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第四部・第十一話(第81話) 渇いたオアシス

 補給都市に到着した私たちを待っていたのは、異様な光景だった。

 中心にある大井戸が干上がり、住民たちが空の桶を覗き込んでいる。


 「水が……ない……!」

 「このままじゃ旅も交易もできない!」


 オアシスが枯れれば、都市そのものが死ぬ。

 私は喉を鳴らし、井戸を覗き込んだ。

 ――確かに水面は消え、底には乾いた砂しか見えなかった。





 ライガが周囲の地面を叩き、低く言った。

 「地層が崩れて、水脈が塞がれている。自然ではない」


 ルビヤが眉をひそめる。

 「砂盗団の仕業か?」


 私は首を振った。

 「違う……これはもっと不気味な力。呪具で水脈を封じた跡がある」

 井戸の縁に刻まれた黒い線を指差す。

 (……黒幕がここまで介入してきたか)





 私は荷から羊皮紙を広げ、井戸の構造と水脈の図を描き始めた。

 「水脈の流れを別の導水路で繋げば、最低限の水は戻せるはず」


 ルビヤが目を丸くする。

 「そんな計算、どうやって一瞬で……」

 「前世では“シミュレーション”って呼んでたのよ」私。


 さらに精霊に呼びかける。

 「土の精霊、岩を退けて道を作って。風の精霊、空気を通して流れを導いて」


 微かな光が地中へ走り、しばらくすると――

 ごぼごぼっ……!

 井戸の底から水が溢れ始めた。





 「水だ!」「聖女様が水を戻した!」

 住民たちが歓声を上げ、桶を差し出して水を汲む。

 子どもたちが駆け寄り、私の手を握った。

 「ありがとう、聖女様!」


 ルビヤがにやりと笑い、肩を突いてくる。

 「やるじゃない、女親友。頭脳と精霊、両方使えるなんて」

 「……こういうのは地味な作業だけどね」

 (でも、みんなの笑顔が報酬みたいなもんだ)





 水が戻り、人々が喜ぶ中。

 私は井戸の縁に残る黒い刻印を見つめていた。

 (呪具を仕込んだ者がいる……この都市の内部に)


 笑顔を崩さずに、心の奥で拳を握る。

 「必ず見つけ出してみせる。砂も、星も、誰にも汚させない」

次回予告


第82話「評議会の条件」

サルゴン大公の前で、秘宝探索のための正式許可を求める一行。

だが協力には厳しい条件が突き付けられる――。

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