第二部・第十七話(第42話) 姉として――戸惑いと決意
妹が生まれて数日。
私は――聖女レティシア、16歳。
新しい肩書きが増えた。
「……お姉ちゃん」
だが現実は甘くなかった。
「おぎゃああああああ!!」
「うわぁ!? もう!? また!?」
妹のおむつからは、予想以上の量が……。
「……聖女の威厳とは、なに?」
私は涙目で布を取り替える。
――俺、数字のシミュレーションなら得意なのに。
でもオムツ交換は想定外シナリオ多すぎだろ!!
「おぎゃあああ! おぎゃあああ!」
真夜中に響く大音量。
「ね、寝かしつけスキル……誰か実装して……!」
私は髪を振り乱しながら抱っこ。
だが揺らしすぎて自分が先に船を漕ぎ始める。
気づけば廊下で使用人たちがひそひそ。
「……聖女様、真っ青な顔で揺れておられます」
「精霊も眠そうに揺れてますね……」
――やめろ! 今一番つらいの俺だから!!
「さあ飲んでね~」
哺乳瓶(的なもの)を差し出した瞬間――
「ぷしゅっ」
妹が思いっきり吹き出した。
「ぎゃあああ!? なんで俺がびしょ濡れに!?」
服はミルクでベタベタ。
髪まで固まって、まるで天然ジェル仕上げ。
精霊たちがケラケラ笑って飛び回る。
「お姉ちゃん、頑張れ~」とでも言いたげに。
「……ああもう! 俺は聖女だぞ!? ……多分!」
父は妹を抱きながら感慨深げに言った。
「赤子は未来そのものだな」
母は笑いながら私に言った。
「あなたも同じように手を焼かせたのよ」
「……え? 私も?」
「ええ、夜泣きもおむつも。今のあなたとそっくり」
――俺、過去に迷惑かけてたんか。
ちょっとだけ気が楽になった。
夜泣き、オムツ、ミルク地獄を経て、私は確信した。
「……数字の管理より、赤子の管理の方が難易度高い」
けれど、妹の小さな手が私の指をぎゅっと握った瞬間――
胸の奥がじんわりと温かくなる。
「よし。お姉ちゃん、がんばるよ」
――ギャグみたいな日々でも、守る価値がある。
次回予告
第二部・第十八話(第43話)
「家族の絆――そして未来へ」
妹の初めての笑顔、家族の団欒。
聖女ではなく、ただの姉としての喜びを知るレティシア。
その温もりの中で、第二部は静かに幕を閉じる――。




