を潤すように『モヒート』を一口飲んだ景虎は、その視線を壮馬の方に向けるとこう言った。


「すまないな、こんなくだらない話をしてしまって」


「いえ、むしろバーはくだらない話をする場所ですから問題はないですよ」


景虎がそう言うと、彼を優しく包み込むように微笑みながらそう言う壮馬。

彼のその言葉を聞いた景虎は、今の今まで愚痴や弱音を吐く場所が中々無かったからか、その表情が少しだけ緩んだ後、この店に来て良かったと思いながら『モヒート』をもう一口飲んだ。


「と言うか、景虎さんも苦労しているんですね」


「あぁ、いつの世も人の上に立つ者の苦労は下の者には中々伝わらないのが定めよ」


『モヒート』を飲みながら愚痴る景虎に対し、壮馬はしばらく何かを考えた様子になると、ジッと景虎の方を見つめながらこう言った。


「なら、いっそのこと....その人達に本音を話したらどうですか?」


「....何?」


壮馬がそう言った途端、その言葉に対して目を見開く景虎。

しかし、数秒後にはその言葉に意味があると思ったようで、景虎のその顔には興味津々な表情が浮かんでいた。


そう思っている景虎を尻目に、壮馬は続けてこう言った。


「酒を飲まないと話せないことがあるように、本音を曝け出さないと分からないこともあります。ですから....一度だけ、自分の本心を語るのも良いと思いますよ」


壮馬がそう言うと、景虎はその言葉にハッとしたような表情になっていて、次第に面白いことを言うなと言う顔になり、彼が分かりやすく高笑いをし始めたため、壮馬は即座にやらかしたと思い始めていた。

しかし....そう思っている壮馬とは裏腹に、景虎はニッと笑うとこう言った。


「本音で語り合うことも時には必要....か。確かにそうかもしれんな」


どこか晴れやかで、どこかスッキリとしたような彼のその表情を見た壮馬は、とりあえず悩み事が解決して良かったと思ったようで、ホッと一安心していた。


そんなこんなで、『Barオアシス』にて『モヒート』を堪能したついでに吹っ切れた景虎は、前回とは違ってちゃんと銭を払った後、とある覚悟を胸に店をしていった。

一方、壮馬の方はというと


「....これ、何円なんだろ?」


景虎が相馬に対して支払ったお金が、この時代の通貨の一つである物......いわゆる宋銭と呼ばれる物だったからか、また山岸さんに鑑定を頼もうかなと思っていたとか。

モヒート

世界的にも有名なラム酒ベースのカクテル。

材料としては、ラム酒・ライムジュース・ミント・砂糖・炭酸水が主流。

元々、潰したミントにレモンorライムのジュースを加えたモノ=モヒートだったとか。

モヒートの語源はいわゆるスペイン語らしく、濡らすを意味するmojarから来ているそうな。

文豪ヘミングウェイも愛したカクテルとしても有名。

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