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第四部・第十二話(第82話) 評議会の条件

 首都の中心にある大宮殿。

 黄金の装飾が施された門をくぐると、砂漠の民の議場「評議会の間」が広がっていた。

 身の丈二倍の柱が立ち並び、褐色の巨躯を持つ議員たちが列をなす。


 中央には、砂漠国家の摂政――サルゴン大公が座していた。

 彼の瞳は深い青。鋭いが、老獪さを秘めている。





 私は一歩前に出て頭を下げた。

 「聖女レティシアと申します。

  海と陸を繋ぐ封印を保つため、秘宝“星譜の心臓”を探しております。

  どうか探索の許可を」


 大公の眉が僅かに動く。

 「星譜の心臓……その名を口にするか。

  我らも知ってはいるが、長らく禁忌とされてきた秘宝だ」





 評議員の一人が声を張る。

 「聖女よ、砂の迷宮は我らの聖域。異国の者に勝手はさせぬ」

 「しかし、海の者が言う“闇の封印”と繋がるなら放置もできぬ」

 議場は紛糾した。


 やがて大公が手を上げ、静寂が戻る。

 「探索を許す。ただし条件がある」


 「条件……?」私。


 「一つ。紅眼の女を“凶兆”と恐れる声が絶えぬ。彼女が承継者である証を、評議会に示せ」

 「二つ。砂盗団〈白風〉を完全に掌握せよ。奴らを野放しにすれば補給路は持たぬ」

 「三つ。迷宮から得たものはすべて我が国と共有すること。独占は許さぬ」


 重い三条件が突きつけられた。




 ルビヤは歯を食いしばる。

 「また“凶兆”扱いか……」

 私は彼女の手を握って囁いた。

 「大丈夫。証を示せば、彼らも信じざるを得ない」


 ライガは静かに頷く。

 「砂盗団との決着は避けられん。早めに手を打つべきだな」




 私は議場を見渡し、堂々と告げた。

 「条件、すべて受け入れます。

  紅眼が承継者である証を示し、砂盗団を調停し、成果を分け合う。

  その上で――秘宝を必ず見つけます」


 ざわめきが広がり、やがて大公が深く頷いた。

 「よかろう。聖女よ、見事果たしてみせよ」





 議場を後にしながら、私は心に誓った。

 (証を示す。砂盗団を収める。そして秘宝を掴む。

  どんな条件でも、世界を救うために――俺は、いや、“私は”進む!)

次回予告


第83話「砂鯨の暴走」

評議会の条件を果たす前に、砂漠に異変が起きる。

砂鯨の群れが暴走し、都市を襲う。

それを止めるのは、精霊の力と、仲間たちの絆だった――。

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