くだらない話のお供①
感想を!!貰いました!!
ありがたやぁ....ありがたやぁ.......!!
という歓喜の叫びは置いておいて、『戦国バーテンダー』第三話になります!!
あと、高評価よろしくお願いします!!
壮馬の店....『Barオアシス』が突然戦国時代の日本と繋がり、後に上杉謙信の名で知られる長尾景虎が来店してから数日が経った頃、今現在の彼はというと
「.....壮馬くん、この刀はどこで手に入れたんだ?」
景虎から直接貰った刀を、カクテル代の代わりとして貰った刀を知り合いの鑑定人に、山岸孝太郎に鑑定させていた。
最も、その刀は本物の刀であったことに加えて状態が良かったため、彼は信じられないという顔になっていた。
「どこって....お客さんから貰ったんだよ。何でも銭がないからこれを代わりにしてくれって」
「はぁ!?」
壮馬がそう言った瞬間、山岸は嘘だろとばかりに分かりやすく目を見開いていた。
一方、山岸の様子を見た壮馬はポカーンとしていたが、そんな彼を尻目に刀を傷つけないように丁寧にテーブルに置いた後、そのままこう呟いた。
「.......本物だ」
「へ?」
「これは本物の業物だ。しかも過去の時代から持ってきたかのように極めて状態が良い。いや、ひょっとしたらこれは....?」
ブツブツと呟きながらそう言う山岸の姿を見た壮馬は、初めての客とした彼が過去の時代の人間であることを改めて理解したのか、このことは黙っていようと内心思ったとか。
壮馬はそう思うのと同時に、店にやって来た男の名前を聞いておけば良かったなと思ったようで、次に来店した時に聞こうと決めたのだった。
ただ、鑑定人である山岸にとって目の前にある刀の価値は想像以上だったのか、その興奮を瞳に映らせながらマジマジと刀を見つめていた。
「そ、そんなに貴重な物なんですか?」
「あぁ、私自身は鑑定人として色んな刀を見たきた方だが....この刀はその中でも一番美しく、一番状態の良いモノだ」
「.....え?」
山岸がそう言われたからか、思わず呆然とした顔になる壮馬。
何しろ、その道のプロである山岸からそう言われたものなのだから、そう思うのも無理はなかった。
山岸は山岸で、こんなにも美しい刀を見るとは思ってはいなかったようで、彼の瞳がゆらりと揺らめいたのは言うまでもない。
「それに....これは下手をしたら、博物館に飾られるレベルだぞ」
「は、博物館!?」
博物館という言葉が出てきたことにより、景虎から手渡された刀の価値のヤバさを知ったからか、思わずその頬に冷や汗を垂らしていた。
間違いない、あの地震の影響でこの店は過去の事態と繋がってしまったんだ。
そう確信した壮馬は、思わずその顔に苦笑いを浮かべていた。
「そのぐらいこの刀はヤベェ代物ってことだよ」
「じゃあ、買取は.......」
「このレベルの業物を私が取り扱えるとでも?」
山岸がそう言った瞬間、ですよねと言わんばかりに納得した表情になる壮馬。
そして、あの刀をお代の代わりとして手渡した男が普通の侍ではないのでは?と思ったのか、彼の頭の中はそのことでグルグルと何回も回転していた。
そんなことを考えている壮馬を尻目に、山岸はやれやれという様子になった後、席から立ち上がると....目の前に居る壮馬に対し、忠告するようにこう言った。
「壮馬くん、こういった類の物には非常に熱狂的なファンが付き物なんだよ。だからこそ、取り扱いとかは丁寧に行うように」
「は、はい!!」
「それからもう一つ、こういう刀剣を管理する際は登録届を出した方が良いと思う。いや、この場合はむしろそうすべきなのかもしれない」
山岸は壮馬に向けてそう告げると、ペコリと一礼をした後にバーを後にした。
ただ、その言葉を聞いた壮馬はというと....あの刀がとんでもない物だと知ったからか、その価値に対してガクブルと震えていた。
しかし、確かにこれを保管するには登録届がいるよなとすぐさま思ったようで、それから数秒後の壮馬は法律関係のことを調べようと思っていた模様。
「はぁ....まさかこの刀がなぁ..........」
そう呟いた後、とりあえず鑑定した刀をカウンターに置いた後、スマホを使って法律関係のことを調べる壮馬。
過去の時代の物とは言え、壮馬が貰った刀はその当時のままの姿であったため、山岸がそういった反応になるのも仕方がなかった。
