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第四部・第八話(第78話) 星見の糾弾

 砂行の試練を終えた翌日。

 私たちは再び神殿へと招かれた。

 星図片の発見を報告し、秘宝探索の協力を得るためだ。


 しかし、広間に集う神官や兵士たちの視線は、またもルビヤの紅い瞳に注がれていた。

 「凶兆だ……」「災いを招く……」

 囁きが広がり、空気が重く沈む。




 壇上の巫女長ナービアが杖を鳴らした。

 「聖女よ。砂行の試練を越えたと聞く。だが――その女を連れている限り、神殿は協力できぬ」


 「理由をお聞かせください」

 私が問い返すと、ナービアは紅い瞳を指差した。

 「紅眼は古の伝承に記されし“凶兆の印”。

  星を狂わせ、国を滅ぼすと……!」


 広間がざわめき、兵士たちが手を槍にかけた。




 ルビヤは肩を震わせ、俯いた。

 「……だから私は、ずっと……」

 声は小さく、それでも聞こえた。

 「ずっと、一人だったんだ」


 (……くそ。俺は絶対、この子を孤独に戻させない)





 私は一歩前へ出て、声を張った。

 「皆さん、紅眼は災いではありません。むしろ――救いの光です」


 ざわめきが大きくなる。

 私は星図盤を広げ、昨日完成した経路を示した。

 「紅い瞳がなければ、星図は完成しませんでした。

  つまり彼女こそが“承継者”。秘宝の鍵なのです!」


 「証拠は星図だけか!」誰かが叫ぶ。

 「そうです」私は頷いた。

 「けれど、星図が導いた未来を信じるかどうかは、あなたたちの心次第です」





 神官たちは互いに顔を見合わせ、動揺していた。

 兵士の一人が槍を下ろし、小声で言う。

 「……確かに、試練を越えられたのは彼女のおかげだ」


 別の者も頷く。

 「紅眼は凶兆ではなく……証かもしれぬ」


 巫女長ナービアは険しい表情を保ちながらも、杖を強く握りしめた。





 ルビヤは顔を上げ、震える声で言った。

 「私の目を、ずっと嫌っていた。でも……今は違う。

  親友が“綺麗だ”って言ってくれた。だから、私は自分を信じたい」


 紅い瞳がまっすぐに輝き、広間を射抜いた。

 その強さに、人々の心は少しずつ揺れ始めていた。





 最終的にナービアは杖を鳴らし、短く告げた。

 「……協力の是非は、次の“星見の儀”で決める。

  それまでは、紅眼の女も滞在を許そう」


 完全な勝利ではない。

 だが――追放は免れた。


 私は胸を撫で下ろし、ルビヤの手をそっと握った。

 「大丈夫。次は必ず、あなたの瞳が光だと証明する」

次回予告


第79話「星見台の告白」

夜の星見台で、ルビヤがレティシアに本音を打ち明ける。

友情を超えた想いと、星図を読み解く力が重なり合う――。

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