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第四部・第九話(第79話) 星見台の告白

 神殿の会議が終わった夜。

 私は眠れずに、星見台へと足を運んだ。

 砂漠の空は雲一つなく、満天の星が滴り落ちるように輝いている。


 「やっぱり、ここに来てたんだ」

 背後から聞き慣れた声。振り返ると、ルビヤが壺を抱えて階段を上ってきた。

 「水瓶?」

 「夜風に当たりながら飲むと落ち着くのよ。――一緒にどう?」





 石段に並んで腰を下ろし、星を仰ぐ。

 ルビヤは水瓶を差し出しながら、ぽつりと呟いた。

 「……昼間のこと、まだ胸に残ってる。

  凶兆って言われたとき、心のどこかで“やっぱり”って思った」


 彼女の紅い瞳は、星の光を映して震えていた。

 私は首を振った。

 「違う。あなたの瞳は鍵。世界を繋ぐ光。私はそう信じてる」





 ルビヤは小さく笑って、私に体を寄せた。

 「アンタはさ……どうしてそんなに真っ直ぐ言えるの? ズルいよ」

 肩が触れ、鼓動が跳ねる。

 (やばい、近い! おっさんの俺には刺激強すぎる!)


 「ねぇ、親友って言ってたけど……もしそれ以上を望んだら、どうする?」


 「えっ……!」

 息が止まるような問い。紅い瞳が、夜空よりも強く輝いている。






 私は必死に笑みを作った。

 「私には親友って言葉が一番大事。だから、それ以上は……」

 声が少し震えた。


 ルビヤは一瞬目を伏せ、すぐに無理やり明るく笑った。

 「そっか。――じゃあ親友として、ずっと隣にいてよね」


 「もちろん」私は即答した。

 (でも……この笑顔の奥にある本音、きっと俺は知ってしまった)





 そのとき、星図盤が光を放った。

 ルビヤの瞳が重なると、光の線が広がり、天空と地上が一瞬繋がった。


 「……やっぱり、私が鍵なんだね」

 彼女は寂しげに微笑む。

 「でも、親友って言ってくれるなら……それでいい」


 紅い瞳が星よりも鮮烈に輝いていた。

次回予告


第80話「砂盗団の影」

黒幕の手が仕込んだ砂盗団の内通者が動き出す。

大迷宮への道は、混乱と裏切りで揺さぶられる――。

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