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第四部・第三話(第73話) 巨人の民と筋肉礼法

 白い城壁と青い布の日除けに覆われた首都は、遠目にも迫力があった。

 ――が、近づくとさらに迫力が増す。


 理由は単純。でかい。

 砂漠の民は平均して私の1.5倍の身長、そして筋肉。

 どの通りを歩いても、私の頭がちょうど彼らの胸かお腹にぶつかる。


 (……なんだこの壁の森は。おっさんだった頃でも筋トレしてもここまでの厚みは無理だぞ)





 広場に着くと、砂漠の民の若者が両腕を突き出して近づいてきた。

 「ようこそ異国の聖女様! まずは礼を!」


 え?と思った次の瞬間――

 がしぃぃん!

 両腕を掴まれ、思い切り上下に振られる。


 「筋肉の硬さを確かめ合うのが礼法なのだ!」


 (握手じゃないの!? 上下に振られる度に肩が外れそうなんだけど!?)





 次に通されたのは“歓迎の席”。

 テーブルの上には山盛りの肉と果物。そして――なぜか巨大な石板。


 「聖女殿! 異国の者に腕相撲で力を示してもらうのが我が国のしきたりだ!」


 「ちょ、ちょっと待っ――」


 どん!

 あっという間に私の小さな手は、筋肉ムキムキの姉さんにがっちり掴まれていた。


 「……ふっ!」

 ばたんっ!


 開始0.2秒で手首を机に叩きつけられる。


 「ふぉぉぉ! 異国の者、潔し!」


 「……いや、勝負になってないんですけど!?」



 さらに追い討ちをかけるのは“友情の証”。

 両腕で相手を持ち上げ、全力で抱きしめるのだという。


 「さあ、聖女殿!」


 (やめろやめろやめろ! 俺はただの元おっさんなんだって!)


 むぎゅぅぅぅぅ!

 リフトアップされた私は、まるで人形のように筋肉の胸板に押しつけられる。


 「おぉ! 軽い! 羽のようだ!」

 「いやぁぁぁぁぁ!」





 ルビヤは腹を抱えて笑い転げ、

 「ぷっ……! 最高! あんた、砂漠の国じゃ絶対勝てないわね!」


 ライガは腕を組んで真顔。

 「……俺の国では握手だ。文化は面白いな」


 (いや、助けろよライガ! お前の腕力なら止められるだろ!)





 歓迎の宴の最後に、砂漠の長老が言った。

 「聖女殿、細い体でよくぞここまで耐えた。これぞ真の勇気」


 「……はい。とても……胸に響きました」

 (物理的に胸板にめり込んだんだよ……!)

次回予告


第74話「神殿の凶兆」

砂漠の神殿に招かれるが、ルビヤの紅い瞳を「凶兆」と断じられ、波乱の空気に。

シリアスとコミカルが交差する緊迫の回!

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