けれども、そういうことに関しては詳しくはない壮馬にとって、この刀は相当な物らしく.....お守りとして店に飾ろうかな?と頭の裏側で考えていた。
「まぁ、その道のプロである山岸さんがそう言うのならってことなのか?」
そんなことをボヤいた後、壮馬は開店準備をしていたのだが.....彼が洗ったグラスを一個ずつ丁寧に拭いていた時、突然その場にドアベルの音が鳴り響き渡っていた。
そして、その場に現れたのは
「来たぞ、店主よ」
その刀を壮馬に渡した張本人であり、戦国時代側の『Barオアシス』の客である長尾景虎本人だった。
「あ、いらっしゃいませ!!えっと」
「長尾景虎、それが私の名だ」
挨拶をする壮馬に対し、自らの名を名乗る景虎。
その名を聞いた壮馬はカッコいい名前だなと思いつつ、彼をカウンター席へと案内した。
なお、その際に景虎がカウンターに置かれた刀を見たのは別の話である。
壮馬の案内でカウンター席に座った景虎は、真正面に居る壮馬の姿をジッと見つめながらこう言った。
「『ぐらす』.....と言ったか、こんなにも美しい物がこの世に存在するとはな」
グラスを見つめる景虎の顔には、その美しさに対して惚れるように息を飲み、思わず目を奪われているような表情だったため、その顔を見た壮馬はバーテンダーらしく微笑みを浮かべていた。
「分かります。グラス一つ一つの形や輝きは唯一無二ですよね」
そんな言葉を交わした後、グラスを拭き終えた壮馬は景虎の方に視線を向き直していた。
その視線に気がついた景虎もまたフッと笑うと、自身の言葉に共感してくれる壮馬に対し、少しだけ心を許した様子でこう言った。
「こういった物は.....南蛮にはあるのだろうか?」
「あるにはありますよ。ですが」
「ですが?」
「これらのグラスはカクテル用ですので、普通の店では中々売ってないんです」
壮馬がニコッと笑いながらそう言うと、景虎はあの時のように肩を落とした....わけではなく、何かを考えているような様子になっていた。
壮馬は彼のその様子に気が付きはしなかったが、真剣に話を聞いているなぁと思ったのか、ニコニコとした笑顔をその顔に浮かべ続けていた。
そして、それから1分が経った頃には景虎は考えることを一旦やめたのか、壮馬の目を見ながらこう言った。
「店主よ、この前の『じん・とにぃっく』とやらも美味かったが....他にも美味い『かくてる』があるのか?」
「はい。カクテルは様々なお酒を基にした混酒と呼ばれるモノですので、その組み合わせと種類は無限大なんです」
壮馬がそう言ったところ、景虎はますますカクテルに対する興味が深まったようで、面白そうだとばかりに口角を上げるとこう言った。
「そうか....ならば何を飲むかで迷ってしまうな」
彼がそう言った瞬間、壮馬は景虎が自身に期待していることをすぐさま感じ取ったようで、その期待に答えるかのようにニヤッと笑っていた。
それはまるで、カクテルを扱う者として武者震いをするかのように。
壮馬は自分の作ったカクテルの味に惚れた客が居る以上、その客を待たせるわけにはいかないと思ったのか、景虎に提案するようにこう言った。
「....では、『ジン・トニック』以外の『始めの一杯』はどうでしょうか?」
壮馬がそう言うと、景虎はその言葉に興味を示したようで.....面白そうだとばかりの表情を浮かべた後、彼に向けてこう言った。
「ほぅ、まだ『始めの一杯』とやらは存在するのか....では、今回はそれを飲ませてもらおう」
彼のその顔には、是非とも飲んでみたいという表情になっていて、カクテルを飲みたいという景虎の純粋な感情を察した壮馬は、バーテンダーとして彼の好奇心を満足させるため、こんなことを言った。
「かしこまりました。では、『始めの一杯』であり『定番の一杯』であるカクテルを....『モヒート』を作らせていただきます」
【後書き】
今回の話に登場した鑑定人である山岸さんは、壮馬くんが見習いバーテンダーだった頃からの知り合いです。
なので、彼が独立した際は令和の時代側の初めての客として来店したとか。
ただ、自身が鑑定した刀が長尾景虎の持っていた刀だとは気が付かなかった模様。
ちなみに、景虎が壮馬に渡した刀はいわゆる謙信兼光だったらしい。




