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第三部・第六話(第49話) 温泉騒動

 獣人共和国の山間にある温泉郷――そこは湯気が立ち込め、木造の旅館が立ち並ぶ、まさに極楽の地だった。

 「うひょぉぉぉ! ついに来たぞ温泉! 俺の夢リストが一つ埋まったぁぁ!」


 私はタオルを抱えて飛び跳ねていた。

 妹は呆れ顔でつぶやいた。

 「……お姉さま、完全に観光客ですよ」





 湯治場の大浴場に案内された私たち。

 掲げられていた札にはこう書かれていた。


 「混浴」


 「え……?」

 妹が固まる。私も固まる。


 そこへタイミングよく現れたのが――ライガ。

 「おい、入るのか?」

 上半身裸でタオルを肩に掛け、湯気に包まれた狼耳がぴくりと動いた。


 私の脳内が真っ白になった。

 「ちょ……ラ、ライガ!? なにその仕上がった筋肉!?」

 「筋肉って……いや、鍛えてるからな」


 妹が慌てて割り込んだ。

 「お姉さま! 見すぎです!」






 湯船に入ろうとした瞬間――足を滑らせた。

 「うわああっ!」


 ずるっと転んだ私は、豪快にライガの胸へダイブ。

 「ぐっ……!」

 「や、やわらか……じゃなくて硬っ! 岩か!? これ!」


 ライガの耳が真っ赤になっていた。

 「おま……! いきなり何を……!」

 妹は湯の外で叫んでいた。

 「お姉さま!!」




 気まずさを誤魔化そうと湯に潜ったら――

 「ぷはっ……あれ?」


 浮かび上がった瞬間、今度はライガの腰に抱きつく形に。

 「なっ……!」

 「ごめん! 泳ぎ下手なの! 支えに!」

 「これは支えじゃなくて……抱きつきだ!」


 妹はもう限界のようだった。

 「お姉さま! まるでわざとやってるみたいです!」

 「違う! 天然よ!」





 結局、私は湯船の端に隔離された。

 妹がぴしゃりと指をさす。

 「お姉さまは、もっと自覚を持ってください!周りから見たら、変態です!」

 「し、仕方ないじゃん! 温泉がわるいんのよ!」


 ライガはタオルで顔を覆いながら、耳まで真っ赤にして黙っていた。





 そんなドタバタの裏で。

 湯治場の奥、誰も入らない岩場の湯に――

 魚人族の影が一瞬だけ揺れていた。

◆ 次回予告


第三部・第七話(第50話)

「蜥蜴人族の工芸と鍛冶」

鉄と炎の工房で、蜥蜴人族の技術に触れるレティシア。

しかし資源不足の問題が浮かび上がり、またもや海の影が忍び寄る――。

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