第七話‐2 魔術師の登場
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剣士騒動から数日。
屋敷にまた妙な客が現れた。
「辺境伯令嬢に拝謁を願いたい」
現れたのは漆黒のローブに身を包み、杖を携えた青年。
髪は銀色、瞳は冷たい紫。歳は十七、八に見えるが、漂う雰囲気は妙に老成している。
彼は深く礼をして名乗った。
「私はロイ。王都魔術学院を飛び出し、真の知を求めて旅する者です」
俺は身を乗り出した。
「真の知……? なるほど、あなたも学問を追う方ですね」
「ええ。あなたが導入した輪作、帳簿、商会経営――いずれもこの世界には存在しなかった概念。心から敬意を表します」
おお、ついに来たか!
内政チートを理解してくれる仲間!
しかし次の瞬間、ロイの顔が真っ赤に染まった。
「……ですが、何より……あなたの瞳に、私は魅了されました」
……出たよ。結局そっちかよ。
ロイは杖を掲げ、小さな炎を生み出した。
それは瞬時に赤い薔薇へと姿を変え、俺の目の前に浮かぶ。
「この薔薇のように、私の心は燃えています。どうかお受け取りを」
乳母は「まぁ素敵!」と目を潤ませ、執事までも「若い情熱は美しいですな」と頷いている。
……お前ら、完全に傍観者ポジション楽しんでるだろ。
俺は薔薇を受け取り、心の中でメモする。
「求婚系魔術師:1」
KPIはまた増えてしまった。
次回は 第七話‐3 再び王子 です。